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Plus Instruments “79/80”
君はPlus Instrumentsを知っているか? 蘭の前衛アーティストTruus de Groot (トゥルース・ド・グルート)が1978年に蘭の地方都市Eindhovenで活動開始したプロジェクト名のことで、+ Instrumentsとも表記されます。今回は、彼女の初期音源を纏めたアルバム”79/80”を紹介しようと思います。de Grootは、元々、1979年にNasmakと言うポストパンク・バンドのVoでした。その頃は、蘭でもパンクが勃興していましたので、Nasmakの立ち位置はニューウェーブと言ったところみたいです。それで、de Grootは、もっと実験的な音楽をソロでやっていきたいのと、蘭の小さな場でやっているよりも、もっと大きな場でやりたいと思っていました。その頃、彼女は名前をTruusからTrussに変えており、それでソロの時には、Truss + Instrumentsと言う名義を使っていました。その時には、壊れたシンセやハンドメイドの電子楽器等やkraakdoosと言う楽器などを使って、宅録でノイズ的音楽をやっています。彼女は、1979年に、BandT + Instruments名義で、Bregt Camphuijzenと共にシングル”Special Agreement”を出しており、まぁ、これが彼女のソロとしてのデビュー作品となります。彼女は、BritポップとWhite Noiseのアルバムと欧米間の感性を持ち合わせており、いわゆるガールズ・ポップと凶暴なエレクトロニクスの間の立ち位置でした。その後、1980年には、Truss + Instruments名義で、カセット作品”79/80”(同名異作)を自主制作で出しています。それで、先述の理由で、1980年11月に、米国NYCに渡り、Lee RanaldoやJames Sclavunos等のアーティストからの援助で活動しています。その中で、Lee Ranaldo (G)とRhys ChathamグループのDavid Linton (Drs)と共に、Plus Instrumentsの最初の国際的ラインナップとして、1981年に、アルバム”Februari - April '81”を出しています。このラインナップは6ヶ月弱しか続かないかったみたいで、その後、彼女は、米国のビートニックに興味を示し、Teenage JesusのJames SclavunosとGun Club/Panther BurnsのJim Duckworthと共に活動することになり、ツアーや録音等も行っていましたが、やがて、このメンツでの創造性は低下していきます。その後、リリースは暫く無くなりますが、本人は余り気にしていなかったようです。しかしながら、2011年に、de Grootのソロ名義Truus Plus Instrumentsとして新録のアルバム”Dance With Me”をリリース、その後、2013年には、Vinyl On Demandより、過去作品のセルフ・コンピ・アルバム”Exile In Paradise (1982 – 2011)”と新録のアルバム”Trancesonics”も出ています。 以上が、Plus Instrumentsのバイオグラフィーのあらましなのですが、今回、ご紹介するアルバム”79/80”は、Truus de Grootのソロ・プロジェクトPlus Instrumentsとしてのアルバムと言うことになります。彼女は、Korg MS-20 SynthとRhythm Box及びEcho Machine(これらは、彼女の友人Wally van Middendorpから借りた機材), Putney SynthとCrackle Synth (これらは彼女のメンターMichel Waisviszから借りたシンセ), G, プラスチック製のオモチャのG, Flute, TV, Organ, マイクを使っており、この頃は、The Shadow Ring, Throbbing Gristle, Wolf Eyes, Toleranceの間を埋めるのが、Plus Instrumentsと評されていました。内容ですが、両面7曲ずつですが、A1, A2, A5はワン・トラックで、A4, A6, B2-B4, B6, B7はピンポンで、A3, A7, B1, B5は4トラックでの録音となっています。また、先述の彼女の一番最初にリリースしたカセット作品”79/80”に収録されている曲(A1-A3, A6, A7, B1, B2, B7)も入っています。実は、de Grootは、1980年に、Nasmakのファンとして、わざわざ地方都市EindhovenにやってきたNigel Jacklinと知り合って、何時間も彼女のアパートで録音しており、それで制作したカセットを彼のレーベルAlien Brains Tape Catalogueから1980年に極少数リリースされていたらしいです。