決定的な影響を受けた何枚かのレコード(その2)
初版 2024/01/26 19:43
1981年に出たスーパーギタートリオのライヴ、Friday night in San Francisco。
これまた私には衝撃でした。
2台か3台のアコースティックギターを目にも止らぬ速さで弾きまくる、その演奏スタイルは、アコギといえば四畳半フォーク的なものしか知らなかった私には驚き以外の何物でもなく、さっそく手持のギターで速弾きの真似事をする日々が続いたのでした。
あれから40年、すでにラリー・コリエル、パコ・デ・ルシアが他界し、他の二人も昔日の面影はありませんが、かれらのジャズやフラメンコにとらわれないコンテンポラリーなスタイルは、その後のギターミュージックに多大の影響を与えたと思われます。
さてこの熱狂的な演奏ですが、注意深く聴いてみると、どうやらいろいろと仕掛けがしてあることが分ってきます。
そのひとつ、たぶんもっとも大きい仕掛けは、再生速度をわずかながら上げていることです。
このわずかな加速が、演奏を実際以上にスピード感のあるものにしているわけです。
それに伴って、ピッチもやや上がってしまっているので、じっさいにギターをもって演奏に合せてみると、調子が合わないことに気づくでしょう。
二つ目は、低音成分を強調して、まるでベースが参加しているかのような音の厚みを作っていることです。
このことにより、曲のドライヴ感が増し、聴き手はスピードの洪水の中で前へ前へと押し流されていくのです。
三つ目は、各楽器の分離をわるくすることで、一種の音の壁のようなものを作って、演奏の一体感をいやが上にも盛り上げていることです。
じっさいここでは四人目の奏者が隠れていてもわからないほど、各自の演奏は一体化しております。
もちろん、じっさいのライヴの出来もよかったのでしょうが、こういう細工を施すことで、レコード芸術としてさらに迫力あるものができあがったのでした。