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「虹の翼」(文春文庫/吉村昭著)
吉村昭先生の1983年の作品「虹の翼」、世界初の飛行機を生み出せたはずが、周りの無理解により実現することができなかった明治の発明家、二宮忠八の物語。 飛行機の歴史といえば、オットー・リリエンタールのグライダーやライト兄弟は日本でもよく知られていますが、本来ならばライト兄弟より先に飛行機による有人飛行が日本で実現していたかもしれなかったことは、あまり知られていません。 二宮忠八だけでなく、その前後の飛行機の発明にまつわる歴史や各国での経緯なども些細に記されていてとても興味深い本です。 この本を読み、様々な苦難と挫折に振り回されながらも持ち前の気力で乗り切っていく二宮忠八の姿から、大いに勇気をもらいました。 日清戦争の描写の中に少し不正確なところがありますが、そんな枝葉はどうでも良いくらいの素晴らしい物語です。 本作に関することは、こちら👇にも記載しております。 https://muuseo.com/T.S_beer_wagons/diaries/598
歴史小説 文春文庫T. S
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「熊撃ち」(文春文庫/吉村昭著)
熊撃ち猟師のオムニバス。 各地の猟師のインタビューにより書いた作品で、けっしてスゴい名漁師ばかりでなく失敗談なんかも混じっているのが面白い。 これを読むと、昔から獣害事件が絶えないなぁと思いますね。 昭和60年の作品。
ドキュメンタリー小説 文春文庫T. S
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「海の祭礼」(文春文庫/吉村昭著)
吉村先生お得意のジャンルの一つ、幕末通訳モノの一冊。 黒船来航より5年前に、意図的に日本に漂着したアメリカ人(※父はスコットランド人、母はネイティブアメリカンのチヌーク族)、ラナルド・マクドナルド。 当時、ネイティブ・アメリカンの祖先が日本人という説があり、それを信じたマクドナルドは日本に憧れを抱き、いろいろな経緯で「日本に行きたい」という思いを抱くようになり、1848年、捕鯨船の船員になって日本沿岸に近づき、船長にお願いしてボートをもらい単独で日本に辿り着く…。 彼が日本にとって「初めての英語教師」となり、その後の日本の通詞の英語力が発展、その中でも一番弟子であった森山栄之助は、後に外交の最前線で活躍する。 ラナルド・マクドナルドと森山栄之助の物語。 私も仕事で英語を使いますが、このような語学の先人たちがいて今があるのか…、と尊敬の念を抱き、これらの吉村先生の幕末の通詞モノは好きです。愛読書。
ドキュメンタリー小説 文春文庫T. S
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「闇を裂く道」(文春文庫/吉村昭著)
吉村昭先生の昭和61年の作品。 大正7年に着工され、実に16年もの歳月を費やして建設された鉄道省、東海道本線の丹那トンネル。 掘っているうちにトンネル上の丹那盆地の地下水が流出し、その凄まじい湧水により工事が阻まれ、いっぽうで丹那盆地が水枯れになって地元との軋轢を生み、また、地震の活断層の活動によりトンネルがずれるなど予想外の難工事となった結果、16年後にやっと完成して日本の大動脈。 これにより東海道本線の利便性が向上した。 綿密な調査に基づく吉村先生お得意のドキュメンタリー小説。
ドキュメンタリー小説 文春文庫T. S
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「関東大震災」(文春文庫/吉村昭著)
吉村昭 1973年(昭和48年)の作品。 1923年(大正12年)の関東大震災のドキュメンタリー。東京、横浜の人はこれは一度は読んでおくべき本です。 吉村先生らしい綿密な調査に基づいたリアルな記述で、特に被服廠跡の火炎大旋風のくだりは本当に恐ろしい記録です。そして震災後の朝鮮人虐殺事件や、亀戸事件、甘粕事件などにも言及。人の噂やデマ、集団心理についても考えさせらます。
ドキュメンタリー小説 文春文庫T. S
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「三陸海岸大津波」(文春文庫/吉村昭著)
明治29年、昭和8年、昭和35年と、三陸一帯は大きな津波に襲われ被害を出してきました。 その記録を、吉村昭氏が現地での綿密な調査に基づき、昭和45年(1970年)書き上げた本。 吉村先生の大災害モノだと、もう一冊、「関東大震災」という本もあるんですが、私はこれらを30年前、学生時代から読んでいました。年に一回は読んでます。 この本には、南三陸、田老、気仙沼、宮古…、2011年の震災で記憶に新しい各地の地名が全て出てきます。同じことが起きていたのです。 2011年、私は横浜に仕事で外出中でしたが、三陸沖で地震ですと速報で聞いてこの本の内容を思い出し(これはやばいのでは?)とすぐに思いましたが…。 こんどは、記録、記憶を風化させることなく、後世に伝えていかないと…、、、そう思います。 みなさん、今後に備えて「関東大震災」(吉村昭著)は読みましょう☝️
ドキュメンタリー小説 文春文庫T. S
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「坂の上の雲」(文春文庫/司馬遼太郎著)
日清、日露の時代を秋山兄弟と正岡子規を中心に描いた小説。この一連の激動の時代を追うには分かりやすく面白く書かれていますし、綿密な調査と取材に基づいて執筆されている素晴らしい名作なんですが、これそのものは歴史資料ではなく、あくまで「小説」であることは忘れないようにしています。 たとえば、この小説の中での乃木将軍の評価は、ちょっぴり割り引いて読むべきだと私は考えています。別に乃木さん贔屓で言っているのではなく、客観的に見ての感想です。旅順要塞の構造は決して日本人に初めてのものではなく、当時の日本国内にも同様の要塞は存在しました。また、機関銃も日本軍も持っていましたし、児玉源太郎が全ての采配を払った訳ではないと近年の研究では言われています。反長州閥の陸軍の一派が後年に書いた日露戦争の公式記録を一次資料としたので、あのようになったと。なのでケチョンケチョンに書かれています。 でも、面白い小説であることは間違いなく、愛読書なのでここに掲載してます。 そして、これを原作としたNHKのドラマ「坂の上の雲」はCG技術での映像表現が素晴らしいですね。最新の考証に基づいて、日露の戦場の様子がしっかり再現されていると思います。
小説 文春文庫T. S
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「蚤と爆弾」(文春文庫/吉村昭著)
吉村昭「蚤と爆弾」、もとは「細菌」というタイトルで昭和45年に雑誌「現代」に連載されていた作品を、昭和50年に講談社文庫からこのタイトルに改題され、我が家のは平成元年に文春文庫から発売された文庫版。 いわゆる「石井部隊」、日本陸軍の「731部隊」について吉村昭氏が書き上げた作品。 蚤(ノミ)を使ってペスト菌を中国の戦場にばら撒いたことからのタイトルです。この細菌戦は後の風船爆弾の歴史にも絡んできます。
戦史 文春文庫T. S
