鉱物を購入する

初版 2024/08/19 08:01

購入するにあたって考えている事

鉱物又は宝石を購入する際にはどうするか。実際に入手する迄に考える事は幾つかある。使えるお金が潤沢にあり、何を買っても困らないなら欲しい物をどんどん購入すればいいが、現実問題そうはいかない。では、購入を決める迄には何を考えるべきか。少しの参考にでもなればと、僕が購入する時は何を考えたかを少しでも纏めて置く。

インターネット、現地、どちらで購入するにしても考える事

目の前に欲しい石が有ったとしよう。この際、例えるならダイヤモンドでもターフェアイトでもルビーでも良い。とにかく自分が欲しい石がある、そして購入する意思がある物とする。「私は気に入った物は基本買う」というスタンスなら、そもそもこの記事は不要である。しかし、買い物をすると発生するのはお金のやり取りだ。使えるお金が潤沢にある訳では無いならばやる事は決まっている。“その石はその金額で購入していいか”だ。

インターネットでも、ミネラルマルシェ等に行っても考える事として、“その石の相場を知る”のは非常に大切だ。インターネットでは、物によっては商品は選び放題の様に有り、ミネラルマルシェ等の催し物は規模にもよるが、同じ石種が何十点、何百点と展示されている場合がある。さあ、君が購入する為に手にしている石は、その金額を出しても良いものだろうか?

こちらの2個のタンザナイト、オーバル(右)の方がカラット数があり色味も良いが、入手した価格で言えば左(マーキスカット)よりも安い。

僕はインターネットで購入するにしても、現地で購入するにしても、「その購入しようと考えている石は購入して納得出来るか」を考える。前述してはいるが、僕は収入は人並みにあるかどうか程度なので、無駄に高い物は買うことは出来ない。目利きや知識を入れるだけで、良い物が安く手に入る事は往々にしてある。ただし、全てを頭に入れておくのは正直な話無理がある上に、相場自体も変動する事はあり得るので、気になった石の値段に疑問を持ったらすぐに調べるのだ。

現地で購入する際に考える事

大きなフロアに多くの出店があり、ある意味では選び放題である催し物。この中から欲しい物を探す、掘り出し物を見つける、なんとなく気に入った物を買う、と人に因ってそれぞれである。一個人として購入する時はどうするか、一例として書いておく。ミネラル(原石)の場合は相場や値付けのポイントが分からないので、裸石をベースとしているのを念頭に置いて欲しい。

・ありがちな鉱物を買う場合
一部除くガーネットやコランダム、ブラックオパール以外のオパール等、基本的に売っている母数が非常に多い石を買おうとする場合においては、幾つかの店の商品を比較するのは重要だと考えている。店によって値段は勿論、大きさや色、仕入れている石のレベル、カッティング技術の差は当然有る。市場価格を調べた上で幾つもの店を回り、その中で一番自分が欲しい物を選ぶ訳だ。「推しの店で買う」と決めているならば話は変わるが、そうでなければ幾つもの店から気に入ったルースを選ぶべきだ。僕は推している店であっても妥協はして買う事はあり得ないのだ。

この項目で例外に考えている部分がある。それは、アレキサンドライトやパライバトルマリン等の「レアではあるが見る機会はあり、非常に高価な鉱物達」だ。これらの、お金を出せば買える系においては、レアストーンを買う場合ではなくこちらの項目で当て嵌めて良いと考えている。

このクリノゾイサイト 0.7ct弱(単斜灰簾石)は5,000円。購入時の催し物では単斜灰簾石は10石程売っていたが、ネットショップ含めて納得出来た買い物だと考えている。

・あまり市場に見ないレアストーンを買う場合
こちらは正直な話、難しい所もある。ただ、基本は一緒だ。気になったレアストーンを見つけた際に、スマートフォン等で市場価格を調べに入る事は勿論やっている。しかし、あまりにも見ない石は検索しても数点しかヒットせず、石質やカットの差もあり大きくは参考にならない事も多々ある。Google、X(旧Twitter)で検索しても数件となった場合、自分が納得する材料を揃えた上で購入する事になる。僕は、「この石でこのクラリティーや色は見た事がない」「ネット検索しても持っている人が少なく本当に珍しい」と、自分の考えている事とそれに値する値付けであれば購入しても良いと考えている。マニアックな石は時価の様な流動性なのでそれ位で良い。次にいつ会うか分からない物に関しては、無理しない程度で突っ込んでも案外損したという事は無いのだ。

この項目でも例外と考えている事はある。それは、「一目ぼれした鉱物達」だ。宝石、鉱物はタイミングなのだ。二度と会えない石達は幾らでもある。「ありふれた石種であっても、この唯一無二のインクルが美しい」は最早代表的な要素の一つだ。今買わなければ絶対後悔する!と思う物があればそれはレアストーンを買う場合と同様に考えて良いと思う。

Viitaniemiite / ヴィータニエミアイト

https://muuseo.com/amyurieru/items/1

ノリさん
前のLabログでも出てきたヴィータニエミアイト(ビータニエミ石)。そもそも検索しても文献すらほぼ出てこない。このレベルは店の言い値になるが、それが自分の中で納得できれば購入だ。

ネットショップで購入する際に考える事

僕の地元は長野県(生まれは福井)の中央である。大きな催し物?そんな物は無い。実物を見て購入したい場合は、東京都や新潟市に赴いていく事になる。交通費だけでもそこそこにかかってしまうので、その分確実に購入する物を見極めている。近場に実物を見る場所が無い時に便利なのがネットショップなのだ。極端な話、家から一歩も出ないで、外国の地に埋まっていた鉱物達を手に入れられるのだ。

