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You Were Never Lovelier
身近にいるハリウッドミュージカル好きな人たちから よく「フレッド・アステアが(映画の中で)あんなにモテるというのが納得できない」という意見を頂戴するが、反論は全くない。 なかでも、これが二作目の共演となるリタ・ヘイワースとは「全然つりあってないじゃないか!」と言われる。 全面的に同意する。 (しかも今回は、リタが前回の『踊る結婚式』の勝気な性格とは反対の純真無垢な女性役を演じていて、可愛らしさを押し出してきてるもんだから余計だろう) 直接この作品とは関係ない話になるが ―― もう一人のミュージカルスター、ジーン・ケリーは作品中ではいつも(?)引っ込み思案で憧れの女性に思いを伝えられない……と見せかけて、いざダンスシーンになるとギラギラした表情で、ラストはドヤ顔のどアップだ。 一方のアステアは、自信満々のモテ男を演じつつも、(振り付けの中で)鏡に自分の顔を映した時などは目を覆っておどけた風を見せるし、ダンスの最後をカメラ目線で終わることは殆どない。 ファンならではのツッコミどころをいろいろと持ちつつも、ケリーには納得させられ、アステアは許してしまえるのは、そういったことも含めての全体があるからかな、と想像する。 などという勝手な考察を忘れてしまえるほど、中盤の二人のデュオ「The Shorty George」は曲のアレンジ、衣裳も含めてカッコ良い。
1942 ウィリアム・A・サイター ルイス・F・エデルマン 晴れて今宵はNozomi Shirakawa
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Holiday Inn
アステアは男性とのデュオで踊るナンバーが極端に少ない。 理由を想像するのは難しくない。 自分の方が劣って見える相手と、しかもその相手の土俵で勝負など誰もしたくはなかろう。 そしてもう一つの理由。 この映画の話から離れて少し長くなるが、男性同士、複数で踊ることも多かったジーン・ケリーと比べるのがわかりやすい。 名作『雨に唄えば』の中でも有名で人気のある一曲「Moses」。ドナルド・オコナーとのダイナミックなタップを繰り広げるが、あれはまさしくユニゾンで踊ることを目的とした「振り付け」がなされているナンバーである。 これは個人的な妄想だが、アステア(とハーミズ・パン)はそういった振り付けができなかったのではないかと(勿論、技術的・能力的になどという気は毛頭ない!)。 幼いころから姉・アデールと踊ってきたアステアにとって、ユニゾンで踊るにしても相手は異性。衣裳も基本的な身のこなしも違う。更にアステアの独特なニュアンスは、体の向きや腕の方向などを正確に合わせることが求められる振り付けには不向きだと思う(アステアにそれを頼むのはとても無理だし、相手役にアステアのムーブメントを真似ろというのは酷なハナシだろう)。 そんなこんなで、誰も組みたがらない孤独なフレディと見事に渡り合っているのが、この作品のもう一人の主役 ビング・クロスビーである。 「I'll Capture Your Heart」の楽しさ……そう、アステアに勝つにはこの動きしかない!(4年後の再共演作『ブルー・スカイ』では更なる進化を遂げることになる) ダンスシーンではどの場面でもノっているアステアだが、最大の魅せ場「Say It with Firecrackers」のソロでの最後のガッツポーズは“素”であるように見える。 「Fred Astaire & Bing Crosby」という二大看板に予算を割いたためか、そもそも当時のパラマウントにはスター女優がいなかったのか知らないが、共演の女性陣がとにかく地味。華がない(失敬)。 「You're Easy to Dance With」では衣裳まで地味。その隣でカッコつけまくりのアステアさん。少しは手加減しなさいよ。 最後にもう一つ。 役柄的に、クロスビーがどこまでもお人好しで、アステアは結構な感じの嫌な奴。 クロスビーのことは知らないが、Mr.A、ぴったりだと思う。
1942 マーク・サンドリッチ マーク・サンドリッチ スイング・ホテルNozomi Shirakawa