同時期、de Grootは、Amsterdamに上京して、メンターWaisviszにシンセを借りただけでなく、4チャンネルのオープンリールのあったSTEIMスタジオも使わせてもらう機会を得て、また、レーベルFriend and Plurexを運営していたMiddendorpにもKorgのシンセやリズムボックスやエコーも借りて、彼のアパートで録音をしていたそうです。そんな状況で録音された曲を今回、新たにセレクトし、コンパイルして、同じ”79/80”と言うアルバムとしてリリースに至ったとのことです。それでは、各曲を紹介していきましょう。 ★A1 “Lucky Day” (6:40)は、ヘロヘロのテープに録音されたヘロヘロのリズムマシンとシンセ音に彼女の語り調のVoが被る曲で、時にハウリングも挿入される脱力ポップ⁈ ★A2 “How?” (4:29)では、複数のシンセの音が重なり合い、そこに、女性Voやらチープなリズムマシンやらシンセ音やらが被ってきます。音質は悪いけども、懐かしき1980年代初頭の音楽ですね。 ★A3 “Herhalingen” (1:53)では、単調なキックに、テープ音やエコー処理音或いはシンセ音等が被ってきて、すぐにリズムは無くなります。 ★A4 “True Love Stallion” (1:59)も、ハウリング音とシンセ音それに通奏低成るノンビートな小曲ですが、後半にワルツのリズムが聴取できます。 ★A5 “Ectr“ (1:58)は、不明瞭なテープ処理から始まり、これまた不明瞭なリズムマシンと語り調Voやら電子音やらが絡む小曲です。 ★A6 “Improv 1” (1:26)は、グルグルなシンセの単音弾きからガチャガチャした電子音へ繋がっていく曲です。 ★A7 “Dance” (3:13)も、不明瞭なリズムマシンとパルス音に、自由に歌う女性Voと(本当に)適当なGが合わせる曲で、最後にGをボロンボロン弾いて終わります。 ★B1 “Music-Zak” (5:18)は、単調なリズムマシンと背景の緩やかなシンセ音から成るミニマル曲で、次第にオルガン等の音も増えていくのですが、虚無感が凄い! ★B2 “So” (2:31)は、強迫的になっていくアップテンポのリズムマシンと自在な女性Voに、電子音がバックで暴れている曲で、焦燥感を煽ります。 ★B3 “Improv 2” (4:23)は、体操のような女性Voとオルガン(?)の不協和音から成るビートレスな曲で、何とも言えない不安とか不条理を感じます。 ★B4 “Drama” (2:25)は、可愛らしいリズムマシンと割と明確なシンセによるメロディと時折入る男性Voから成る曲で、作品中、最も「楽曲」らしいです。 ★B5 “O Ja” (1:08)は、シンセのパルス的な音によるリズムと多重録音された女性Voから成る曲です。 ★B6 “Mountain” (3:07)は、背後のヤバそうな雰囲気の中、きつ目のリズムマシンが鳴り響く曲で、リズミックですが、ダンサブルではないです。 ★B7 “Stratangle” (1:59)は、チョコマカしたリズムマシン及びバックの電子音と、リズムのズレた女性コーラス(多分多重録音による)が被る小曲です。 まあ、録音方法もモノラル一発録りから4チャンネルの多重録音までがあるので、仕上がりも曲毎で大きく異なっていますが、一貫して、ポップ・ミュージックの文法から外れてしまう感覚が彼女の中にあって、その逸脱振りが非常に興味深いです。シンセの音も篭り気味だし、リズムマシンもチープだし、それだとしても、余りある程の魅力的な曲が並んでいます。とにかく面白いので、一度体験してもらうのがよろしいかと! A2 “How?” https://youtu.be/e6BOSi0M860?si=nG39yt5tSehbAZwY A3 “Herhalingen” https://youtu.be/cN7oJxYD2To?si=tXP-w02qC1nL0SVn A7 “Dance” https://youtu.be/2vRWeZtkdT4?si=X88-2LjTy1RUZ91l [BandcampのURLを貼っておきます] https://plusinstruments.bandcamp.com/album/79-80 #PlusInstruments #79/80 #DeadMindRecords #Holland #NewYork #Primitive #Experimental #EarlyWorks #Synthesizers #Electro #Guitar #RhythmBox #ToyGuitar #Organ #Flute #TV #Microphone #EchoMachine #宅録 #TruusDeGroot #TrussDeGroot#Nasmak #AlienBrainsTapeCatalogue #NigelJacklin #WallyVanMiddendorp #Mentor #MichelWaisvisz
Experimental / Electro / Primitive Dead Mind Records 4048円Dr K2
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Robert Turman “Distant Dosage”
