Die Kruppsの突進力、マンマシーンへ!(第2版)

初版 2024/03/16 11:56

改訂 2024/03/26 23:25

とにかく、一番最初に、耳にしたのが、独逸の鉄鋼王と言われたエッセンのKrupp重工業社をバンド名にしてしまったDie Krupps (ディー・クルップス)が、とにかく衝撃でした。それで、購入したのが、Die Kruppsの"Stahlwerksynfonie (シュタールヴェルクジンフォニー: 直訳すると「鉄鋼場交響曲」)と言う12インチEPと言うかアルバムでした。A面B面共1曲づつと言う長尺の曲で、同名異曲なのですが、極めて単調で、割とスローなベースを軸に、ビートをキープしつつオカズを入れまくるドラムとStahlofoneと言う金属製自作打楽器を叩き倒し、歌詞も無い叫び声だけのようなヴォーカルやその他のメタル・パーカッションやら打楽器やらを叩きまくるA面と、同じ調子で演奏されるベースとドラムに、今度はギターやサックス等が自由かつフリーキーに演奏されるB面から成っており、その延々と続く長尺な曲が気持ち良過ぎて、何度も聴いていましたね。また、ミックスの時にダブ的な手法も取り入れているようで、阿鼻叫喚のサウンドに仕上がっています。これが、多分、NDWとの初めての会合であったと思います。その時のメンバーは、Jürgen Engler (Vo, Stahlofone, G), Bernward Malaka (B, Metal Perc), Eva-Maria Gossling (Sax), Frank Köllges (Drs, Metal Perc, Vo), Ralf Dörper (E-Drs, Meral Perc, Vo)で、ゲストとしてFehlfarbenのPeter Hein (Metal Perc, Vo)も参加しています。

Die Krupps "Stahlwerksynfonie" A面


その後、Die Kruppsは、シーケンサーやドラムマシンを使うようになり、1982年には、WEAからセカンド・アルバム"Volle Kraft Voraus! (ヴォーレ・クラフト・ヴォーラウス!)をリリース、また違った音楽性を見せつけます。その時のメンバーは、Jürgen Engler (Vo, Stahlofone, Synth-Perc, Trumpet, Drs-Programming, Casio, Synth, Effects), Bernward Malaka (B), Tina Schnekenburger (Synth-Perc, Effects)の3人です。このアルバムに収められていた曲"Wahre Arbeit, Wahrer Lohn"と"Goldfinger"は、この時期の代表曲となりますが、以前の生音中心の音楽から打ち込み中心の音楽に劇的変化したので、ついて行けなかったリスナーもいたと思います。独特のシンセポップ感があります。

Die Krupps 2nd album "Volle Kraft Voraus!"より"Wahre Arbeit, Wahrer Lohn"

そして、1986年には、サード・ミニアルバム"Entering The Arena"をStalk Recordsから出しますが、しばらく活動が鈍ってしまいます。セカンドアルバム〜サードアルバムの音は、ハードなシンセ・ポップと言っても良いかもしれません。また、サード・アルバム以降は、歌詞が英語になったことも大きな変化ですね。しかしながら、UKのEBM (Electronic Body Music)グループNitzer Ebbが、Die Kruppsの初期の曲をカバーしたシングル"The Machineries Of Joy (Parts I & II)"を1989年にリリースしており、これがビルボードにもチャートインしたこともあって、Die Krupps本体の活動も再活性化していきます。

Die Krupps with Nitzer Ebb single "The Machineries Of Joy (Parts I & II)"

そうして、1992年リリースの4枚目アルバム"I"で、大きく音楽性を変えて、打ち込みリズムにヘビメタ風のギターがフィーチャーされたindustrial Metalと言うような独自のサウンドになります。この時のメンバーは、Jürgen Engler (Vo, Kbd, G), Rudiger Esch (B), Ralf Dörper (Effects)に、ライブ要員としてVolker Borchert (Drs)です。そして、5枚目のミニアルバム"A Tribute To Metallica"では、タイトル通りLAのヘビメタ・バンドへのトリビュート盤で、同年にリリースしています。この時のメンバーはJürgen Engler (Vo, G, Synth, Programming)とBjörn Lücker (Drs)です。


Die Krupps album "I"より、"High Tech/Low Life"

Die Krupps album "A Tribute To Metallica"

その後も、インダストリアルなリズムにザクザクのギターを合わせたスタイルを確立していき、1993年には、6枚目のアルバム"II - The Final Option"を、更に1995年には8枚目のアルバム"III - Odyssey Of The Mind"をリリース。更に、1997年には、グルーヴ・メタルをも取り入れた9枚目のアルバム"Paradise Now"もリリースしますが、この年に、Die Kruppsは解散してしまいます。その後、Jürgen Englerは、DKay.com名義のソロプロジェクトで、2枚のアルバムを出しています。

