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Diamanda Galás “Broken Gargoyles”
今回は、Diamanda Galásの2023年夏時点での新作”Broken Gargoyles”を紹介します。彼女のバイオグラフィーは既に書いてありますので、そちらをご参照下さい。今回は彼女の名前しかクレジットされていませんが、実はコラボレーターとして、NYCのサウンド・デザイナーDaniel Neumannが全面的に協力しています。それと、本作品は、独逸の詩人Georg Heymの1911年の詩”Das Fieberspital”, ”Die Dämonen der Stadt”, “Der Blinde”, “Der Hunger”の4作品に基づいて、作製されており、それらに対してのDiamanda Galásの解釈と、それを具現化するのに、Neumannが携わってきたらしいです。なので、一種のコンセプト・アルバムですね。なので、内容もA面1曲“Mutilatus”とB面も1曲“Abiectio”と言う長尺の曲が収録されています。それで、本作品は、Diamanda Galás (All Vo :A面 “Das Fieberspital” [6’37”-7’25”と9’43”-9’56”]を除く)とDaniel Neumann (Sound Design, Mix, Electronic Processing, Edit)によって作製されていますが、ゲストとして、Robert Knoke (Vo :A面 “Das Fieberspital” [6’37”-7’25”と9’43”-9’56”]), Teagan Faran (Vln, Viola :B面), T.J. Troy (ジェット・エンジンのカバー, Astro Disc, Timpani, Thunder Sheet: B面), Daniel Neumann (Vermona Modular Synth: B面), Christopher McIntyre (Trombone: B面)も参加しています。また、豪華なブックレットが付いているのですが、Dr. Julia Meierが、”Die Kalte Blecherne Wüste Der Todesdämmerung: The Cold, Metal Desert Of The Twilight Of Death”と言うタイトルで、Luca Zanchiが、”Polyképhalos Nomos: A song Of Many Heads”と言うタイトルで、Thomáš Jirsaが、”Taken From Facing The Faceless: The Erased Face As A Figure: Aesthetic And Historical Experience”と言うタイトルで、それぞれの曲のコンセプトの解説やその具現化仕方について書いています。なので、聴く前の予習と聴いた後の復習をして下さい。そんな危険なアルバムです❗️ それでは、各曲(各面)を紹介していましょう。 A “Mutilatus”: その意味は、The Mutilated、即ち「切断されしもの」であるようです。そして、狂気の歌声を多重録音し、自らが弾くピアノの断片や内部演奏と「何か」を加工した抽象的な音、打撃音などが立ち現れる音(ノイズ)による一大絵巻物を聴いているように感じます。途中で男女の会話形式になる部分で、ゲストのRobert Knokeが出てきています。その後には、呪詛のようにやや潰れた声で、Diamanda Galásが語り掛けるのには、背中が震えました。またその後に聴こえてくるお経のような多層化した声や不吉なピアノの旋律、そして何かが現れるのを待っているかのような雰囲気はずっと続き、最終的にはピアノの音で終わります。全体として、Daniel Neumannのサウンド・クリエーションが素晴らしいです。 B “Abiectio”は、Abjection、即ち「失望」或いは「卑下」「投棄」と言う意味です。軋むような音に狂気を体現したかのような声。弦楽器をバックにDiamanda Galásの呪詛が続きます。その背後には値の知れない「音」(=気配)が白虎しています。やがて、声と気配が絡み合い、再び呪詛の語りが続きます。捨てられた「もの達」の恨み節、弦楽器の不協和音、何かのノイズ、ピアノの打撃音等々が入れ替わり、立ち上がってきて、空間はどんどん捻れていきます。そうして、漸く最後に、金属音らしき音で終わります。 正直、かなりヘビーな作品でした。それだけDiamanda Galásの表現したかった世界と言うのが、ヘビーだったのでしょう。これは、間違い無く、彼女の大傑作なので、是非聴くべきだと断言します‼️あと、このアルバム 作製時は、丁度、コロナ禍のパンデミックの最中で、Galásはサンディエゴに、NeumannはNYCに住んでいたのですが、それを物ともせずに、2020年7月23日にNYCのギャラリーで、2021年7月17日には独のハノーバーで、作製途中の作品としてサウンド・インスタレーションを行なっています。その想いも、この作品の完成度を後押ししていたのでしょう。