私は完全に勘違いしていました。米国ノイズ・ミュージシャンBoyd RiceとNONは同じだと思っていたのですが、実は、NONは、Boyd Riceらが結成したグループ名だったのです。いゃ〜参った、参った。それに気付いたキッカケが、Robert TurmanがNONの創立者の1人であったという情報を得てからです。それで、今回、ご紹介するのは、Robert Turmanの初期のソロ作をセルフ・コンパイルした本作品“Distant Dosage”です、その前にNONも少し触れながら、Turmanのバイオグラフィーを書いていきます。彼は、元々San Diego出身で、現在はオハイオ州Oberlinに住んでいます。そんな彼がインダストリアル・シーンに登場するのは、1970年代末で、有名なノイズ・リジェンドNONの相方としてです。1977年作のシングル”Mode of Infection/ Knife Ladder”を録音したことがキッカケですが、その直後、Turmanは彼自身の音楽を追求する為、ソロで活動を始めます。それまで捨ててきたあらゆる影響を融合させる方向に舵を切り、Flux (1981年), Spirals of Everlasting Change (1987年), Way Down (1987年), Chapter Eleven カセット・ボックス・セット(1988年)などの多量のカセット作品をリリースしてきました。そうして、活動休止期後の2005年に、Aaron Dillowayと一緒に活動するようになり、再び多数の素晴らしい作品をリリースしています。この位しか情報が無いのですが、今回の作品は、蘭Dead Mind Recordsからのラブコールで、彼の初期(1980年~1984年)の作品から、ピックアップからした7曲をセルフ・コンパイルしたアルバムとなっています。そしてその内容は、初期インダストリアルと、彼のソロ第1作目の”Flux”の延々と続くミニマル・ミュージックと、彼の第3作目の”Way Down”のリズミックなインダストリアルの間に位置するような音楽で、知らない内に、催眠的なループ音のレイヤーへとゆっくりとシフトしていくような曲になっています。この作品を聴けば、Turmanの初期の作風は殆ど網羅出来ると思います。 それでは、各曲について、ご紹介していきましょう。 A1 “A Kind Of Dance”は、1981年の曲で、機械の駆動音らしき音のショート・ループから成ります。ちょーっとずつループがズレていくようですが、ぼーっと聴いていると分からない程度の変化です。確かに機械仕掛けの人形の為の、無機質な舞踏曲ですね。 A2 “Listen With Your Heart”は、1982年12月の小曲で、比較的高音のシンセと思われる音のループから成ります。これもちょーっとだけ微妙に変化があるようです。この変化が意図的なものなのか?それとも機材の不安定性によるものなのか?はいつか明らかにしたいですね。 A3 “Not Moving”は、1980年の曲で、民族楽器と思われる打楽器と短いメロディらしき音がグルグルの反復する曲で、3日3晩踊り続けるトランス音楽として聴くことも出来ます。ただ、よく聴いていると、少しずつ音に変化があります(テンポほジャストで不変)。 では、B面にいきます。 B1 “Possibilities”も、何らかの具体音のショート・ループから成る曲で、どうもキッチンとかの具体音以外にもヴァイオリンの弓が擦れる音や3時のおやつの時間の時計の音などを音源にしているようです。 B2 “Hello Distant Dosage”は、1982年12月の作品で 多分既存の曲のの断片をループにしているようです。どうもちょっとずつちょっとずつ音がズレてきているように感じられめすので、そこら辺の音のモアレ効果も狙っているのかと思います。 B3 “Espilego”はエスパニア語のループかと思ったら、金属製の打楽器(或いはジャンク・パーカッション)の打撃音のループから成る曲でした。リズムは有るような、無いような。どうも、タイトルはエスパニア語の俳句のことみたいです。 B7 “Mind Meeting”は、1982年12月の曲で、これも何処かの曲の断片をショート・ループした曲で、延々と続いていく様は、正にヒプノティック(催眠的)です。ただ よく聴いていると、僅かに変化していくんですよ。本のちょっとだけですが。 まとめますと、どれもショート・ループから成るヒプノティックですが、恐らく、ディレイなんかのホールド機能を使っているのだと思います(何せ、まだサンプラーは登場していませんでしたから)。なので、ループの速度はほぼほぼ同じですのが、ちょっと飽きてしまうかもしれません。あと、私も、1990年代に、U.G.A.S.名義で、ループだけで1本カセット作品を作っていますが、似たようなことをやっていましたね。