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Morocops ovatus
最も一般的なファコプスであり、モロッコ産に限らず、ザ・ファコプスといえます。2000年代始めくらいまでは、Phacops speculatorと称され、その後、Barrandeopsという属名に変わり、現在はMoroccopsで落ち着きました。モロッコ産のファコプスは、細かい所まで見ていくと多種多様な種類が現在では提唱されています。本種と比較して複眼や顆粒、体形などがどう様に違うかという基準になる種類に思えます。
Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-23 -Trilobites
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Nyterops yetieifliensis
頭部だけの部分化石ですが、モロッコ産とは違う頭鞍のブツブツの病的な異様さに惹かれ、購入した標本です。比率的に大き目で不揃いのブツブツは、見方を変えれば気持ち悪くも見えます。ファコプスが好みの収集家でも、この種類が好みであるとする収集家は少ないかもしれません。
Lower Devonian(Eifelian) Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-751 FreilingenTrilobites
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Ductina(Illaenula) vietnamila
三葉虫コレクターが軽視するけど、実は謎の産地は幾つかあると思いますが、本種も該当するのではないでしょうか。ドイツなどで産出する事で知られる眼の無いファコプスDuctina、小さくて地味で安価なので、意外とベテランコレクターでも所有していない方もいる筈です。近年はIllaenula(Illaenusと紛らわしいが)と呼ばれる事が多くなったり、昔からのD.vietnamicaも混在するなど混乱する状況も見えます。小種名からベトナムと関連するか、ベトナムで近縁種が産出する可能性もあるのかもしれませんが、詳細は分かりませんでした。中国では数少ないデボン紀の三葉虫産地で、市場では本種位しか見かけませんが、Cyphaspidesや眼のあるPhacopsなど三葉虫の種類は知られています。 (中国名:越南沟通虫)
Middle Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-34 -Trilobites
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Reedops cephalotes hamlagdadianus
この化石をじっくり見ると、三葉虫コレクターでも気持ち悪いと目を逸らす人もいるかもしれません。無数の巻貝が三葉虫の周辺を蠢いている訳ですから、無理もありません。三葉虫の化石として見た時も、醜い異物として邪魔な存在でしかないので、普通のプレパラーターでしたら、奇麗に取り除いていると思います。ただHammi氏は、当時の環境を伝える価値を理解していますから、非常に手の掛かる、この様な産状の化石を残してくれているのです。巻貝は常に共存していたというより、この三葉虫の死後、腐敗する前に集まってきた掃除屋なのだと個人的には想像していますが、他に理由を考えてみるのも楽しいです。
Lower Devonian (Pragian Stage) Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-1-2 LhandarTrilobites
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Reedops cephalotes hamlagdadianus
モロッコのReedopsは、私が初めて購入した三葉虫でした。この標本は、そこから買い替える事、4代目ではあります。この種類を手にした事で、何かに取りつかれ様に三葉虫を収集する事になる元凶となった三葉虫であります。一般種ではありますが、所謂ファコプス系のMorocops, Pedinopariops、Austeropsなどとは姿が異なる事が素人でも分かると思います。これらファコプス系の中では、産出量はそれ程多産する訳では無い種類だと感じます。近年、この標本の様な大型のReedopsの保存の良い個体は、入手が難しくなってきています。 【標本リンク】FossilEra https://www.fossilera.com/fossils/2-9-detailed-reedops-trilobite-atchana-morocco
Lower Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-1 LhandarTrilobites
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Reedops cephalotes
モロッコ産であったら廃棄されそうなレベルの標本かもしれませんが、こちらは本種の命名の元祖ともいえるチェコ産です。既に新規産出が無いチェコ産にあってカンブリア紀やシルル紀産、以外の時代の三葉虫は入手難易度が高いです。姿自体は、モロッコ産と違いが判らないレベルです。母岩の質感もモロッコ産に近いのですが、型抜きに微妙に失敗したチョコレートみたいな質感です。
Lower Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-660 ProkopTrilobites
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Eldregeops(Phacops) rana
アメリカ合衆国には、全ての州ではありませんが、Statefossil(州の化石)が制定されています。日本でも文化に根付いた都道府県の〇〇がある様に、様々な化石が多く産出し、一般にも日本より馴染みがあるんだと思います。時代も様々な州を代表する化石ですが、恐竜など強敵を抑え、3つの州で三葉虫が選出されています。その内、ペンシルヴァニア州にて「Phacops rana」が1988.12.5に制定されています。Phacopsは、現在ではEldregeopsに改称されていますが、どちらかというとニューヨーク州やオハイオ州のイメージが強いと思います。ペンシルヴァニア州産の「Phacops rana」を探して、漸く入手できたのですが、この化石です。保存状態は、世界的な良産地のオハイオ州などと比較してはいけません。何せ「州の化石」なのですから。 【参考リンク】Statefossil https://web.archive.org/web/20091026213222/http://www.geocities.com/stegob/statefossils.html
Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida - Pennsylvania,USA Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,PhacopidaTrilobites
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Adrisiops weugi
この種類を始めて目にした時は、頭部の粒々が水膨れが沢山あるように見えて、病的過ぎて嫌いなタイプでした。その頭部が他のPhacopsと明らかに違い特徴的なので、見分けが付きやすい種類であります。サイドから見ると頭部が丸くなく垂直に近くに切り立っていて、頭部の粒々が滑らかに潰れており下側に行くほど細くなっていきます。複眼の下に横にライン状の隆起列も見られます。頭鞍自体も他のPhacopsより小さめで、胸部と尾部には粒々がありません。 2022.1標本を入れ替えました。
Lower Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-584 -Trilobites
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Phacops sp.
