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Daniel Fagerström ”Synthesator Vol.4: Beyond Interstitial Space”
これも、忘れていた謎物件。元々は、スウェーデンのUFO Mongoが自国の電子音楽をシリーズ”Synthesator”の第四弾として、自国でSkull Defekts, Optic Nest, Members of Tinnitusなどのポストロックバンドやアンビエントユニットで活躍しているDaniel Fagerströmのソロ作品をリリースしたと言う訳です。彼についての情報は殆ど分からないのですが、上記のバンドをYouTubeで聴いてみると、Skull Defektsはミニマルな展開でノリの良いアンサンブルを提示するカッコいいバンドで、Optic NestはDanielのソロユニットで、モデュラーシンセとVoから成るアンビエントな電子音楽を演っており、本作品にも通じるものを感じさせます。Members of Tinnitusについては不明でした。 本作品はそんなDaniel Fagerströmのソロです。一見、現代音楽のようなジャケ写に見えますが、モデュラーシンセとアナログシンセ(Roland SH-101, Juno 60)を用いた電子音楽で、一部は、同じスウェーデン在住のAlexander Skeppがドラムを叩いています。本作品を聴いて思ったのは、1970年代の仏のRichard Pinhasが率いてたプログレ・バンドHeldonの後期の作品とそのRichard Pinhasのソロ作品です。特に、Alexanderが加わったA3 “Mithochondrion”とB2 “Chromatin”はモロHeldonと言っても誰も疑わない程です(生ドラムとシンセ及びシーケンサーの同期演奏)。また、それ以外の曲も生ドラムもギターもありませんが、初期のRichard Pinhasの作風にも共通点がありそうです。面白いのは曲のタイトルの付け方で、全て細胞生物学用語が冠されています。そう考えると、アルバムタイトルも生物学用語てすね(「間質を飛び越えて」と言う意味ですね)。彼の言葉を借りると、「タイトルは、人間の細胞間にある空虚な部分(間質)を飛び越え、お互いの感覚器と細胞のエネルギー産生所の両方に達して、よく働く分子の運動が、コアを貫通し、最終的に細胞の、まさに中心(核)に到達すると言う「旅」のようなものである。」とのこと。う〜む、奥が深い。その分子の「旅」が、この作品のコンセプトなのでしようか。とすると、これはparacrineの音楽ですね。彼が何故こんな細胞生物学的知識があるのかは不明ですが、そのモデュラーシンセの粘りこっい電子音がもう一つの魅力ではあります(何となく、粘着質=有機質と感じるのですが)。Heldonファンはチェックした方が良いでしょう。 “Chromatin” https://youtu.be/KWslHJF58fg #DanielFagerström #BeyondInterstitialSpace #BörftRecords #UFOMongo #Synthestor #Sweden #Electronics #Synthesizers #ModularSynthesizers #TapeManipulation #Drums #DanielFagerstrom #AlexanderSkepp #Heldon #RichardPinhas
Electro-Acoustic Music Börft Records 不明。Dr K2
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Treasury of Puppies “Mitt Stora Nu”
これは私、全然知らなかったです!スウェーデンで最も勢いのあるForlag For Fri Musik & Discreet Musicからリリースされた同国グーテンベルクで活動するLo-Fi フォークトロニカ・デュオTreasury of Puppies(TOPと記す)のセカンド・アルバムです。TOPは、他のレーベルのジャケなども担当しているCharlott MalmenholtとJoakim Karlssonによる男女コンビらしいです。霞がかかったような録音にダルなCharlott嬢のヴォーカルがピッタリしてます。実際、録音機材も敢えて古いもの(多分カセットMTR?)を用いているらしく、曲のバックにはささやかながらも効果的なフィールド録音が使われています。ここら辺はどんな風に分類するのか?どんな客層を狙っているのか?よくわかりませんが、まあ、ちょっと捻った静か目なポップ好きには堪らんでしょうね。このアルバムは、主に2021年に録音されていますが、この時期のTOPの歌詞には、Mare KandreやEdith SödergranからEdgar Allan PoeやBritney Spearsまでの内容全てが繰り返し使われているらしく、心地よいと同時に困惑させられるような、捻れた世界感をうまく作り出しているらしいです(私はスウェーデン語は分からないですが)。またサウンド面では、TOP独特の詩的な演奏やサウンド・アート/ロックンロール的なアプローチも保たれていますが、よりヴァラエティに富んだ曲が収められています。例えば、A-1”Jag såg ditt ljus”やA-2”Rotten apples of love”と言った曲にはこのデュオのエッセンスが詰まってますが、一方でB-4”Mitt Stora Nu”やA-4”Skriv när du är hemma”と言った曲は過去の作品から完全に切り離された叙事詩のような曲もあります。なお、マスタリングはデビューアルバムと同様にGiuseppe Ielasiが担当しています。と言う訳で、このTOP、侮り難しと思いました。また、こんな味わいのある音楽は、全然押し付けがましい所もなく、偏食家の私でもすんなり聴けるところがあり、これこそが2022年のポピュラリティーなんだなとも思います。皆さんも、この特異なスウェーデン・デュオ、どうですか? “Mitt Stora Nu” https://youtu.be/ED5dlLfOnBk “Dödens Soffa” https://youtu.be/2JdJVx-YreU “Bränna, Känna” https://youtu.be/F_7ooLocIQw #TreasuryOfPuppies #MittStoraNu #DiscreetMusic #LoFi #Forktronica #Sweden #Pop
