旧日本海軍航空母艦 加賀

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旧日本海軍の航空母艦 加賀の古写真(横幅15センチ程)です。

加賀は計画当初には戦艦として設計されながらも、諸事情で三段式の飛行甲板を持つ異形の航空母艦として誕生し、その後、一段甲板式の巨大空母へと姿を変えていった全長248mを誇る旧帝国海軍の艦船です。

(不思議なことに現代の空母化された海上自衛隊護衛艦「かが」も全長は同じ248mのなのです。もしかして加賀の生まれ変わり?)

この写真は当時の印刷物を作る為に用意された写真原稿で、原本の写真と比較するとレタッチで大きく変わっている箇所がいくつかあります。

原本となる写真はWikipediaで「加賀 (空母)」と検索すれば1930年に撮影されたという同アングルの写真が掲載されているので比較が容易です。
(ちなみにローランド・エメリッヒ監督のミッドウェイ(2019年作品)の冒頭シーンで、この原本の加賀と同じ写真が壁に額装されています)

原本の写真と比較すると以下のレタッチされた箇所がありますので、比較していただければ面白いと思います。

1 戦闘機の追加
一三式艦上攻撃機と思われる機体がフォトモンタージュ(複数の写真を合成する方法)で空母上空に追加されています。
また背景の空も雄大な雲の流れがブラシで丁寧に描かれているのが分かります。
(実際に写真の上からブラシを使って描き込みされています)

2 無かったことにされた洗濯物?
原本には艦首甲板上に紐を吊って何やら洗濯物らしき物体(あるいは何かの旗?)があるのですが、印刷用原稿の写真はその部分が綺麗に黒く塗り潰されています。

3 本当はのんびり停泊中
原本の加賀は停泊中と思われ(艦首に係留用の鎖が見える)本体には寄り添うようにタグボートが二隻写っていますが、それらがきれいさっぱり消去されいます。
そしてこの加賀はまるで最大戦速で航行中のように勇ましく波飛沫を上げています。

4 その他いろいろ
甲板最上部の支柱が消去されていたり、艦首甲板下側の構造物が塗りつぶされていたりと細かく修正されています。

肝心のこの加賀の姿を使った印刷物は1941年(昭和16年)発行の陸軍恤兵部海軍絵葉書全15枚セット帳の中の1枚に見ることができます。
ちょうど1941年は太平洋戦争勃発の年ですので戦意高揚も込めて勇ましく見える姿にレタッチされたのではないでしょうか。

しかし加賀の三段式甲板は既に1935年に一段全通式甲板に改装完了しています。
さらにモンタージュで追加された一三式艦上攻撃機はこの頃はとっくに時代遅れとなっており、単葉機の九七式艦上攻撃機や九九式艦上爆撃機の時代だった筈です。

軍事機密上、最新の兵器を公にすることが出来なかった為、あえて改装前の姿と古い一三式艦上攻撃機との組み合わせにしたのでしょうか。

それにしてもただでさえ独特の威容を誇る三段式空母の加賀に様々なレタッチを加えてしまった事で、まるで「異世界の航空母艦を描いた一枚の絵画」になってしまった点が、逆にこの古写真の素晴らしい魅力ではないでしょうか。

またこの古写真の裏には「尚」の墨文字が手書きされています。(写真2枚目)
推測ですがこの古写真は当時の尚美堂出版部(大阪の会社?)の印刷原稿だったのかもしれません。

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