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擬スピネル型ルビー/鋼玉
世界的な宝石産地であるモゴックのルビーです。 モゴックとはミャンマー第2の都市マンダレー北方に位置する町の名で、大小さまざま多数の鉱山を擁する重要産地であります。 ここでは多種の宝石が採掘されていますが、それらの中でも最も有名なのが彼らルビーではないでしょうか。 この地のルビーは鉄分含有の少ない大理石の中に形成されるため色鮮やかな傾向にあり、特に良質で紅鮮色のものはピジョンブラッドと呼ばれ、価値ある名品として取引されてきました。 鉱物としてはコランダムの色変種に属しており、結晶中のアルミニウムが微量の酸化クロムと置換されることで深紅に染まった個体がルビーと認められます。 和名で『紅玉』とも称される7月の誕生石です。 小粒ながら流石は著名産地の原石。 "鳩の血" ほどではなくも情熱的に赤く、透明度も抜群に良好です。 結晶形はスピネルとよく似た擬八面体を形成していますが、これも歴としたルビー結晶の一形態。 やや変則的な形状ながらしっかりと結晶面が揃っており個人的には高評価な一石であります。 #コランダム
宝石 鉱物標本 9 2014年テッツァライト
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立山の魚卵状珪石/シリケイトウーライト
温泉水の中で濃縮されたケイ素の凝固物。 このガラスビーズのような球体もまた歴とした鉱物です。 それどころか驚くべきことに、なんとこんな姿でもオパールの一種であるというのです。 決してお菓子の乾燥剤をばらしたものではありません。 地質由来の自然物である証拠に、この1~2mmの小さな球体ひとつひとつの内部に砂粒が封じ込められている様子が確認できます。 これは岩石の破砕物を核としてケイ素酸が凝集したことを意味していると同時に、オパールと言う鉱物の奥深さを物語っているものでもあります。 この奇石は一体どのような環境から生まれてきたのでしょうか。 その場所は国内にありました。 飛騨山脈の一角、立山火山の爆裂火口の中に、彼らの故郷である直径30メートルほどの熱水泉“新湯”が存在します。 元々は単なる火口湖でしたが、1858年に起きた飛越地震により熱水が湧出したことで、現在のような湯煙の立ち込める温泉に変じたと伝えられています。 約70℃の地下水が滾々と湧き続けるこの池のケイ酸濃度は異様に高く、溶存するミネラル分が固形物として析出するには充分な条件が揃っていました。 このような泉質の中、浮遊する砂粒を中心にシリカが集積して大きく成長。 そして絶えることのない湧水に煽られ続けた結果、こんなにも美しい玉滴石質のオパールの生成に繋がったと推測されています。 ここもまた国内の鉱物愛好者にとっての聖地、ならぬ“聖池”なのであります。 現在では『新湯の玉滴石産地』として国の天然記念物に指定されているため、当然ながら採取不可の聖域となっています。 https://toyama-bunkaisan.jp/search/2195/ とはいえ発見された当時にそのような保護が施行されている訳もなく多くの標本が海外に持ち出されてしまい、その珍しさのためか一粒1$もの価格で取引されたとの逸話も残されています。 こちらに掲載している彼らも明治期に海を渡ったと訊いていますが、それ再び国内に戻した形になるのでいわゆる里帰り品ということになります。 海も時代も超え遠路遥々よく戻ってきてくれました。 #オパール #国産鉱物
鉱物標本 5.5~6.5 2014年 SiO₂・nH₂Oテッツァライト
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ペトロレウムクォーツ/石油入り水晶
水晶(石英/クォーツ)といえば誰もが知る鉱物の代表格で、今日までに多種多様な種類が発見されています。 色によって宝石名が変わるだけでなく、内包する不純物によって呼び名が変わることもバリエーションが豊富となった一因です。 一例としてこちらの両剣水晶。 結晶化の過程で内部に鉱物油を包有したことから『石油入り水晶』などと呼ばれています。 この鮮黄色の液体はハイドロカーボンを主成分とするものとされており、紫外線を照射することで青白く幻想的な蛍光を放つのでした。 さらに液中には炭化物らしき固形物と天然ガスと思われる気泡が浮かんでおり、結晶を傾けるとコロリと動く姿が確認できます。 太古の遺物が外界から隔絶され変容することなく保存され続けた様はコールドスリープさながらであります。
宝石 鉱物標本 7 2014年テッツァライト