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Gerastos cuvieri
ゲラストスという種は、小さくて派手でもなく、比較的安価に入手できるので、モロッコ産三葉虫の中では軽視されがちです。しかし実際は、種類も多様で案外奥が深く、何より可愛らしい種であります。 こちらはモロッコ産ではなく、ドイツのGees産のゲラストス・キュヴィエリ (Gerastos cuvieri) です。見た目はモロッコの類似種に似ておりますが、やはり一回り小さい印象があります。 目に艶がありキラキラしているので、まるで生きている小さな昆虫のようです。母岩の端でくるりと丸まっており、実に愛らしい標本です。
Devonian Ahrdorf Gees, Geroltstein, Eifel, Germany Gerastos cuvieritrilobite.person (orm)
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Geesops schlotheimi
一つ前の標本、ネオメタカンサス・ステリフェルと同一の母岩に共存する、ギーソプス・スクロテイミ (Geesops schlotheimi) です。 頭胸部の境でぐにゃりと180度折れ曲がっておりますが、細部はネオメタカンサスに比べても良好に残っています。頭鞍の比較的大粒の顆粒は肉眼でも観察でき、ルーペで確認すると複眼も良好に残っていることがわかります。 モロッコの種より小型なので、判別は可能かもしれませんが、保存状態の良さからは、モロッコの標本であると勘違いしてしまうかもしれません。
Devonian Ahrdorf formation, Flesten Member Gees, Gerolstein, Eifel region, Germany Geesops schlotheimitrilobite.person (orm)
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Cybantyx cf. anaglyptos
マルヴァン (Malvan) より産出のキバンティクス・アナグリプトス (Cybantyx cf. anaglyptos) です。 表面がツルっとした全体的に丸っこい体型に、頭部に占める割合としては大きめの半円状の眼を持つなど、可愛らしい見た目をしている種です。巷の標本を見ると、40-50mmの個体が多く、こちらはサイズとしては、標準よりやや小型のようです。 より黒っぽい標本本体の色合いを除けば、有名種である米国NY州のRochester shaleのブマストス (Bumastus ioxus) と見た目が似ております。今や、そのブマストス自体、良い標本は見かけない存在になってしまいましたが、英国産のキバンティクス/ブマストスは、もとより滅多に見かける事はありません。とても希少な標本と言えるかと思います。 キバンティクスとブマストスの形態的な差異は、今ひとつ把握できておらず調査中です。ただ、ある情報源によると、(やや不確かですが) 産出年代的には、ブマストスはシルル紀でも、本種キバンティクスの産する時代 (stage) のホメリアン (Homerian: 4億3050万年前-4億2740万年前) には出ないという話があります。 実際、ホメリアンの一つ前の時代 (stage) のシェインウッディアン (Sheinwoodian: 4億3340万年前-4億3050万年前) には、同じくマルヴァンやその近郊などで、ブマストス・バリエンシス (Bumastus barriensis) という、これまた、そっくりさんな種が産出するようで、少なくとも英国産ではキバンティクスとブマストスとで、微妙に時代がずれるようです。 本産地同時代からのキバンティクスとしては、アナグリプトス以外に産出せず、見た目からもキバンティクス・アナグリプトスとして良い気がします。ただ、採掘者氏からの提供情報では、何か思うところがあったようで、参照 (cf. anaglyptos) となっていた為、標本名はそちらを反映したままとしております。
Homerian, Wenlockian, Silurian Coalbrookdale formation Storridge, Malvern, Worcestershire, UK Cybantyx cf. anaglyptostrilobite.person (orm)