マスト❗️ A “Mutilatus” https://youtu.be/Wlk2bbZWUUQ?si=BmioInxih-O65U3g B “Abiectio” https://youtu.be/9IC_PemiwZU?si=al5BdqWbJtdeHQre [BandcampのURLも貼っておきます] https://diamandagalas.bandcamp.com/album/broken-gargoyles #DiamandaGalás #BrokenGargoyles #IntravenalSoundOperations #Greek-AmericanFemale #Avant-Garde # #VoicePerformance #Mutilatus #Abiectio #DanielNeumann #Booklet #Photos #Text #RobertKnoke #TeaganFaran #T.J.Troy #ChristopherMcIntyre
Avant-Garde Intravenal Sound Operations 5400円Dr K2
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Cranioclast “Kolik-San-Art”
また、続きますが、独逸Hagenに1980年代中盤から出現したSoltan KarikとSankt Klarioのデュオ (ジャケで抱き合ってる2人?)Cranioclastのセカンド・アルバム“Kolik-San-Art”を今回は紹介します。今回のタイトルもグループ名 (Kranioklast)のアナグラムになっており、ファースト・アルバム”Koitlaransk”と同様に、10頁の白黒コピーによるブックレットが付いています。彼等のバイオグラフィーは以前にも書きましたが、加筆するべき情報もありませんので、そちらを参照して下さい。本作品はA面B面5曲づつで、曲によってはゲストが参加しています。なお、ブックレットには、曲名、歌詞(❗️)、テクスト、クレジットなどが掲載されており、独逸語と英語で表記されています。A1 “The Birds Brought Water In Their Beaks Into The Temples”では、Chi Moja (Perc)も参加しており、鼠の鳴き声の様な音とテープ操作音から成るリチュアルな曲、A2 “Against Nature”は不安定なリズムボックスに歪んだベース音やオルガンの音が重なり、ヴォーカル入りの曲で、逆回転も効果的です。A3 “Did A Carpenter Make Her? No, No A Photographer In Sheffield”では、Chi Moja (Supply Tube Rhythm)とThe Satanic Organist Hans Magnus (砲撃音)が参加しています。ここでは、水の音をバックに、やはり不安定でノン・リズミックなリズムボックスを中心に、フリーキーなギターなどの音が渦を巻くような曲です。A4 “Catch A Fading Polaroid And Put It In Your Pocket”は、一定のリズムを刻まないリズムボックスにディレイを掛け、そこにピアノやらフルート(?)ややヴォイスやらテープ音やらを一見無秩序に配置した曲です。A5 “Chambre Des Cauchemars Monsieur Zann's Final Chamber Transformation. He Left Behind Black Blood On My Ear”は、うねる様なテープ音から不安定なビートのリズムボックスへと変容していく不思議な小曲です。それでB面にいきます。B1 “Les Voix Emurants Parlent Dans Les Débris De Tiffauges”では、Olivié (Rhythm)とKerstin & Fabian (Chants)が参加しており、Oliviéの刻む原始的なリズムとアコースティックギター(?)等から成る東欧民族音楽調の曲ですが、背景にはテープ音が聴取できます。B2 “Ray Treatment”では、Ace Bee Coolberg (Gliding G)とThe Satanic Organist Hans Magnus (リュート, Organ)が参加。子供の声と讃美歌的な男女の歌声のループで始まり、落ち着いたリズムを背景に、波の音の様なノイズとエフェクトを掛けたVoとアコースティックな弦楽器のメロディが入ってきます。B3 “De/Camuflage”はショート・ループ音で始まり、不明瞭なテープ音とパーカッシヴな音に変化していき、更にファズを掛けたベース音のループがパンしながら加わりますが、最新的にはゴングの様な音に収束していきます。B4 “The Madonna Lost Her Face In The Acid Bath Les Chants De ‘Trois Frères’”では、Ave Maria (Flute, Vo)が参加しており、不明瞭なテープ音とパーカッションに聴き取りにくいヴォイスとが絡まっていくアブストラクトな曲です。B5 “Strategies Of Truth”は何とも不思議なアコースティックギターを爪弾く音から成る小曲で、この曲でアルバムを締めています。全体を通して聴いてみると、ファースト・アルバム同様、曲間は不明瞭ですが、リズムボックス(恐らくRoland TR-606)の使い方が余りにも特殊で、驚かされます。