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Neometacanthus stellifer
Neometacanthusと聞くと三葉虫を収集している多くの方が、モロッコ産の同種が先ず頭に浮かぶと思いますが、元々はアイフェル(Eifel)から産出するこの種類に名前がつけられています。古くから研究されていたEifelと同じ時代で見た目もほぼ同じなモロッコ産は、比較的近年に知られるようになり、商業的に採掘されて市場に出てくるため、モロッコ産のほうが圧倒的に知名度があるのです。Eifel産自体が市場に出てくる事が稀で、一見ではモロッコ産に見劣りする、このNeometacanthusですが、完全体を手にすることは限られるのです。
Calmoniidae,Acastoidea,Phacopina,Phacopida TRI-323 Ahrdorf Gees,Eifel,GermanyTrilobites
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Cornuproetus cornutus
Cornuproetusといえばモロッコ産の入門種として軽視されがちな種類であります。しかし、本標本は新規採掘がもうできないドイツのGees産です。見た目は、モロッコ産と変わりないですが、ドイツ産の方が若干小ぶりな感じです。先に研究されてきたドイツ産より良質で多産するモロッコ産の方しか見かけなくなっていますので、Cornuproetusはモロッコのものを指すと思われますが、むしろ此方が本家と言えます。Gees産は不完全な標本が多く、この様に複眼まで残っている完全体は一般種であっても入手が難しいです。
Middle Devonian Proetidae,Proetoidea,Proetida TRI-456 AhrdorfTrilobites
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Alcymene neointermedia
嘗て日本でもシルル紀の事をゴトランド紀と呼んでいた事もある程、シルル紀における重要な産地ゴトランド島、島全体が石灰岩と言われ、三葉虫も産出したのですが、ゴトランド島の三葉虫は完全体が少なく、状態の良い標本の入手は苦労する産地であります。ゴトランドからは、数多くのカリメネが報告されているのですが、明確な違いは状態の良い標本でも難しいレベルだと感じます。本種は、独立した属名が与えられているのですが、外見に大きな違いは学者レベルでなければ論文からでも分かり難いです。既に採掘できないゴトランド産では数少ないクリーニングが近年になってからされている標本なので、細部の保存状態はとても良い個体です。Alcymeneと同定されている標本は、実は世界で見ても数個体レベルと言われています。
Upper Silurian Calymenidae,Calymenina,Phacopina,Phacopida TRI-642 AhrdorfTrilobites
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Calycoscutellum grafi
状態の良い標本ばかり見ていると何の化石かも分からないと思いますが、スクテラムの一種です。既に絶産のドイツのGeesでは、古くから研究され近年のモロッコ産デボン紀三葉虫でお馴染みの近縁種が産出していました。状態が良くない標本が多いのですが、私の様な欧州古典産地が好みの者にとっては、モロッコ産などよりはるかに格上の産地であります。Geesにおいてもスクテラムの仲間は数は少なく、完全体はまず無いと言って良い位に希少さであります。この標本は完全な複眼と特徴的な尾板の畝がよく分かり、「化石標本」らしい渋さがあります。
Middle Devonian Styginidae,Illaenoidea,Illaenina,Corynexochida TRI-473 AhrdorfTrilobites