ネットショップで購入にあたって気を付けている事がある。それは以下の項目になる。

  • 値段
  • 色味
  • 処理の有無

個人的に見ている部分はここら辺になるだろう。正直言えば、そこまで多くのポイントは見ていない。結構重視しているのは意外にも色味である。実物を見ている訳では無いので、補正一つで騙す事は正直可能だ。一番「やってしまった」と自分が感じるのは色味のイメージ違いである。

値段については、基本的に各ラボジャーナルにも、上にも書いたように、“相場を知る”所から始まり、その都度それがベストな値段であるかどうかを調べていく事で、粗方納得できるラインで購入することは可能だ。僕の場合は、一目惚れで買う訳では無く、大きさや品質等を総合的に判断し、その価格で納得した物を買う訳だ。“気に入ったから”ではなく“いい品質を出来るだけ安く”買うのを目的としている。その場合は、石の状態に対する市場価格の知識は必須と言える。

問題なのは色味である。特にパライバトルマリンは厳しい。適当に取ればネオンが強く、色ノリも良くみえる。家に届いた結果、「なんか薄い色をしている」という事は多いだろう。これに至っては、現在手元に質の良いパライバトルマリン及び写真付き鑑別書が無いのでラボジャーナルに写真を載せる事は出来ない。やはり簡単な物を載せておく。僕が気を付けている事としたら、“ネオンが強い写真は良く考えて手を出す事”だ。明白に青が強いパライバは話が違うが、何故かネオン感だけが異様に映る写真は熟考した方が良い。そして、商品ページの写真の中に鑑別書の写真があれば、それは必ずチェックする。ちゃんと色が乗っているパライバトルマリンは、鑑別書の写真をみてもキチンと色が乗っているネオン感が強く映っているだけで、色ノリが悪い子達の鑑別書の写真は薄いのだ。

この二枚の写真は緑色パライバトルマリンだ。何も考えず、写真を撮って明るさ補正を上げただけでは、色味が強くネオン感も感じる。実際はマイナス補正を行った下の写真が実物と同じ色味だ。水色系パライバの方が、よりネオン感が強く映る様に感じた。

処理の有無は、人によっては考えるラインが違うだろう。「非加熱が良い」も分かるし、「ノンオイルが良い」と言うのも分かる。ここら辺に至っては、コレクターの嗜好で有るので好き蒐集すると良い。ここで言うのは、「買った石、買おうと思っている石が思わぬ処理をしていた」と言うのを避けると言う事だ。

こちらでも知識を少し要する。ただ、記事を見てる方ならば基本的に常備しているレベルだ。エメラルド、レッドベリルは基本的に「オイルの含侵処理」がされており、処理がされていない綺麗な物は非常に高価だ。こちらの場合は「ノンオイル」が価値を上げる要素の一つなので、売り手としたら未処理石であれば100%「ノンオイル」を商品の売りにしている。商品欄に「ノンオイルなどの記載が無ければ」処理石として見る。更に、概ね何かしらの鑑別書を付けるのは割とある。地雷を踏むことはなかなかにないだろう。

サファイアの場合は、市場に流れている石については概ね加熱処理がされており、こちらも「非加熱」の方が明らかに価値を押し上げる為、未処理石の場合は商品名や商品情報に「非加熱」という物が掲載されているだろう。こちらに至っては、エメラルドと比べて、鑑別書の付属率が低い印象だ。ただ、安価で調べられるソーティングが割とついて居る事があり、付属品は何が付いているかチェックする事で、処理の有無をスイッチングして狙う事は大いに可能だ。

知名度が高く、基本的に処理の有無がハッキリする石種については問題は無い。ただ、個人的に面白い物を買った...買ってしまったと言うべきか。下のハックマナイトはまさにそうだ。ミネラルマルシェにて、6,000円程で購入した「ソーダライト」が、後の鑑別で「ハックマナイト、透明材の含侵」で仕上がった。この時は、お土産用でもう一個のソーダライトも購入したが、此方はハックマナイトで透明材の含侵は無かった。購入時にソーティングが付いていないので、“掴んでしまった”という感じだ。ハックマナイトで含侵処理はレア感を感じたのでそのまま標本として所持している。こういう曲者については、場合によってはバイヤーですら知らなかったという事が正直ある。“安いので別に良い”で済むなら良いが、ある程度高い物であれば、信頼できる付属品が付いている物を買うのが良い。目利きが出来るので有れば処理の看破が出来たとしても、ミネラルマルシェ等で一つ一つ長々と場所を占有し、見定めるのも気が引ける。こういうのはある意味“当たりを引いた”と思っておくと良い。

Hackmanite / ハックマナイト(含侵処理)

https://muuseo.com/amyurieru/items/11

ノリさん
此方のハックマナイトは、もともとは「ソーダライト表記、処理の有無記載無」で販売されていた。値段もお手頃で、考えた結果知人への土産込みで2個購入した。両方とも「ハックマナイト」で鑑別が上がったが、こちらのハックマナイトは「含侵処理石」だった。

選ぶ時間も愛でる時間も素晴らしいものだ。

小学生の時に、アメジストを直火で爆発させる位には石が好きだった。
昔から石は買ったりしてましたが、知り合いの影響で本格的に集め始めた。

X(旧Twitter)@Ito_Masakl

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