更には、前作同様、マニアックなテープ操作や楽器音の取り込み方が素晴らしく、彼等の音に対する真摯な態度を感受できます。また、ブックレットにも各曲のテクストが書いてありますので、謎解きに役立つのではないでしようか?とにかく聴いてみて下さい❗️マスト! Side A https://youtu.be/YDJ8wrlLjj8 Side B https://youtu.be/496AE2JVNiI #Cranioclast #Kranioklast #Kolik-San-Art #PrincipeLogique #Experimental #Noise #TapeManipulation #RhythmBox #Ritual #SoltanKarik #SanktKlario #Duo #ChiMoja #TheSatanicOrganistHans #Olivié #Kerstin&Fabian #AceBeeCoolberg #AveMaria
Experimental Noise Principe Logique 不明Dr K2
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Cranioclast “Koitlaransk”
今回は、独逸の謎のノイズ・ユニットCranioclastのファースト・アルバムをご紹介します。Cranioclastの初期の作品は、タイトルが、全てアナグラムになっていたり、コンクリから成る廃棄物のフォトコピーから成るブックレットを付いていたりと、何かとそそるアイテムが多かった訳です。その彼等のファースト・アルバムが、この“Koitlaransk”です。これは偶然、輸入盤屋で叩き売られていだのを安く回収した一品です。因みに、本アルバムも(独逸語表記の)Kranioklastのアナグラムになっており、メンバーはSoltan KarikとSankt Klarioのデュオとのことです。彼等のバイオグラフィーは前回書きましたが、殆ど不明でしたので、改めて加筆するべき情報もありません。前回のものをご参照下さい。因みに、このLPですが、初版100部には”Ration-Skala”と言う20分カセット作品が付いており、このカセット作品のリミックス作品”Architecture Cryptique Culture Bunker"が、その後、1989年と1994年に2度に渡って再発されています。また、16頁から成るブックレットも付属しており、独逸語のテキストやJ. G. Ballardの文章からの引用(英語)なとが、先述のフォトコピーに添えられています。Discogsによると、A面10曲B面11曲となっていますが、実際には全体が連続しており、その曲の境は不明です。そして内容ですが、A面は、ドラム缶のようなメタパーの打撃音よるリズムとそれに絡む緻密な電子音やテープ音或いはヴォイスなどから構成されており、簡素なリズムが返って、リチュアルにも聞こえます。それに対して、B面は、リズムは更に不明瞭になっており、その代わり、テープ音や電子音或いは民族楽器の音、時にはリズムマシン(と言っても一定のリズムは刻んでないです)の音などが非常に巧妙に配置されており、よりアブストラクトな印象を受けます。逆回転の使い方も巧妙で、飽きることなく聴かせてくれますね。ちょっと不穏な雰囲気ではありますが、緻密な音響工作となっています。少しだけ、Vanity Recordsのカセット作品を思わせるところもありますね。ただし、曲間の境目は不明瞭で、かなり作り込んだ内容となっています。彼等の一番プリミティブな音響作品は押さえておいた方が良いでしよう。出来れば、限定のカセットも聴きたかったですね。と言う訳で、これは基本の1枚と言ってもよいので、是非とも聴いてみて下さい❗️ https://youtu.be/AVrZQQ1tgjE #Cranioclast #Koitlaransk #PrincipeLogique #Experimental #Noise #FirstAlbum #Kranioklast #Anagram #Primitive #Ritual #SoltanKarik #SanktKlario
Experimental Noise Principe Logique 不明Dr K2
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Savage Republic “Tragic Figures”
1980年代にフランスからポストパンクやインダストリアルを扱うレーベルSordide Sentimentalの第一弾としてリリースされたのが、このアメリカのSavage Republicです❗️このバンドは、元々、UCLAの学生であったBruce LicherとMark Erskineが1980年初頭に結成したAfrica Corpsを母体にして出来ました。この直後、前述のフランスのレーベルからのオファーがあり、ファーストアルバムである本作品をリリースしています。その時のメンバーはBruce Licher (G, B, Perc, Vo), Jackson Del Rey (Vo, G, Perc), Jeff Long (Vo, B, G), Mark Erskine (Dr, Perc, bongos, Vo)で、その後、Robert Loveless (Kbd, B, mandolin, Perc)加入したようですが、欧州ツアー後にLicherが抜けて、Ethan Port, Thom Fuhrmann, Greg Grunkeがメンバーとなり,2002年の再結成時には最終的にThom Fuhrmann, Ethan Port, Alan Waddington, Kerry Dowlingの4人組になりました。