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Cândido Lima “Oceanos”
またまた、行きます!ポルトガルの知られざる現代音楽の復刻・再発シリーズ。今回は、ポルトガルPorto在住の作曲家Cândido Lima (「キャンディード・リマ」と発音する?)を紹介します、この作曲家は幸運にもバイオグラフィーに関する情報が一部ありました。Cândido Lima (1939年生-)は、作曲家、ピアニスト、教師、哲学者、エッセイストと色んな顔を持っていますが、ポルトガルの現代音楽界では最も有名らしいです。彼は、Bragaでピアノと作曲を勉強していますが、同時に、大聖堂でオルガニストとしても長年活躍しています。彼の例外的に素晴らしい環境はBragaカトリック大学で哲学や人類学を学んだだけではなく、同時に美学や音楽芸術の分野でも多数の博士号を取得していることも関係しています。彼のメンターにはIannis Xenakisもおり、Xenakisの指導の下、パリ大学にて博士号を取得し、ポルトガルのLisbonにあるカルースト・グルベンキアン財団に参加したポルトガル初期電子音楽におけるパイオニアの1人でもあります。2001年に亡くなるまで、Xenakisとやり取りをしていました。それで、1973年に、Limaは、Grupo Música Novaと言うグループを結成し、そこで、彼は指揮とピアノを担当しています。このグループは、美学的かつ信条的に優れたポルトガルの国内外の作曲家の作品を多数演奏してきています。また、Limaは、国内において、新しい音楽に対する様々なコース、セミナー、カンファレンス、フェスティバルの発展において、重要な立ち位置にあり、また音楽評論家やエッセイストとしても、全国紙や地方紙と同様に、様々な雑誌にも記事を書いたりしています。そして、その記事は、単に西洋の音楽芸術に関する研究に限らないで、書いてきたそうです。それで、Limaは「、、私の環境は常に決まったことの中心から外に向いて作業をしてきたと思う。それで、かなり初期より自由に出来るようになってきたんだ。」と語っています。Limaは、1970年代後半から”Oceanos”と ”A-MÈR-ES”の両方を作曲しており、オーケストラとコンピュータの電子音の為の作品を作った最初のポルトガル人作曲家の1人でもあります。彼は、コンピュータと電子楽器(シンセ)を音楽の世界に紹介したポルトガル作曲家の一人ではあるのですが、彼がそう言うテクノロジーに興味を持ったのは、彼がある種の「融合音楽」或いは様々なシステムと文化のある種のブレンドを行う為だったのです。なので、彼の音楽には、あらゆるジャンルや形態がある訳です: 合唱からオーケストラまで、室内楽や独奏から電子音響音楽までと言うようにです。2009年の彼の作品”Músicas de Villaiana - Coros Oceânicos”では、音響視覚的手法が取り入れられており、その結果、この曲は下劣なのか?博識高いのか?とか冒涜的なのか?聖なるものなのか?と言った境界がぼやけていきます。John Cageと比べると、Limaは、より思考するタイプで、作曲家かつ哲学者でもある点で抜きん出ていると思われます。と言うのも、Limaの音楽には、非常に実験的な性質と自然体とが常に同居しており、それは、彼が「移ろい易いが永遠な神からの授り物を全て音楽に翻訳していこう」と言う点を常に強調しているからだと言われています。 それで、本作品の内容なのですが、A面1曲、B面2曲となっており、A面がタイトル曲”Oceanos”、B1 “Autómatos da Areia”とB2 “Lendas de Neptuno”とからなっています。タイトル曲は、Xenakisの正統な継承者とも言える電子音楽で、彼の得意なリング・モデュレーターとスプリング・リバーブを掛けた電子音(オシレーター音)が「海の波文」のように放射されています。頭の中の「痒いところ」に手が届くような感じで、気持ち良いです。正しく、傑作ですね❗️B1 “Autómatos da Areia”は、夏によく合う高周波(「ヒュ〜ドロドロ」みたいな)とテープのヒス音のような「気配」の音が続く曲で、モロ電子音楽ではないのですが、これはこれで面白いです。B2 “Lendas de Neptuno”は、更に抽象的な金属摩擦音によるミュージック・コンクレートから成るテープ音楽的なアンビエントな曲で、恐らく、リング・モデュレーターとスプリング・リバーブが使われていると思います。中々、聴き応えのある曲です。総じて、「海」「夏」「電子音」と言う海洋系アンビエントに通じる電子音楽界のTube (ホントか⁉️)みたいなアルバムですが、どストライクな人には堪らない作品です。なので、必聴です! A “Oceanos” https://youtu.be/_FHWrDZ9GKU #CândidoLima #Oceanos #AutómatosDaAreia #LendasDeNeptuno #Grama #Portugalsom #Reissue #LimitedEditions #ポルトガル #Portugal #ModernClassic #現代音楽 #ElectroAcousticMusic #Composer #Philosophy #Pianist #GrupoMúsicaNova #RingModulator #SpringReverb
現代音楽 / Musique Concrete / Tape Music Grama (Portugalsom) 3000円位?Dr K2
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Chu Ishikawa (石川 忠) “Tetsuo (鉄男)”
