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ジム・ゴードン参加の『JOYRIDE/FRIEND SOUND』 1969年
あの、デレク・アンド・ザ・ドミノスのドラマーであり、長いおつとめで有名なジム・ゴードンがセッションに参加している奇盤です。他の参加メンバーはベーシストのクリス・エスリッジだったり、ポール・リヴィア・アンド・ザ・レイダースのメンバーだったりするのですが、パーマネント・バンドとしての唯一のアルバムではなく、企画もののセッション・アルバムといったところでしょう。しかし、ありがちな、フリーク・トーンやノイズの垂れ流し的なところはなく、かつ、レイドバック気味の単なるリラックスしたセッション・アルバムとも言えない内容で、各曲それぞれが非常にサイケデリックで一定のテンションを保った、なかなか聴かせるものがあるのです。時流に乗った、安易に製作された企画物サイケも横行していた当時、これは拾い物ではないでしょうか。サイケデリック・ロックの隠れた好盤として記憶されるべき一枚だと思います。
サイケデリックロック LP, Album RCA揖斐是方
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KAK/KAK アメリカン・サイケデリック・ロックの名作 1969年
一曲目はカンの「コネクション」を思い出さずにいられない、あちらは何年でしたか、どちらが早いのでしょうか「アンリミテッド・エディション」に入っているムーニーの。二曲目のイントロはクレヨラの「ハリケーン・ファイター・プレーン」を想起させるし、B面一曲目の雰囲気はモビー・グレイプだし、こう書くとあたかもこのバンドはオリジナリティー、絶対性に欠けるような印象を持たれるかもしれません。しかし、本質はその対極にあり、サイケデリック・ロックとして極めて優れた内容と音楽性を持つ名盤だと思います。クイックシルバーメッセンジャーサービスのファンなら直ちに納得していただけるのではないか、どこまでも澄み切った青空の中を縦横に駆け巡りながら上昇し大気圏外にまで突き抜けていくような、透徹したギターの音色、このクリアネスこそカクの身上。これが唯一のアルバムで終わったことが残念な非常にユニークかつ貴重なバンドでした。空中に舞うタンバリンも印象的なアートワークも相俟って、サイケデリック・ロック史に今も鮮烈な存在感を示す一枚でしょう。カントリー調のA面と、キャッチーなリフ、弾きまくりのギターが圧倒的なB面がむしろ逆にするべきだったと確信する米プロモ・シングルもありました。
サイケデリックロック LP, Album エピック揖斐是方
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OAR / Alexander SKIP Spence (1969)
オンタリオ州から両親とともにベイエリアへ移住したのが1959年。まずはクイックシルバー、次にジェファーソン、そしてモビー・グレープへと在籍歴があるミュージシャンです。サイケデリック、アシッド・ロックなどというわかったようなわかんないようなジャンルの中では鬼才と語られる人物で、名盤とされているこの米オリジナル盤もかなりのレア盤のようです。肝心の内容は、一曲を除いてそんなに際立ったものでもなく、平均的な当時のアメリカン・フォーク・ロックの趣きなんですが、聴いているうちにやはりどこか変だと、麻薬だか酒だか、酩酊と朦朧に任せて勢いで創ったなと笑、思えなくもない。1968年7月、モビー・グレイプのレコーディング・セッション中に彼はバンド・メンバーに斧をもって襲い掛かり、当然医療刑務所へ。同年12月、一人でさまざまな楽器を奏でた本作を録音という運びです。1969年のリリースですが、これは当時のCBSでのワースト売り上げを記録したそうです。たしかにシド・バレットとの類似性は指摘できる作風で、本人のドラッグ耽溺からくる狂気も共通項として挙げられるでしょう。1999年4月、肺がんにより没。皮肉なことにほぼ同時期、ロバート・プラント、トム・ウェイツらによる本作へのトリビュート盤がリリースされました。
ロック LP, Album CBS揖斐是方
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椿説弓張月/三島由紀夫
また今年も今日が来たので、1969年11月に横尾忠則のジャケットで発表された三島由紀夫のセカンド・アンド・ラストアルバムを。三島自身が一人で声色を変えて何役もこなした自作の朗読パフォーマンスで、没後半世紀余、歴史的・文化的な価値は損なわれるどころか、ますます高まっていると思います。が、繰り返して聴く気が起きないのですな、どうも。後年、ジャケット改悪でシーデー・リイシューされたとて、それでも聴けない笑。当たり前だが、本物すぎて、どうしても馴染めないのです。ただ、兜をかぶっているのではなく、兜にかぶられている態の先生の写真と横尾アートだけが印象に残るばかりなのでした。かかる日になどて三島は英霊となりたまいし。そんなフレーズが浮かぶ憂国忌です。#三島由紀夫 #横尾忠則