元々のバンドの首謀者であったLicherは自身のレーベルIndependent Project Recordsを一貫して運営しており、本作品も最初は自身のレーベルから1982年にリリースしていました。その後、欧州ツアーの時にSordide Sentimentalからリイシューの依頼を受けて、再発されたと言う経緯です。また、その後の1983年に"Film Noir"と言うシングルを出すのですが、この曲は、ギリシャ人監督Mikis Theodorakisの映像作品"O Andonis"に使われており、これで世界的な評価を受けることになります。その後も、多少のメンバーチェンジもありましたが、マイペースで活動しており、8枚目のアルバム”Jamahiriya Democratique et Populaire de Sauvage”をリリースする直前の1988年にBrad Lanerが加入していますが、1990年にバンドは一旦解散してしまいます。再結成は2002年にLicherを中心に行われますが、前述のように、ツアー後、Licherは脱退します。その後も、作品はリリースされて、今でも活動しているとのこと。 それで本作品についてですが、メンバーの担当楽器やその前身バンド名から分かると思いますが、パーカッシヴで、かなりトライバルな音楽をやっています。ここら辺はアメリカのHaunting LodgeやCrash Worshipなどとも共通性があると思われます。勿論、前述のパーカッションと言うのはメタパーで、久しぶりに聴き直しましたが、ベースのゴリゴリした音と共に、メタパーの乱打がトライバルにドライブするカッコいい音楽です。本作ではそんなに感じないのですが,中東風のメロディもポイントかと。当時のTrouser Pressでは「ドラッギーなベース音から成るマシンリズムにインダストリアルなドローン音が絡まった音楽で、丁度、ハロウィンのホラー映画での叫び声や、民族的或いは南国風パーカッションが盤面に刻み込まれている。」と評されていました。A面よりB面の方が、実験的ですね。でもA面1曲目のドライブするリズムがかっこいいです。そんなカッコいいアルバムなんですが、日本ではあんまり人気ないのが残念です。この機会に、是非聴いてみてください。 [full album] https://youtube.com/playlist?list=PLpJ4hSKuh3nVynMQ7DB6HLRrnqHoY5hFO #SavageRepublic #TragicFigures #SordideSemtimental #Industrial #Tribal #IndependentProjectRecords
Industrial, Alternative Sordide Sentimental (Independent Project Record) 不明Dr K2
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Core “An Area's Era Aria”
これを知ってるリスナーさんは相当なマニアだと思います。独逸の謎CranioclastのメンバーでもあるChi MojaとSankt KlarioのデュオであるCoreと言うバンドのセカンドアルバムです。なお今回はヘルプにPia Pankokが参加している模様です。ただでさえ、その構成メンバーとか挙動がよく分からない、ある種の匿名性を持ったバンドであるCranioclastの、更に分派なんて,皆んな知らないでしょう?謎が謎を呼ぶアイテムですので、バイオグラフィーを調べようとしましたが、残念ながら、これ以上の情報は得られませんでした(すまん)。それで本作でも、更に進化した/深化したアンビエント・サウンドを片面に1曲づつ配置しています。ただ、最近流行りの電子音によるアンビエントでは無く、フィールド・レコーディングした音を使っての切り貼りと変調によるアナログな音作りが逆に新鮮ですね。寧ろritualな感じすらしますね。それと本家のCranioclastとも共通するのですが,廃棄されたサイロやコンクリートの建造物の写真が豊富に掲載されており、そこに侘び寂びを感じますが、本作品では、本家より簡素で静謐な音作りである為、更に激渋な内容になっています。それこそ、CraniocrastのコアがこのCoreであるかのようです。また、タイトルも何かのアナグラムでしょう。あとナンバリングはしてありませんが、多分、プレス数は少ないと思いますので、気になる方は見つけたら、即ゲットですね。個人的には最近のアンビエントよりも,こちらのアナログな方により「アンビエント」を感じます。そんなアルバムですので、アンビエント好きにはもう一度聴いてほしい一品です。 “At the End of the Concrete” (前作より) https://youtu.be/b94MzgNReVE #Core #Craniocrast #AnArea'sEraAria #Ambient #廃棄物 #Ritual
Ambient CoC 不明Dr K2