『レイダース 失われた聖櫃』と私
初版 2022/12/03 00:15
改訂 2023/05/21 15:45
『レイダース 失われた聖櫃』と私
英国の007シリーズを除き、アメリカでは既に過去のものとして忘れ去られていた《冒険活劇ジャンル》。それを、VFXの効果的な活用で蘇らせたエポック作品。
この作品以降、同ジャンルの映画が数多く製作され『ロマンシング・ストーン』、『ハムナプトラ』、『トゥームレイダー』、『ナショナル・トレジャー』などメジャー作品も登場。
それでも、インディアナ・ジョーンズ教授の冒険シリーズが幾多の作品と一線を画すのは、稀代のクリエイター J. ルーカス& S. スピルバーグのコラボレーションであり、加えて主役に予定されていたトム・セレックがTVシリーズ「私立探偵マグナム」出演のためキャンセルとなり、結果 ハリソン・フォードがキャスティングされた幸運もある。
しかし、最大の魅力は観客の想像を完全に越えたクライマックスにある。
※ここからは【ネタバレ】です。
ドイツ軍との争奪戦の末、聖櫃は悪の手に渡る。しかし、その中身は十戒の石板ではなく砂漠の砂。
なんと皮肉なラストだろう。従来の宝探し映画ならこれが定番の落ちで、THE END・・・だが
ナチスの発電機が不気味な唸りをあげ・・・真のクライマックスに突入する。
観客はドイツ兵やインディと共に、神秘の聖櫃が持つ〝戦慄すべき神の力〟の目撃者となる。
そして、その余韻も冷めぬまま、もう一つのVFXシーン、映画終了のエンディング・テーマが流れる直前の皮肉なラストシーン・・・神秘の聖櫃の行方に呆然となる。
観客が見たいものを〝これでもか〟と見せ、更にもう1回クライマックスを用意する。
007シリーズがスタンダードとした演出だが、その本家でさえセルフパロディと化し、人気が下降し始めた80年代。
それをVFXという新たな武器で復活させ、ハリウッドに再定着させたのが、このレイダースだった。
観客は驚き、興奮し、熱狂したが、本当に大きな衝撃を受けたのは当時のハリウッドだろう。VFXはSF映画だけでなくアクション映画の可能性を限りなく広げる救世主だったのだ。
現在のVFXアクション・アドベンチャー映画は(もちろんMCUも、M:iシリーズも)間違いなくレイダース革命の影響下にある。
『スター・ウォーズ』と共にVFX全盛のハリウッドを作った傑作である。
映像技術だけでなくシナリオも実に巧みで、現実主義者的な言動をしていたインディが、冒険を経て歴史のロマンや神秘を信じるようになる。
主人公が夢を取り戻す話であり、同時に彼が(それを持つ軍隊は無敵となる)聖櫃をアメリカに持ち帰ることで、第二次世界大戦の結果に影響を与えたという《センス・オブ・ワンダー》な物語でもある。
また、アメリカン・ニューシネマに象徴されるベトナム後遺症、自虐の波に呑まれ、自信を失い迷走した若いアメリカ人たちに《自由の為に闘う意味》を映画を通して示した。アメリカ再生の映画でもある。
私にとっては、映画の構造というかクリエイティブ面に目を向けさせてくれた映画で、“魂は細部に宿る”の言葉通り、映画のキーアイテム“聖櫃”、“ラーの杖飾り”、“黄金の像”などプロップの造形に強く惹かれ、レプリカ物をコレクションする原点になった。
インディは、砂漠やジャングル、古代の遺跡を探索するが、私は主に街の中古ショップで《お宝》を探すのだ。笑
墨石亞乱
好きな映画などのアイテムをこつこつ集めています。
コレクションに関する基本姿勢
・価値あるものを安く入手する
・買ったものは積まずに飾って鑑賞する
・存在しない場合は創る
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