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Penguin Cafe Orchestra “Music From The Penguin Cafe”
皆さんは、Penguin Cafe Orchestra (以下PCOと表記)を覚えてますか? 1980年代初頭に日本でも大ブームを巻き起こした英国グループで、Brian EnoのObscure Recordsの一貫としても紹介され、当時のアンビエント・ブームに乗っかる形で、それこそOLや女子大生にまで人気がありました。その時は、私は全然興味が無かったのですが、ふとしたキッカケで中古日本盤を購入していました。 先ずは、PCOのバイオグラフィーを書いていきたいと思います。中心人物のSimon Jeffesは、英国サセックス州生まれ、カナダ育ちで、13歳の時に、Gを弾いて欧州を回っており、その時に、クラシックGやPiano、音楽理論をChiswick Polytechnicで学んでましたが、卒業前にドロップアウトしています。それで、1972年に日本に住んでいたらしいのですが、その頃は、クラシックの硬直性とロックの限界を感じ、そのどちらにも幻滅していた時期で、その代わりに、いわゆるフォークミュージックに可能性を見出してしたらしいです。そして、その時に、エスニック・ミュージック、特にアフリカン・スタイルに興味を抱き、これらのスタイルを西洋の古典的音楽に掛け合わせようと決意します。こうして、Jeffesは、自ら作曲して、それを演奏する為に、PCOを始めます。ただ、Jeffesは、Penguin Cafeについて語る時、それは、1972年夏、南仏で不味い魚料理で食中毒になり、ホテルのベッドで横になっていた時に、「自分がPenguin Cafeの経営者になって、適当に話しをしていく」夢を見たことによるとしています。彼は、PCOの音楽をmodern semi-acoustic chamber musicと評しています。そうして、Jeffesは、本作品でもあるPCOのファースト・アルバム”Music From Penguin Cafe Orchestra”を1974-1976年に録音しており、この作品は、Brian EnoのObscure Recordsのシリーズとして、Edition EGから1976年にリリースされます。その後、メンバーも落ち着いてきて、1981年には、セルフタイトルのセカンド・アルバムを出しています。PCOは、1976年10月に、KraftwerkのRoundhouseでのライブサポートとして、初めて大きな会場での演奏を行っています。その後は、LondonのSouth Bankの専属になりながらも、様々なフェスに参加、1976年〜1996年に、北米、豪州、日本、欧州、英国で演奏をしています。1987年3月には、ITVのアートシリーズThe South Bank Showでも出演し、演奏を披露しています。一方、Jeffesは、より実験的な方向性を打ち出し、トロンボーンやオーボエも入れて、PCOをダンス・オーケストラにしようとします。その為か、オリジナル・メンバーのGavyn Wrightは1984年に、Steve Nyeは1988年にバンドを脱退してしまい、新たなラインナップで活動を続けます。新メンバーは1975年頃から1988年までの間に加入し、1995年に、アルバム”Concert Program”をリリースしています。しかしながら、1997年に、リーダーのJeffesは、脳腫瘍で亡くなってしまい、PCOは一旦休止状態となります。しかしながら、2007年に”Concert Program”の時のメンバー(若干の違いはある)でリユニオンを果たし、特に、Jeffesの息子Arthur JeffesがPercとKbdで加入してから、Arthurはバンド名を単にPenguin Cafeとして活動していますが、元々のPCOのメンバーの内4人はThe Anteatersと名乗ってフェスに出演したりしています。 以上がPCOの略歴となりますが、本作品はPCOとしてのデビュー・アルバムに当たります。少々、混乱するかも知れませんが、クレジットには、2種類のバンド名(?)が記載されています。一つは、ZOPFで、Simon Jeffes (G, B, Ukulele, Quatro, Spinet, E-Piano, Mouth Perc, Vo, Zither, Ring Modulator, Cello [A2-2]), Helen Leibmann (Cello), Gavyn Wright (Vln, Viola), Neil Rennie (Ukulele [A2-5]), Emily Young (Vo), Steve Nye (Mixing)から成り、主にA2を担当、もう一つは、Penguin Cafe Quartetで、Helen Leibmann (Cello), Gavyn Wright (Vln), Steve Nye (E-Piano, Engineer), Simon Jeffes (E-G)から成り、主にB面を担当しているようです。また、録音時期もA1, B1は1974年に、B2, B3は1976年に行われていますが、A2についての録音時期の記載はありません。しかしながら、作曲は全てSimon Jeffesで、プロデュースはJeffesとSteve Nyeが行っています。そうして、A面には2曲(内A2曲は7パートから出来ています)/B面は3曲と言う内容になっています。