歌舞伎 LP, Album CD コロムビア揖斐是方
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ソウルの追求/ザ・ヘルプフル・ソウル ルパン三世主題歌を歌ったチャーリーコーセイ在籍
横浜のパワー・ハウスと双璧をなす、神戸のブルース・ロック・バンド、ヘルブフル・ソウルのファースト・アルバムです。1969年発表。クリームやヘンドリックスのカバーの他、オリジナルナンバーも。長尺のファズ・サイケデリック・ジャムに、この時代のこの手のバンドの面白さと限界は感じますが、総じて非常に頑張っているのではないでしょうか。このあと手塚のアニメ「千夜一夜物語」の音楽などを担当するも、あっさり解散。ギター・ヴォーカルのジュニオ・ナカハラはあのトゥーマッチを結成するわけです。オリジナル・アナログはとんでもないレア盤として有名です。なお、このバンドのベーシスト、チャーリーコーセイさんは、後にルパン三世主題歌を歌った事で有名です。#jimihendrix #cream #psychedelic blues
サイケデリックロック CD ビクター ブルース・インターアクションズ揖斐是方
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TEDDY ROBIN AND THE PLAYBOYS (1969)
日本以外のアジアでの60年代ビート・ガレージ・バンドといえば、シンガポールのクエスツだとか、マカオのミスティツクス、インドネシアのクース・プルスの前身、クース・バーソウデラなどが有名ですが、香港といえば圧倒的にこのバンドでしょう。65年にニッカーボッカーズの「ライズ」のカヴァーでデビューした彼らの、これは69年の五作目でありラスト・アルバムの二枚組。当時のサイケデリック・アートとして秀逸なジャケットではあるのですが、内容は割とストレートなガレージ・ビートです。アジアのこのあたりのバンドはおしなべてそういう傾向があり、痛烈なサイケデリアが音楽にも表現されているかと思いきや、実際はそうでもない。しかしこの「そうでもない」感じもまた当時ならではの味わいなのでした。#garage #freakbeat
ロック 2CD paper sleeve Diamond Universal揖斐是方
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『スペイスド』 ソフト・マシーンの『カーニヴァル・オブ・ライト』か。
1,2,5,6,7,などどれも好きなアルバムですが、個人的にベストなのがこの妙なデザインのジャケットによる本盤です。すでにエアーズの姿はなく、ヒューとブライアンの二人のホッパーと、ラトリッジ、ワイアットによる四人編成での1969年録音。ラウンドハウスで行われた「スペイスド」というタイトルのマルチ・メディア・ショウの為に録音した長時間の演奏を編集したテープ・ミュージックです。イベントでは彼らの生演奏はなく、この音楽が流されたためにライブを期待していたファンには不評だったとか。本来のソフト・マシーンの音楽よりも、はるかにチャンス・ミュージック寄りのアプローチです。そして、こういうものを聴くと、やっぱり1966年末の同種のイベントの為に創られた前衛作品で、十数分に及ぶ、「アンソロジー」には収録されなかった、初期ザッパからの影響も指摘される、あの「カーニヴァル・オブ・ライト」の全貌がどうしても気になるのです。ソフト・マシーンのがこうしてリリースされたのだから、ビートルズのも、というわけにはいかないか・・#beatles #softmachine
サイケデリックロック 音楽CD CUNEIFORM揖斐是方
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べ平連のうた その発展の足跡 新宿西口フォークゲリラ 岡林信康
「栄ちゃんのバラード」といっても「時間よとまれ」と関係はありませんが、昔はこういう名前の歌が存在したわけです。もう誰も顧みなくなり久しい。この国にも歌のパワーで社会を動かせると信じてられていた時代がありまして、それはそれでいいのですが、当時西口で参加されていた方々などが、現在どのような想いで当時を振り返るのかは興味深いですね。機動隊のブルースとか(佐藤)栄ちゃんのバラードとか、日比谷野音での東京フォークゲリラの歌と演奏が収められたレコードと、当時の活動を撮影した数々の写真、小田実による提言や楽曲の歌詞、楽譜が掲載された100ページのハードカバー本のセットです。#べ平連 #アナログレコード#小田実 #岡林信康
ドキュメンタリー 7" コンパクト盤二枚・書籍 芸術出版揖斐是方