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Brachyhipposiderus antiquatus
最も初期のHarpetida(ハルぺス目)の仲間です。ハルぺスと言えば、オルドビス紀ロシア産やデボン紀モロッコ産など、産出は少ないけれど特徴的な大きな鍔状の頭部を持っている三葉虫として知られます。以前は、Asaphida(アサフス目)に分類されていた時期もありましたが、比較的に同時に分化していた事が分かります。原始的な姿のHarpetidaですが、円盤状の大きな頭部に小さな眼があり、既に特徴としては、この頃でも確立していた事が分かります。
Upper Cambrian Harpetidae,Harpetidea,Harpetina,Harpetida TRI-717 SanduTrilobites
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Archegonus(Philibole) aprathensis
2019年位に市場に出てきた石炭紀ポーランド産。産地のヴァウブジフは、チェコの国境に近いドルヌィ・シロンスク県なので、同一種として産出するドイツAprath産とは、エリア的には近くはありません。特徴が乏しい種類なので、同一種でも違和感は無いですが、仮名なのかは分かりません。貴重な石炭紀の完全体の出る産地が増えたのは、カザフスタン産以来かもしれません。
Lower Carboniferous Phillipsiidae,Proetoidea,Proetina,Proetida TRI-737 SzczawnoTrilobites
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Irinia arcuata
初期のアサフス目の一つで、全体的に丸みを帯びた体形をしております。見た目は、Asaphida(目)の仲間とかけ離れている様に見えますが、頭部の丸さや、これから発達していくであろう尾部も確認できます。裏面には、ネガですがこの地の代表種、保存状態の良いHatangia scitaが3体ほど残っています。シベリアの三葉虫は、近年は見た目だけでは考えられない位に高額化していて、今購入しようとすると驚く金額となっています。世界自然遺産に登録され、(この産出地は登録地ではないとされる)入手ができないという事もありますが、アクセスが全三葉虫産地でも最も厳しいと思われ、調達コストが非常に高いのも一因かと思います。
Middle Cambrian Anomocaridae,Anomocaroidea,Asaphida TRI-88 Mayan stageTrilobites
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Hedinaspis canadensis
初期のAsaphida(目)の仲間ですが、アサフスらしさは感じられません。ノジュール中から産出する種類なので、どうしても縁取りが明瞭な境界が得難く、特徴が分かる標本は少ないです。McKay Groupの標本は、一つの標本だけで、その種の特徴を全て押さえられる完全体は少なく、幾つかの同種の標本を入手して少しずつ状態の良い部分を重ねて比較していくのが良いと思います。
Upper Cambrian Ceratopygidae,Asaphoidea,Asaphida TRI-649‐2 McKay GroupTrilobites
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Estaingia(Hsuaspis) bilobata
カンブリア紀前期では世界的に有名なEmu Bay Shaleは、三葉虫に興味が無い一般の方でもバージェスや澄江と並ぶ知名度はあると思います。この地の三葉虫は種類は少ないですが、巨大化したRedlichiida takooensisや体節の多さで有名なBalcoracania dailyiの影に隠れて地味な種類です。初期の三葉虫は分類的に難しい所があり、本種もEmuellidae(科)という特殊な存在であります。この標本は欠損していますが、本来ならば頬棘がある種類です。
Lower Cambrian Emuellidae,Emuelloidea,Ptychopariida TRI-131 Emu Bay ShaleTrilobites
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Acernaspis orestes
シルル紀カナダのJupiter累層から、圧縮の影響が少なく透明感さえある質感の良い標本が近年出回るようになってきました。出回るといっても数は多くはありません。この種は、初期のファコプスの仲間であるAcernaspisです。ファコプスの代名詞ともいえるデザインは、丈夫な殻と完全に丸くなる事のできる防御態勢、高度に発達させた複眼と棘棘とは違う防御方法を確立し、デボン紀には一時代を築きました。
Lower Silurian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-466 JupiteTrilobites
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Placoparia zippei
オルドビス紀チェコ産では、一般種ではあります。この種類は、ポルトガル、スペインやモロッコなどオルドビス紀の地層から広く見つかりますが、ノジュールから見つかるのはチェコ産の産状です。記載年も古く、欧州では古典種の一つとして知られてきました。派手さはありませんが、彫の深い独特の形態をしています。
Ordovician Pliomeridae,Cheirurina,Phacopida TRI-258 DobrotivaTrilobites
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Ellipsocephalus hoffi
チェコを代表する種類であり、チェコ産の中では最もポピュラーな種類かと思います。しかし、絶産して時間が経ちますので、近年は簡単には入手できなくなってきました。この地味な種類は、群れで暮らしていた為、この標本の様に群衆状態で見つかるのは一般的な産状です。WIKIPEDIAでも盲目の底生形と紹介されていますが、実際には小さな眼があるとされ、多くの個体が小さく明瞭でないため、所在がはっきりしていなかったのですが、瞼翼の形状などからも高い確率で存在していたと思われます。
Middle Cambrian Ellipsocephaloidea,Ellipsocephaloidea,Ptychopariida TRI-19 JinceTrilobites
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Coosella kieri
見た目は平坦で地味な種類ですが、そこはWeeksの種類だけあって入手難易度が高く、高額種として知られます。特徴は、中央が括れた尾部です。Weeksでは、赤系と黄系の母岩がありますが、こちらは黄系母岩です。頭部から背軸部に黒いシミがありますが、Weeks産で偶に見られる消化器系の名残です。近年、Ptychopariida(目)が消滅する考えでは、本種はAulacopleurida(目)に移籍しております。
Upper Cambrian Crepicephalidae,Ptychoparioidea,Ptychopariida TRI-418 WeeksTrilobites
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Neometacanthus stellifer
Neometacanthusと聞くと三葉虫を収集している多くの方が、モロッコ産の同種が先ず頭に浮かぶと思いますが、元々はアイフェル(Eifel)から産出するこの種類に名前がつけられています。古くから研究されていたEifelと同じ時代で見た目もほぼ同じなモロッコ産は、比較的近年に知られるようになり、商業的に採掘されて市場に出てくるため、モロッコ産のほうが圧倒的に知名度があるのです。Eifel産自体が市場に出てくる事が稀で、一見ではモロッコ産に見劣りする、このNeometacanthusですが、完全体を手にすることは限られるのです。
Calmoniidae,Acastoidea,Phacopina,Phacopida TRI-323 Ahrdorf Gees,Eifel,GermanyTrilobites
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Cyclopyge sp.
完全な状態のモロッコのキクロピゲです。複眼付のキクロピゲが如何に貴重なものかはコレクターなら誰もが知るところと思います。浮遊生活を送っていたキクロピゲは、底棲生活の他の三葉虫の様に泥に埋まる生活では無い為、どこに埋まるか特定の層で見つからず、そもそも化石化する確率が極端に低いのです。その中で脱皮殻でない複眼付となると化石化することが奇跡と言って良い確立となります。複眼付の姿は、異様に頭でっかちで宇宙人的な不思議な姿をしています。古生代の海を逆さまになって海底だけでなく360度の視界を確保して泳ぎまわっていたと考えられています。
Ordovician Cyclopygidae,Cyclopygoidea,Asaphida TRI-379-3 KtaouaTrilobites