日本が世界に誇るカルト映画「鉄男 (The Iron Man)」と「鉄男 II (Body Hammer)」のサントラがこの作品になります。これのサントラを担当したのが、Zeitlich Vergelter→Der Eisenrostの石川忠氏です。映画に関しては、主人公が金属細胞に侵されて、身体が段々と金属化していくと言うもので、塚本晋也監督の代表作になります。丁度、Einstrutzende Neubautenが世界的に認知されてきた時期(1987年〜1992年)と被りますが、この映画の悪夢的幻想をロック・ミュージックとして昇華させたのが、石川忠氏です。彼のバンドDer Eisenrostでは、夥しいメタパーを使用し、それlらを使って特異な音楽(Industrial Music)を奏でていました。ここでは、映画ではなく、先ず、石川氏のバイオグラフィーについて簡単に書いておきます。石川氏は、1966年生まれで、神奈川県出身で、15歳でシンセサイザーに触れ、18歳にして音楽活動を始めています。CHU名義でZeitlich Vergelterのマニピュレーター、ベースで参加しています。同バンドが1986年に解散した後に、自身のバンドDer Eisenrost (「鉄の錆」の意味)を結成、都内を中心に2004年頃までライブ活動をしています。バンド活動と平行して、ソロのメタル・パーカッショニストで活動し、1988年に塚本晋也監督作「鉄男」の音楽を担当したことで、国内外から、その特異なインダストリアル・ミュージックで高い評価を受けています。そして、その後も、塚本監督作の映画のサントラを担当しています。しかしなから、彼は2017年12月21日に、51歳と言う若さで他界しています。 それで本作品ですが、内容は「鉄男(The Iron Man)」と「鉄男II (Body Hammer)」のサントラからの抜粋になります。Der Eisenrostでのメタパー捌きも凄いのですが、ここではサントラと言う縛りがある為か、より多彩な音楽性を聴取することが出来ます。A1 “Megatron”の出だしから、鉄琴のメロディアスのパートから導かれて、ベースやバスドラ及びギターなども加わった落ち着いた曲から始まり、A2 “The Sixth Tooth”は一転して、ドコドコしたドラム(マシン?)とシーケンサーで始まるトライバルかつ躍動的な曲です.この曲に連続して、シンセの重厚な落ち着いた音に移っていく、A3 “Rana-Porosa Porosa I”となります。A4 “Mausoleum“は、割と落ち着いた曲で、リズムパタンはLaibachの如く軍隊の行進を思わせます。B1 “Lost”は、マーチングリズムとシンセの荘厳な鳴りが聴取できる導入から、やがてポストパンクなリズムに変化していくカッコいい曲です。B2 “Dinosauroid”も四つ打ちのキックに、メタパーやシーケンサーなどが絡む突進力のあるミニマルながらも展開のある曲です。B3 “Rana-Porosa Porosa II”は短いながらもミニマルな曲で、B4 “A Burned Figure”は和製笛のような音を上手く使ったメリハリのある曲に仕上げています。 とまあ、これらの曲が実際に映画で使われたサントラで、石川氏から想像すると、意外な程、メロディアスで、またメタパーもそれ程使われていない感じもするのですが、逆に彼の音楽性の深さを思い知らされます。皆さんも 「鉄男」を観た時にサントラにも注意してみてください。因みに、Discogsよると、このレコードは非正規らしいです。 “Megatron” https://youtu.be/4z10AlFDQfY Der Eisenrost live https://youtu.be/uSSPkkawR3w #ChuIshikawa #Tetsuo #Kaiju-Theater #石川忠 #鉄男 #ShinyaTsukamoto #Soundtrack #IndustrialMusic #MetalPercussions #Sequencer #Synthesizers #TheIronMan #BodyHammer
Industrial Music / Soundtrack Kaiju-Theater 5480円Dr K2
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Mortal Vision “Nacht Musik”
Mortal Visionと聞いて、ピーンとくる人は相当なマニアだと思いますよ。これは元C.C.C.C.及び現Astroで活躍している長谷川洋さんが、1990年に一時的に、この名義を使って新たなノイズ・ミュージックを模索していたのですよ。元々は京都在住だったAubeこと中嶋昭文さんのレーベルG.R.O.S.S.からカセット作品(こちらも限定です)として、1992年にリリースされた音源を、伊のUrashima(浦島)が、2016年にLPとしてリイシューしたものが、本作品になります。本名名義でもなく、Astro名義でも無い、このユニット名は、基本的に長谷川さんのソロなのだが、いつも使っているエレクトロニクスではなく、ギターのみの演奏で構築されたノイズ・ミュージックなんです。アルバムとしては本作品だけなので、それ故、貴重なブツである訳です。多分、ギター・ノイズの範疇に入るものだが、そもそも、ギターらしい音には聞こえないです。かと言って、エフェクター、バリバリに繋いでいる訳でも無さそうで、凡そ、ギターとアンプとの相性と微調整から生まれた音(=ノイズ)があるのでは?と思わせる位、世に数多あるギターノイズとは一線を画する音楽です。籠りがちな録音も、輪をかけて謎の音を表出させており、時に聞かれるギター独特に音の粒子に「ハッ」と気付かされるようでもある。「夜の音楽」とは、暗くなった時に、一人でこっそり聴いているようにも思えて、言い得ていると思われる。そんな音楽は必要ではありませんか? YouTubeにはありませんでしたので、長谷川洋さんのソロでのライブを(本作品とは関係ありません)。 https://youtu.be/qwto7BjB7dA #MortalVision #NachtMusik #Urashima #G.R.O.S.S. #Reissue #Guitar #Experimental #Noise #HiroshiHasagawa
Noise Urashima 不明Dr K2