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オーロラin田上山トパーズ/黄玉
滋賀県田上地方は石好きにとって聖地のひとつ。 水晶や長石をはじめとした鉱物を胚胎する当地は日本三大ペグマタイトとして知られ,古くから多くのマニアたちの羨望を集めてきました。 中でも琵琶湖の南部にそびえる湖南アルプスの「田上山」は伝説級の産地。 明治期から高品質のトパーズを産出し,その宝石級のクオリティから多くの結晶が海外に輸出されたという(勿体ない)エピソードは有名です。 田上山には私も一度だけ登った経験があり,かの有名な中沢晶洞の中を観察した思い出があります。 こちらのトパーズはなんとその田上山で採取されたという酒黄色の巨晶。 大きい,美しい,そして何より結晶形が整っている! 私が田上山に登ったときは目当てのトパーズが採れなかったのでこれはまさに念願の一石であります。 実はこのトパーズ,ただ美しいだけでなく面白いギミックが隠されていました。 それはなんと蛍光性。 短波の紫外線を照射すると,結晶内部に黄緑色の靄が浮かび上がるのです。 結晶の全体像はあくまでも透明であるためその正体を肉眼視することはできませんでしたが,これは何らかの蛍光物質を包有しているということなのでしょう。 まさか田上山産で,しかもインクルージョン蛍光を有する標本に出会えるとは思いませんでした。 ミネラルショーでニチカさんからの購入品です。
宝石 鉱物標本 8 Al₂SiO₄(OH,F)₂テッツァライト
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ペツォッタイト・キャッツアイ/ペツォッタ石
2002年にアンバトヴィタのサカヴァラナ鉱山で発見され、その翌年に晴れて新種として認定されたピンク色の宝石です。 発見された当初はエメラルドやモルガナイトらと同じ緑柱石の一種で、単なるピンクに発色したベリルであると見做されていました。 成分的にもBeとAlを含むケイ酸塩鉱物で、結晶の形状も六角形に成長する点は確かに両者ともよく似ています。 セシウムを含み、ピンクの源が微量のマンガン由来である点もモルガナイトと共通です。 しかし分析の結果、種々の特性が緑柱石とは異なることが判明しました。 大きな差異はやはり化学組成です。 緑柱石はBeとAlのケイ酸塩鉱物ですが、ペツォッタ石はこのうちBeの一部をCsやLiと置き換えた構造を持っていました。 特にセシウムの含有量においては、モルガナイトのそれを優に上回る数値誇っているとされます。 これが決定打となったのでしょう。 “ラズベリル”と呼ばれていたはその石は、既存のベリルとは物性を異にする独立種として認知されるに至りました。 この特徴的な鉱物名は、サンプルを分析した『フェデリコ・ペツォッタ』博士に因んで銘打たれたものです。 同氏はミラノ自然史博物館のキュレーターを務めていた人物で、さらにマダガスカルのペグマタイト鉱床の研究にも深く携わっていました。 そしてペツォッタイトは丁度この花崗岩質の濃集帯から出でた鉱物です。 博士が心を傾けたマダガスカルの地で、氏のこれまでの熱意や努力が美しい結晶となって地上に顕現したものが、このペツォッタイトなのではないかと夢想せずにはいられません。
宝石 鉱物標本 8 2013年テッツァライト
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シャンパントパーズ/黄玉
《当館の2018年投稿アイテムいいね!No.1》 酒黄色なものが広く知られていることから和名で『黄玉』とも称される11月の誕生石です。 現存する所持品の中では最古参の石ですが、現在においても一線級の存在感を放ち続けている私のエース。 石っ子になり初めて手にした宝石質標本がこの石で、現在の方向性を決めたと言っても過言ではない唯一無二の存在であります。 柱面にはアウターファントム的な発達痕が刻まれており、彼の成長過程が一筋縄では行かぬものであったことを伺わせます。 また結晶の形も個性的で、上から見るとハート形にも見えるという他のトパーズには見られない要素も備わっています。 ひとくちにトパーズと言ってもこの鉱物には2つのタイプがあり、副次的に含まれている成分の比率によって次のように区別されます。 ひとつは水酸基が優勢な「OHタイプ」。 もうひとつはフッ素が支配的な「Fタイプ」。 この両者のうち希少とされるのは前者の方で、所謂『インペリアルトパーズ』が属しているのもそのタイプです。 屈折光がより煌びやかで色も濃く、また紫外線による退色にも強いという特徴があります。 こちらは恐らくフッ素タイプの個体ですが輝くシャンパンゴールドがとても美しく、入手して15年以上経過した今でも色褪せは見られません。 これから何十年と先、私がどんなに年を重ねてもこのトパーズには変わらない姿でいて欲しいものです。 #トパーズ
宝石 鉱物標本 8 2004年テッツァライト