また、NONでのレコード盤とかを使う「反復」手法を忠実に受け継いでいるのは流石です❗️万人に受けるとは思いませんが、AMKとか、RRR500 Locked Grooveが好きな方にはお勧めします❗️ A3 “Not Moving” https://youtu.be/aK1DCgYz45w?si=QYnnyH_e9eDjpg8F [full album] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_mYYDY0-zsP6Nrg_6-7V0JrcHeZBw90qcs&si=zT7RRQ-9l-nn6vlZ [BandcampのURLも貼っておきます] https://dead-mind.bandcamp.com/album/distant-dosage #RobertTurman #DistantDosage #DeadMindRecords #NON #Solo #EarlyWorks #1980-1984 #Industrial #Minimal #Experimental #Noise #USComposer #SelfCompilationAlbum #Loop #ShortLoop #具体音 #既成曲 #U.G.A.S
Experimental / Musique Concrete Dead Mind Records 3597円Dr K2
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Enno Velthuys “Ontmoeting”
これまた「謎物件」を購入してしまいました。まあ、Dead Mind Recordsだからいっかぁと思って、全然知らないアーティストEnno Velthuysのファースト・アルバム“Ontmoeting”を買ってしまいました。余りにも、知らなかったので、ちょっとだけ調べてみました。Enno Velthuysは、蘭のアンビエント・シンセ奏者で、元々、フルクサス創設に関わったWillem de Ridderに才能を見出されで、音源制作を続けた人物であるらしく、1982年からカセット作品をリリースしています。そのような背景のあるVelthuysですが、1960年代には様々なバンドのギタリストとしても活動しており、ドローイング作品も残していたという蘭の伝説的作家とのことです(私はそのようなことは全く知りませんでした)。それで、1982年頃に、彼は、蘭のKubus KassettesのオーナーRob Smitと初めて会って、Velthuysにカセットで作品を出さないかと持ち掛け、それでVelthuysは、自分で気に入っている曲の入ったテープをSmitに渡しで、ピックアップしてもらおうとしました。最初は、Velthuysは、ギターを使ったリズミックな曲も含めた、幅広い作品にするつもりはなかったようですが、それもVelthuysの作品に新しい方向性を与えたようです。それで、1982年に、彼のファースト・カセット”Ontmoeting”がKubus Kassettesよりリリースされ、1987年までに4作をリリースしています。その為か、現在、彼は、同国ではカルトな地下アンビエント作家として知られています。そのバックアップをしているのは、同国のノイズ・レーベルDead Mind Recordsで、そのオーナーJohnny van de Koolwijkが彼の才能に惚れ込んでいるからです(調べましたが、この位しか分かりませんでした。すまん!)。 そんなEnno Velthuysのファースト作品が、今回、紹介する”Ontmoeting”です。A面B面共5曲ずつ収録されていますが、曲名などは一切付いていません。それで内容なんですが、まだ”new age”なる用語が使われていない時代から、既にnew ageな音楽をやっていたと言う先見性に驚きました。また、Synth Waveの要素やambientの要素もあって、多彩な才能があるんだなぁと感心至極。B1なんてスペーシーですらあります。使っているのは、アナログ・シンセ (多分ポリシンセも使っている)がメインで、その他にエレピやリズムボックスと言うところでしようか。恐らくは多重録音をしていると思います。その為か、リマスターはしているのですが、音が今ひとつ籠っているようにも感じますし、最近のnew ageやambient作家さん達の作品と比べると、バイアスが掛かってしまうのはちょっと惜しいです。それでも、気持ち良いことには変わりありませんので、そこら辺を掘ってみたい方は、是非とも聴いて欲しい一枚ですね❗️ [original cassette album] https://youtu.be/3nwxsYylscQ #EnnoVelthuys #Ontmoeting #KubusKassettes #DeadMindRecords #Reissue #FirstAlbum #CassetteWork #NewAge #Ambient #SynthWave #宅録 #Holland #Synthesizers #InstrumentalMusic #1982作 #Fluxus #WillemDeRidder
New Age / Synth Wave Dead Mind Records (Kubus Kassettes) 3450円Dr K2
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BMB Con “Sonderangebot (Ik Mag Er Niet In!)”