それでは、各曲についてご紹介していきましょう。 ★A1 “Penguin Cafe Single” (6:14)は、恐らくPCOとしての発想が初めて具現化した曲だと思います。弦楽器のリズミカルな音とピアノの軽やかな音の対比や、途中で即興っぽく、或いはロッケンローっぽくなってしまう辺りの崩し方が絶妙です。 ◼️ZOPF ★A2-1 “From The Colonies (For N.R.)” (1:38)は、弦楽器を弾く音とチェンバロ風の楽器にBが底上げしているミニマルな曲です。 ★A2-2 “In A Sydney Motel” (2:27)は、アコギと虚なVoからリズミカルな展開になるダイナミックな曲で、その対比が面白い。 ★A2-3 “Surface Tension (Where The Trees Meet The Sky)” (2:20)は、ショッキングなピアノで始まり、チェロやVlnが絡んでくるゆったりした曲です。 ★A2-4 “Milk” (2:20)は、BとVoのミニマルな曲で、変調音やフリーキーなチェンバロ音が絡んでくる曲。 ★A2-5 “Coronation” (1:30)は、弦楽四重奏をバックにゆったりと歌う曲ですね。 ★A2-6 “Giles Farnaby's Dream” (2:17)では、チェンバロのイントロから、Bやウクレレなんかがちょっとポップス調にメロディを奏でています。 ★A2-7 “Pigtail” (2:45)では、ポロロンとしたピアノに変調された音が被ってくる曲で、ミニマルにゆっくりと展開します。 ◼️Penguin Cafe Quartet ★B1 “The Sound Of Someone You Love Who's Going Away And It Doesn't Matter” (11:38)では、軽妙なGソロ弾きから次第にピアノや弦楽器がお互いに絡み合い、どれがメインとなる訳でもなく、躁鬱病のように流れていきますが、エレピの高音と弦楽器でいきなり「電気的」にもなったり、「不仲」になったりします。 ★B2 “Hugebaby” (4:43)でも、Gとエレピとチェロが網目のように絡み合いながら、盛り上がりかけたり、落ち着いたりします。 ★B3 “Chartered Flight” (6:37)は、漆黒の中からVlnが立ち現れ、エレピやチェロも出てきますが、突然、弾むんで散歩するような曲調へ。エレピソロが目立ちますが、やがて離陸していき、最後はVlnのピッキングでフェイドアウトしていきます。 普段、聴かない音楽なので、中々興味深く楽しめました。多分、サティ辺りの「家具の音楽」との関連もあるとは思いますが、A2の短い曲の連続もそれぞれの曲に工夫が凝らしてあって面白かったですし、B面の長めの曲も、表情の変化の移ろいが感じ取れて、面白かったです。特に、エレピの高音をああ言う風に弾くと、かなりエレクトリックな感じになるのが、発見でした。まだまだ、セミ・アコースティックでも新しい音楽が作れると確信出来た時代だったのかもしれませんね。まぁ「家具の音楽」と言うよりも「Obscure」と言った方がピンときます。貴方は聴きますか? A2-3 “Surface Tension (Where The Trees Meet The Sky)” https://youtu.be/e_VWTJeA3w0?si=0DDb8udV6ZmHiQVy [full album(B2を除く)] https://youtube.com/playlist?list=PLgUklsPQ_4toXsZljE4B7Kc7WhFZktD2z&si=fan-XsaHtUkMSj6v #PenguinCafeOrchestra #MusicFromThePenguinCafe #EditionsEG #PolydorRecords #ObscureRecords #FirstAlbum #1974-1976年 #日本盤 #Contemporary #ChamberMusic #Semi-Acoustic #ZOPF #PenguinCafeQuartet #SimonJeffes #SteveNye #HelenLeibmann #GavynWright #EmilyYoung #NeilRennie
Contemporary / Semi-Acoustic Editions EG / Polydor Records 不明Dr K2
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Be-Bop Deluxe “Sunburst Finish”
今回は、Bill Nelson繋がりで、Be-Bop Deluxeを紹介します。元々は、1972年に、Bill Nelson (Vo, G, Songwriting)が中心となって、英国West YorkshireのWakefieldで結成されたバンドで、その時のメンバーは、Nelsonの他に、Ian Parkin (G), Robert Bryan (B, Vo), Nicholas Chatterton-Dew (Drs), Richard Brown (Kbd)でした(Richard Brownはその年の12月には脱退)。名前からすると、ビーバップを演っていそうでしたが、彼等は全くそのような音楽は演ってはいません。また、David Bowieとも比較されたりしていましたが、Nelsonはその比較を嫌がっていました。