Experimental Pop Discreet Music 3487円Dr K2
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V.A. “5 September 1982 —A Tribute To John Cage”
これまた、渋めの選択です。スウェーデンの実験レーベルFylkingen Recordsが、John Cageの70歳の誕生日に合わせて、スウェーデンの5人の若手作曲家の作品をコンパイルしたアルバムです。私はここら辺の事情はよく分からないのですが、1958-1965年にかけて、John Cageは毎年Fylkingenを訪れていたらしく、そこでは音楽やインターメディアについてのセミナーや討論会がおこなわれており、その際に、David TudorやMerce Cunningham らと一緒に彼のコンサートやパフォーマンスが催されていたようです。A-3 Folke RabeはJohn Cageの不可思議で自由奔放さについての曲を、A-2 Leo Nilssonは、John cageが毎朝の散歩でキノコを摂ってくると言う、自然に対する新鮮な視点についての曲をやっています。B-2 Arne MellnasはCageの曲にコード進行を合わせた曲を提供しており、音楽の境界を広げています。一方、A-1 Lars-Gunnar BodenとB-1 Sten Hansonの曲はそれ程明確な意図はなく、Cageにとって生活や芸術が高次のレベルで影響されたことについての曲をやっています。 まあ,そんなコンセプトを知らなくても、音楽自体も面白いと思います。A-1 Lars-Gunnar Bodenの曲は恐らく人の声のショートループの重積からなる前半と、恐らくテープに録音された音を用いて,テープのカートリッジに擦りつけたようなグネグネした後半から成るテープ音楽で、A-2Leo Nilssonの曲は可愛らしいピコピコした電子音のシーケンスから成り、A-3 Forke Rabeの曲は雑踏のフィールド録音に楽器音楽を加えた曲から成ります。B-1 Sten Hansonは前半は人の肉声を変幻自在に変調させ、中盤では蝿の飛ぶ様な電子音と持続音から成り,後半はイカつい電子音で締めています。B-2 Arne Mellnasの曲はピアノとパーカッションの曲で,微分音階なのか、不安定な小曲となっています。 これだけ聴いても,面白いトリビュート作品なので,皆さんも聴いてみてください。 Lars-Gunner Bodin https://youtu.be/7qbKx6tYI40 Folke Rabe https://youtu.be/N6f0QRNQp1E #5September1982 #Fylkingen #JohnCage #Tribute #Lars-GunnerBodin #LeoNilsson #FolkeRabe #StenHanson #ArneMellnas #Sweden
Experimental Fylkingen Tecords 不明Dr K2
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John Duncan &Joachim Nordwall “Conventional Wisdom”
今回、紹介するのは、LAFMSのメンバーでもあるJohn DuncanとスウェーデンでiDEAL Recordingsを運営しているアーティストJoachim Nordwallのコラボ作品です。John Duncan氏については、日本にも在住していたこともあって、彼のコンセプチュアルな音に対する姿勢や扱い方を知っている方もいるとは思います。その時代には、彼は人々の住んでいる世界を見渡す為に、短波ラジオを用いることで、電波の狭間にコミュニケーションとディス・コミュニケーションを現前化してきました。しかし、彼は、最近は、声と言うか「歌」を用いたライブやインスタレーションあるいはアルバムを発表してきています。その手法の変化は何に起因するのかは過分にして知りませんが、彼が次なるステップに入ったものと想像します。常に我々が知るべきことをいち早く知り得て、実践する彼のことですので、こちらもワクワクしながら、謎解きをしたいと思います。一方、Joachim氏ですが、彼はスウェーデンの実験音楽レーベルBorft Recordsを友人と運営し、1994年に独立してiDEAL Recordingsを始めています。私もここら辺の事情は良くは知らないのですが、最近亡くなったMika Vainioともコラボ作品を作成する電子音響系のアーティストとして認識しています。それで本作品についてですが、やはりJohn氏はヴォーカル、作詞及び短波ラジオを、Joachim氏はシンセ、ドラムマシン及びアレンジを担当しており、2018年にイタリアとスウェーデンで録音された音源を用いています。かなりドラマティックな音作りが為されている印象ですが、英語の歌詞がよく分からないので、分かればもう少し楽しめるかな?とも思います。しかしながら、先に「歌」があって、それにバックの音を加えたのでは?と思わせるミックスの技をJoachim氏かやってのけているは驚愕ですね。個人的には、A面2曲目や5曲目などが好みですね。まだ謎解きまでは行きませんが、そんな彼らの問いに触れたい方なら、聴いてみて下さい。それにしても、John Duncan氏のハスキーな声は一時期のBlixa Bargeldの声質に似てるようにも思える。 https://youtube.com/playlist?list=PLcH0Gm6p1-UqDTcnMMSfqXQTgQ8a-mYXz “The Red Hot Alternative” https://youtu.be/D80MJ6HP3eo #JohnDuncan #JoachimNordwall #ConventionalWisdom #Songs #Lyrics #ElectoacousticMusic #Experimental
Experimental iDEAL Recordings 不明Dr K2