これも謎物件です。ピクチャーLPで、どれがグループ名かも不明でしたが、裏ジャケに”Staalplaat”と書いてありましたので、そこから検索してみました。その結果、バンド名はBMB Conで、作品名は“Sonderangebot (Ik Mag Er Niet In!)”と言うことが分かりました。そこから彼等のバイオグラフィーを簡単に紹介していきます。結成は1989年で、メンバーは英国生まれの蘭人Justin BennettとRoelf Toxopeus及びWikke 't Hooftのトリオです。2006年以降は他のグループやミュージシャンとのコラボもやっています。彼等は、HPを見ると、デジタル・エレクトロニクス(恐らく、ラップトップ?)による即興演奏を行うと同時に、火やスモーク或いはビデオ投影のような視覚的なアプローチも行っており、またライブ・パフォーマンス会場も、ギャラリー、美術館、クラブ或いは野外などでも行うことがあるみたいで、更にはソーラー発電なども利用することがあるようです。どちらかと言うと、バンドと言うよりもサブ・アカデミックな総合芸術集団のような存在のようです。Discogsではリリースが止まっているようですが、彼等のHPでは今でも現役でライブをやっており、またBandcampでのデジタル・リリースは続いているようです。 それで、本作品の内容ですが、ラップトップ全開❗️と思いきや、サイロのような場所で、割とデカいパーカッションを叩いたような反響音から成る打撃音や摩擦音を体現していて、都合、A面B面合わせて7曲が収録されていることになっていますが、各曲の境目は明瞭ではなく、ずっと繋がっているような構成になっています。しかも、パーカッションの音以外の部分は、(微弱な)ドローン音からなっており、それもまた曲間を不明瞭化している原因です。しかしながら、聴いた後に、それ程の疲労を強いる訳ではなく、どちらかと言うとカタルシスを得られる音楽として作用しているように思えます。それで、調べてみると、本作品は、1996年夏にBerlinのPrenzlauer BergのWasserspeicherでのライブ音源からなっており、それ故に、曲間が不明瞭なのかと納得しました。BMB Conは、本作品以降はデジタル配信になっていきますが、ピクチャー盤と言うこともあって、趣のある作品だと思いますし、これぞ「1990年代の音響系ノイズ」の真骨頂だと思いますので、気になる方は是非とも、彼等の活動にも注目してみて下さい❗️ 本作品はYouTubeには無かったので、BandCampより”Shhhh”を貼っておきます。 https://bmbcon.bandcamp.com/album/11-shhhh #BMBCon #Sonderangebot #IkMagErNietIn! #Staalplaat #TheNetherlands #ElectroAcoustic #Noise #Ambient #DigitalElectronics #JustinBennett #RoelfToxopeus #Wikke'tHooft #AudioVisualGroup
Electro-acoustic Noise Staalplaat 不明Dr K2
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IMP Electronics For Defence “Derde Mixer”
さて、次も、Stitching Mixerからのミニアルバム “Derde Mixer”を紹介します。作者はIMP Electronics For DefenceことJan Duivenvoordenの作品です。彼は、蘭クラブ・ミュージッシャンで、この名義以外にもUnit Moebius AnonymousとかMinotaur とかの別名義でも活動していますので、全体像が掴み難いです。正直、調べてみたのですが、このIMP Electronics For Defence名義では、3枚のアルバムと本作のマキシ・シングル1枚しか出していません。どうも、Unit Moebius Anonymousでは、ヨレヨレの古いテープレコーダーだけで録音した音を、コンピュータとしてAmiga 500を使って処理していたようで、その結果出来た曲は、何だか隔離されて、深く有機的なアンビエント・サウンドだったとのこと。調べてみても、寡作家で、有用な情報はこれ以上は得られませんでした。なので、先ずは、IMP Electronics For Defence名義の本作品について紹介したいと思います。A1 “It Sucks”はいきなりレコードの針飛び音から成るので、少しビックリします。A2 “St. Claire”はまたまた、アコギのインストからグニャグニャに捻じ曲がっていく曲で、A3 “Pet Detector”に来て漸くミニマル・テクノ的な曲になりますが、上物が変です。A4 “Walvis”はまたもやテープ速度を落としたり、弄ったAaron Dillowsyのような曲に戻ります。B1 “Ja, Jij Bent”も既成のレコードを弄った小曲で、B2 “Honey I The Outside”もリズムはあるものの、何か雑音塗れの曲になってます(良く言えばCabsの”Three Mantras”のような?)。