パワーストーン是非

初版 2023/10/02 20:05

改訂 2024/01/21 10:09

ネットで鉱物を調べようとすると、高確率でスピリチュアルとかヒーリングとかの言葉に出くわす。
それはそれでかまわないが、そういう記事のおかげで鉱物愛好家がうさんくさい人種に思われるんじゃないかという懸念はある。
鉱物が好きというだけで、なんとなく色眼鏡で見られそうな予感がする。

とはいうものの、こういう事態は昨今始まったことではない。
その歴史はおそろしく古く、古代ローマのプリニウスがすでに鉱物に関してあれやこれやと雑多なことを書きまくっているらしい。
その伝統を承けて中世や近世の魔法書にもそんな記述は数多く存在する。
鉱物はそうやって俗信と結びつきながら愛好されてきた。

だからパワーストーンを否定してしまうと、鉱物に関する重要な部分がすっぽり脱け落ちることになって、都合がわるいのだ。
それに現代ではウラン鉱のようなれっきとした(?)パワーストーンの存在も確認されている。
私たち愛好家としては、積極的に肯定もせず、さりとて否定し去ることもしないという、中途半端な立場で見守るほかない。

私はといえば、そういった俗信を生み出す人間の想像力に興味があるので、どっちかといえばパワーストーンには同情的なほうだと思う。
効能があるかどうかではなく、なぜその効能が当該鉱物に結びついたか、という点が興味深いのだ。

たとえば、三葉虫なんかも trilobite(三葉石)という観点からパワーストーン扱いされる場合があって、効能としては目の健康を増進してくれるらしい。
これはおそらく三葉虫が地球上で初めて完成した目をもった生物であることが関係している。
目の歴史において三葉虫が果たした役割の大きさが、パワーストーンとして認められる要因となったわけだ。
そう思うと、三葉虫の名前にときどき出てくる -ophthalm- という文字が「目」を表すギリシャ語であることにも特別な意味を見出したくなってくる。

そしてこういうこじつけを好む心性こそが次々に俗信を生み出す大元なのである。

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ktr

鉱物と化石の標本を集めています

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    trilobite.person (orm)

    2023/10/03 - 編集済み

    鉱物学といいますか博物学は、18世紀あたり、あるいはもっと後のかなり最近まで、スピリチュアル的要素と不可分でしたからね。それよか随分昔ですが、あのアリストテレスでさえ、鉱物に薬的な効能を見出そうとしてたようですし。パワーストーンを買うかと言われると自分では買わないですが、そういう歴史とともに発展してきた事は、否定できないように思います。
    プリニウスといえば、漫画家のヤマザキマリ・とりみきさん合作でプリニウスの博物誌を元に、その半生を描いた作品がありますね(題名はそのまんまで『プリニウス』)。鉱物関連はどうだったか忘れましたが、物語の中に一瞬だけ、三葉虫がちらっと出てきて(おそらくモデルはA. wheeleri) 、おおっと思ったのを思い出しました。

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      ktr

      2023/10/03

      博物学は、その古くささとうさんくささが私には魅力的です。
      一般的には、時代遅れのものを指して「化石のような」とか「博物館行きのしろもの」とか、さんざんですけどね。
      アリストテレスの動物学は前から気になっていたので、この機会に読んでみようかと思います。
      プリニウスのそのマンガは知りませんでした。
      あの厖大な博物誌のどこかに三葉虫についてちょっとでもかすっていたらめっけものですが、じっさいはどうでしょうね。
      イタリアでも三葉虫は産出するようなので、石の断片をプリニウスが(それとは知らずに)拾っていた可能性はゼロとはいいきれないでしょうね。

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