Die Krupps 9th album "Paradise Now"

DKay.com 1st album"Decaydenz"


その後、2005年に、Die Kruppsは、復活し、結成25周年として、ヨーロッパのフェスに出演し、2007年には、25周年記念アルバム"Too Much History - The Electro Years Vol. 1 "と"Too Much History – The Metal Years Vol. 2"をリリースします。

Die Krupps album "Too Much History"

その後、2009年には、セカンド・アルバムのセルフ・リミックス・アルバム"Volle Kraft Null Acht (ヴォーレ・クラフト・ヌル・アハト)"をリリースしています。そして、2010年には、新録曲とPropaganda(このバンドはDie KruppsのRalf DörperとAndreas Theinが1982年に結成している)の名曲"Dr Mabuse"をも含むEP"Als  Waren Wir Fur Immer"にリリースしており、これは2011年のNitzer Ebbとのヨーロッパ共同ツアーに向けた録音であったとのこと。そうして、2015年に、1997年以来のフルの新録インダストリアル/EBMアルバム"The Machinists Of Joy"(このアルバムの特別盤のボーナストラックにはヤバい"Nazis Auf Speed"を含みます。またジャケ写も◯◯を意識してますね)を、翌年には、ヘビメタ要素の多いアルバム"V - Metal Machine Music"をリリースしています。

Die Krupps album "The Machinists Of Joy"


Die Krupps "The Machinists Of Joy" albumより"Nazis Auf Speed" (MV)


Die Krupps "Matal Machine Music" albumより"Metal Machine Music" (MV)

その後、初期のアルバム4枚 "Stahlwerksynfonie".   
 "Volle Kraft Voraus", "I", "Final Option"のセルフ・カバー・アルバムを手掛けており、個人的には、2016年にリリースされた、ファースト・アルバムのセルフカバーアルバム"Stahlwerkrequiem"が往年のStahlofoneの打撃音とヘビーで単調なリズムで大好きです。

Die Krupps self-cover album "Stahlwerkrequiem"

2019年に、新録アルバム"Vision 2000 Vision"を出しており、また、Englerは、同年、Fear FactoryのDino CazaresとLaether StripのClaus Larsenと共に、インダストリアル・スーパーグループDie Klute (ディー・クルート)を結成しており、USレーベルCleopatraよりアルバム"Planet Fear"を出しています。それで、2024年現在、Die Kruppsの最新アルバムは、カバー・アルバム"Songs From The Dark Side Of Heaven"で、The Stranglers, Devo, Gang Of Four, SparksやFad Gadget等の名曲をインダストリアル/EBM/メタル風にカバーしています。因みに、現在のメンバーは、Jürgen Engler (Vo, G, Kbd, Synth, Programming, Stahlofone), Ralf Dörper (Kbd, Synth, Programming), Marcel Zürcher (G, Kbd), Nils Finkeisen (G), Paul Keller (Drs)です。どうも、Die Kruppsのメンバーは皆、長身でガッチリした体格の人しかなれないらしい(嘘です。でも皆デカい)。

 Die Krupps covered The Stranglers "No More Heroes" in cover album "Songs From The Dark Side Of Heaven"

ちょっと視点(別項参照)を変えて、リーダーのJürgen Englerと初期のバンドメイトであったBerward Malakaが、Die Kruppsの前にやっていたバンドMaleのアルバム"Zensur & Zensur"が2020年に再発されており、音的には諸UKパンクのサウンドでしたが、ここから、初期Die Kruppsの音楽が生まれたのは興味深いです。

当時のMaleの面々

また、一方で、リーダーのJürgen Engler(G, B, Piano, Synth)は、クラウトロックの先達であるClusterのDieter Moebius (Electronics)とGuru GuruのMani Neumeier (Drs, Perc, Caosillator, Pro One)とのコラボ音源"Other Places" (1986年作)と"Another Other Places"(2014年作)なんて作品も出しており、しっかりと独逸ロックの歴史を繋げています。


Moebius, Neumeier, Engler "Other Places"より"DAT Loop"

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Dr K2

ノイズ歴約40年のDr.K2が今まで聴いてきた音楽(主に地下音楽)を出来るだけアナログ縛りで紹介していきます。ご興味のある方はどうぞご自由に観て聴いていって下さい。アングラのコンサルジュ。

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    オマハルゲ

    2024/03/26 - 編集済み

    Die Krupps は名前だけ知ってました。80年代の学生時代だったら確実に聴いていた感じのバンドです。当時はそこまでチェックしきれていませんでした。聞き逃したバンドは山ほどありますね。

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      Dr K2

      2024/03/26

      まあ、私も全部聴いてきた訳ではないですが、彼等の変遷は噂で聞いていたので、まとめ聴く良い機会になりました。特に、industrial Metalになってからは殆どリアルタイムでは聴いていませんでしたので、それなりに楽しめました。

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