B3 “Toxic”はスポークンワードを中心にベース音がブンブン言う小曲で、B4 “Kluns”は不明瞭なノイズが吹き荒れる小曲となっており、B5 “Don't Look Back”も矢張り既成の記録のループからなります。とまあ、レーベルのカラーとはかなり違った内容になっていますが、レーベルもよくリリースをOKしたもんだなあと感心してしまいます。かなり、変態的なミックスをしてある為、確かに「実験的」ではありますが、少なくとも余りミニマル・エレクトロニクスではないですね。Wolf Eyesとかに近いかも?ハマる人にはハマると思いますよ❗️ 本作品はYouTubeに無かったので、同名義の別作品を貼っておきます。 https://youtu.be/49kdywTT2uc #IMPElectronicsForDefence #DerdeMixer #StitchingMixer #Experimental #Vinyls #JanDuivenvoorden #NotMinimal #UnitMoebiusAnonymous
Minimal / Experimental Stitching Mixer 不明Dr K2
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De Fabriek “Labish Intermediariës”
出ました!オランダにて独自路線をひた走るDe Fabriekです。しかも今回は、伊ADNとそのサブレーベルAUF DEM NIL及びDe Fabriek自身のレーベルDe Fabriek Records & Tapesの3レーベル共同でのリリースです。しかも!しかも!De Fabriekの参加者も凄いです。De FabriekはRichard van Dellenが参加してればOKな不定形バンドですので、リリース毎にメンバーが違うことがありますが、今回はRichard van Dellen (Synth, Trumpet)に加えて、Conrad Schnitzler御大 (Synth), Mark Lane (Synth), Michael Otto (Bassoon)そしてPeter van Vliet (Synth, Mellotron)と言う濃ゆいメンツです。多分、Conradの誘いでMichaelが誘われたのでしよう。そして、ConradやMark Laneは名作国際コンピ”Trans Atlantic Overdub”での繋がりですね。ここら辺の繋がりがメール・ミュージック的だと思います。1985-1989年にかけて、Fab Studio, Tempel StudioそしてCon Studioで作製されでいます。内容も、殆どSynth奏者からなるので、今までのガチャガチャしたリズム中心の宅録テクノイズとは異なり、A面は、アンビエントと言うよりもゆったりとしたスペーシーなアプローチを取った3曲が収められており、壮大な音の劇場となっています。そして、B面は組曲風の構成になっており、途中で出てくるビートものがカッコいいと言うか、良いアクセントになっています。B面の他の部分は、不明瞭なメロの成分や自由な即興的電子音が駆け回る、そんな構成になっています。途中、中近東風のメロもシタールの響きで出てくるのは、De Fabriek節ですね。何故か、ヨーロッパのこう言うリズミックな音楽をやっている人はどうも中近東やアラブの方に接近していきますね。それにしても、De Fabriekが、Conradと組んだことが、影響しているのか?やたら、音質がよくて、良くも悪くも、意表を突かれました。そうですェー、一大叙情詩とようなダイナミズムを感じさせられますね。アンビエントにもテクノイズにもダンスミュージックにもならない、一筋縄でいかない「中庸な」電子音楽を体験してはどうでしょう? “Angkor’s Balance Buddha” https://youtu.be/-1x3gKfD-Eo #DeFabriek #LabishIntermediariës #ADN #AufDemNil #DeFabriekRecords&Tapes #ConradSchnitzler #MarkLane
Experimental, industrial Auf Dem Nil/De Fabriek Records & Tapes/ADN 不明Dr K2
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Kapotte Musiek “History Is What Was”
Kapotte Musiekはオランダの音響派ノイズ・バンドで、1984年にFrans de WaardらによってNijmegen,で結成されています。ここら辺のことは以前に書きましたので、そちらを参考にしてください。Kapotte Musiekは数本のカセット作品を出した後、1990年に彼等のファーストアルバム(LP)である本作を同じオランダのIF Recordsよりリリースしました。この時期はまだPCやラップトップを使われておらず、テープループの作製やピッチの変化など、かなりアナログな手法で、曲を仕上げています。本作品でも,かなりアブストラクトな曲が大半を占めており、どのようにその音素材を入手したかは不明です。まだ、細かい操作や変調は行っておらず、チープな味わいのある音響系ノイズになっています。元の音源は不明ですが、何かコンタクトマイクで拾った音でしようか? それ程凝った音作りでないですが、その稚拙な感じが微笑ましいですね。