デボン紀ドイツ産といえば、BundenbachやEifel(Gees)といった有名な産地があります。ドイツには他にもデボン紀の三葉虫が産出する産地があり、この標本はLahn(ラーン渓谷)からの標本です。産出種は、Eifelと同様にデボン紀モロッコ産と近い種を産出します。この種類は、小さめの複眼が特徴で、オクラホマ州のPaciphacopsに近い感じです。購入時は、Pedinopariopsとなっていましたが、ドイツの他産地やモロッコの中型種とは似ていないため、一旦Phacopsの仮称としておきます。
Midle Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-293 Rupbach SchichtenTrilobites
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Acernaspis orestes
シルル紀カナダのJupiter累層から、圧縮の影響が少なく透明感さえある質感の良い標本が近年出回るようになってきました。出回るといっても数は多くはありません。この種は、初期のファコプスの仲間であるAcernaspisです。ファコプスの代名詞ともいえるデザインは、丈夫な殻と完全に丸くなる事のできる防御態勢、高度に発達させた複眼と棘棘とは違う防御方法を確立し、デボン紀には一時代を築きました。
Lower Silurian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-466 JupiteTrilobites
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Morocops spinifer
Assaの"Bumpy phacops"の中では、最も粒々の度合いが高く、特に頭部の粒々は気持ち悪い位に密集しています。2012年位に突如登場した時には、Phacopsがこの様な姿で登場するとは想定しておらず、衝撃的でした。クリーニングも相当集中が必要とのことで、本標本では2体あるとはいえ名手Hammi氏でも述べ30時間かけてクリーニングしたそうです。また比較的柔らかい石質のため、欠けやすく通常のクリーニングより困難を極めることが分かります。本種だけは黄土色の母岩が特徴のため、他の"Bumpy phacops"とは産出エリアが異なると思われます。
Lower Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-450-2 KhebchiaTrilobites
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Phacopidina micheli micheli
産出量が少ないオルドビス紀フランス産の中では最も一般的な種類の一つです。ポルトガルやスペインなど欧州の広い範囲での産出が確認されている種類です。フランス産は、モロッコ産の様に保存が良い訳でもなく、商業採掘もされていないため出回る事が少ないです。欧州産化石らしい渋さが気に入っており、個人的には好きな産地です。
Ordovician Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-181 TraveusotTrilobites
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Geesops sparsinodosus gallicus
ベルギーとの国境に近いVireuxからフランス産では珍しいデボン紀の三葉虫です。この地域の三葉虫は10年以上前に保護されています。産出量も少なく、保存状態も他の産地を見てしまうと決して良いとは言えませんので、三葉虫コレクターでも注目度は低いかと思います。地域的にも隣接するドイツのEifelと年代的にも近く、モロッコで一般的に産出する種類にも類似しています。
Middle Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-272 JemelleTrilobites
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Eldredgeops rana rara
以前はPhacops ranaと呼ばれていましたが、属名がEldredgeopsになり、まだ馴染みが湧きません。オハイオ州産のものも保存状態が良いですが、ニューヨーク州産も保存レベルは高いです。ファコプスは三葉虫の中でも特殊な複眼を持っていたのですが、多くの三葉虫は現生の昆虫類と同様に6角形のレンズの集合である完全複眼(holochroal eye)でした。しかし本種を含むオーソドックスなPhacopsの仲間は、丸い単眼が組み合わさった集合複眼(schizochroal eye)という特殊な複眼を持っており、光学的に球面収差が補正される高レベルのレンズを古生代に獲得していたのでした。
Middle Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-326 MoscowTrilobites
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Morocops sp.
三葉虫の色に関しては、化石化してしまうと生前の色が保存されませんので、推測の域でしかありませんでした。化石の色は、鉱物置換などで生前の色が保存されている訳ではありません。モロッコのHamar Laghdadの極限定された地域から産出する赤い三葉虫を研究した報告が興味深く、この謎を解く一つの例と考えられます。この産地から赤い体色と緑の複眼をもった三葉虫が産出されます。チューリッヒ大学の研究によればX線分光分析により解析した結果、生前の組成が一部保たれているとの結果が出たそうです。三葉虫というのは、イセエビのような色をしていた可能性があるという事です。 【参考サイト】BioOne https://bioone.org/journals/acta-palaeontologica-polonica/volume-54/issue-1/app.2009.0112/Red-Devonian-Trilobites-with-Green-Eyes-from-Morocco-and-the/10.4202/app.2009.0112.full
Lower Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-477 Hamar LaghdadTrilobites