そして、彼等は、ここら辺から音響系ノイズの道を進んでいくことになります。この作品のA面B面にはレコードにlocked grooveが作られているので、その度に針を上げないといけない仕様になっています。オランダの音響系地下シーンは正にここから始まったと言えるでしょう。そして、Fransは,後にStaalPlaatの傘下に入るKorn Plasticsを1984年に設立し、他の音響系ノイズミュージックを世に送り出していきます。そんなオランダ、否、欧州の実験音楽シーンの中心になったFrans de WaadのKapotte Musiekの初期衝動が詰まった本作品も聴いてみて下さい。 “Element” https://youtu.be/DUntK3oyUQQ “The Valley of Death” https://youtu.be/RJrkct3Ny7c #KapotteMusiek #HistoryIsWhatWas #FransDeWaad #IFRecords #Holland
Experimental, Electro-acoustic IF Records 不明Dr K2
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V.A. “Trans-Atlantic Overdub”
2021年の最後の展示は、1980年代に盛んであったメールアート/ミュージックのネットワークを活かしたコンピをご紹介します。今でこそ、トラックをPCですぐにデータとして送ることが可能ですが、当時はマスタートラックをカセットテープに録音して、小型包装物で送るしか方法が無かった訳で、それを存分に活かしたコンピが世界中で作られていました。この作品も、そんな国際コンピの一つでした。ただ、このコンピが面白い所は、世界中のアーティストやグループから曲を集める時に、参加費として5分の曲は20000円相当を国際為替で振り込み、その代わりにギャランティとして20枚(?だったかな?)をもらうと言うシステム(限定盤を含む)であったことと、マスターを送る際にその国のラジオ番組を録音して、一部送ることでありました。私も参加しましたが、初めての海外送金で、郵便局で教えて貰いながら送金しました。また、ラジオの件は、私は余りよくわかっていなかったので、適当にラジオ番組(漫才みたいなノリの音)を録音して送りました。ギャランティはまだ分かったのですが、ラジオ番組の事はよく分かっていなかったんです。それで、ラジオ番組の音は主催のDe Fabriek側がチョイスして、曲の頭に、変調したラジオの音を挿入すると言うことに使われていた訳です。なので、私もちょっと反省しました。 それで、参加アーティスト/グループと曲を紹介していきます。A-1 Das Ding (蘭): Synth wave或いはNDWの原型みたいな曲。A-2 Conrad Schnitzler(独逸): どんな時でも崩さない普遍の心躍る電子音楽。A-3 Giancario Tuniutti (伊): アコースティックで渋い音響作品で浮遊感満載。A-4 D.K. (加): ジャンク・パーカッションとテキストの朗読から成るヘンテコな曲。A-5 Max Axe (ノルウェー)北欧なのに何故かマカロニ・ウエスタンな曲。本作で一番好き❗️A-6 Nico de Haan (ベルギー): 高度な演奏技術に裏打ちされた弦楽四重奏風チャンバー・ミュージック。B-1 K2 (日本:): メタパーとシーケンサーにメロディを刻むオルガンやギターを使った珍しい曲(Techno Mensesっぽい?)。B-2 John Jacobs (豪州): スペイシーなシンセとテープとを組み合わせた曲。B-3 Esplendor Geometrico (スペイン): 問答無用の張り詰めたリズムマシンの曲。かっこいい。B-4 Mark Lane (米国): ドローンシンセとカサカサのリズムが気持ち良い曲。B-5 Sviatoslav Lieontivich Hruticov (露): 当時としては珍しい、露からの参加。民族音楽調の曲。B-6 De Fabriek (蘭): 流石のデ・ファブ節全開の異形のエレクトロニカ。で締めています。多分、300部位しかプレスしていませんので、今となってはプレミア盤だと思います。時にオレンジ盤は大変な貴重盤❗️中古市場にも殆ど出ていませんが、見つけたら、即ゲットして下さい。 Das Ding “ Reassurance Ritual” https://youtu.be/GwsTFCX0wso E.G. “2-Ti-T” https://youtu.be/XhuFHE_l0E8 Max Axe “Espontaneous” https://youtu.be/pLUFgPkA7gI #Trans-AtranticOverDub #MailMusic #DasDing #ConradSchnitzler #GiancarioTuniutti #D.K. #MaxAxe #NicodeHaan #K2 #JohnJacobs #EspelendorGiometrico #MarkLane #SviatoslavLieontivichHruticov #DeFabriek #InternationCompilation
Mail music De Fabriek Records 2000円分Dr K2