それで、彼等は、EMI傘下のHarvest Recordsと契約し、1974年に、ファースト・アルバム”Axe Victim”をリリース、そしてツアーに出ていますが、Nelsonは、メンバーを一新し、Cockney RebelのPaul Jeffreys (B)とMilton Reame-James (Kbd)を加入させ、またSimon Fox (Drs)も誘いますが、JeffreysとReame-Jamesは直ぐに脱退し、代わりに豪州のMississippi and Healing Forceに在籍していたCharlie Tumahai (B, Vo)が1974年後半に加入します。このラインナップで、セカンド・アルバム”Futurama”を1975年に録音しています。この時、ツアー・メンバーであったAndrew Clark (Kbd)がゲスト参加しており、後に正式に加入しています。このラインナップは、1978年のバンドの解散まで続きます。彼等の音楽は、プログレやグラム及びハードロックの美味しい所をスタイリッシュに取り入れており、本作品でもあるサード・アルバム”Sunburst Finish”からのシングルカット曲”Ships In The Night”には、Billの弟Ian Nelson (Sax)も参加しており、Be-Bop Deluxe史上、最も売れました。また、このアルバムでは、初めて、EMI専属のJohn Leckieがプロデュースにも携わっており、最後のアルバム”Drastic Plastic”まで、更には、Bill Nelson’s Red Noiseまで続きます。そうして、米国ツアーの時に着想を得た組曲を含む、4枚目のアルバム”Modern Music”を同年1976年にリリースし、翌年1977年には、ライブ・アルバム”Live! In The Air Age”を出しています。そうして、1978年に、彼等は仏南部のJuan-Les-Pinsで録音した5枚目のアルバム”Drastic Plastic”をリリースしますが、このアルバムは、パンクやニューウェーブそしてDavid BowieのBerlin3部作からの影響を強く受けており、バンド活動初期のプログレやギターロックからのスタイルとは大きく方向転換しています。ただ、このような大きな音楽性の変化故に、NelsonはBe-Bop Deluxeを解散することにしたようです。その後、NelsonはClarkと共にRed Noiseを結成し、1枚のアルバム”Sound-On-Sound”を制作後、ソロ活動を始めています。 と言う訳で、本作品”Sunburst Finish”について紹介していきたいと思います。まず、この時の参加者は、Bill Nelson (Vo, G, Harmonica, Perc, Bells), Andrew Clark (Kbd), Charles Tumahai (B, Vo, Perc), Simon Fox (Drs, Perc)で、ゲストとしてIan Nelson (Alto Sax [A3])とAndrew Powell (Orchestral Arrangements [B3, B4])も参加しています。まだ、この頃までは、何れのアルバムも”ギター”をモチーフとしたアルバム・タイトルやジャケ写で、まだ、グラム・ロックっぽさがありますね。それでは、各曲について紹介していきたいと思います。 ★A1 “Fair Exchange”は、初っ端から元気一杯の「これぞ!グラム・ロック」な曲で、曲自体もノリが良くてグー!NelsonがGを弾きまくってます。 ★A2 “Heavenly Homes”は、ゆったりまったりしたバラード調の曲で、リリカルなピアノに合わせて、Voもしっとりと歌い込んでいます。 ★A3 “Ships In The Night”は、Kbdの刻みが特徴的なイントロで始まる良質なポップ・ミュージックで、Bラインもカッコ良いし、間奏でのIan NelsonのSaxやClarkのオルガンもグー! ★A4 “Crying To The Sky”は、ややしつとり系の曲で、優しく歌うNelsonのVoや間奏での激情的Gソロも聴きどころですね。 ★A5 “Sleep That Burns”は、間奏にスパニッシュなテイストを入れたりするやや複雑な構成の曲で、NelsonがGを弾きまくっているのにも、痺れますね。 ★B1 “Beauty Secrets”は、アコギで始まり、ピアノやオルガンなんかも使った如何にもゴージャスなアレンジの曲です。 ★B2 “Life In The Air-Age”もB1に連続して、パーカッションから繋がる曲で、ここでもNelsonのGとVoは生き生きとしていて、カッコ良いです。 ★B3 “Like An Old Blues”は、とにかく艶のあるゴージャスだけれども、跳ねるようなブギのリズムが心地良い曲です。間奏でもGやハーモニカは弾きまくりです。 ★B4 “Crystal Gazing”は、アコギとストリングスで始まるしっとりしたバラードで、Powelのアレンジが効いてます。 ★B5 “Blazing Apostles”は、ノリの良いGを全面に押し出した曲で、それを支えるハモンド・オルガンも絶妙な隠し味になっています。あと、曲構成自体は複雑です。 このアルバムでのBe-Bop Deluxeは、プログレ要素を含んだグラム・ロック的なノリで、まだまだシンセなんかも殆ど使っておらず、古いタイプのブギ的な曲が多いですね。それが良いとか悪いとかは別にして、そう言う時代性を上手く反映していたのではないかと思われます。まあ、曲構成も複雑なのは、プログレの影響なんですが、それをポップ・ミュージックに落とし込んだのが、素晴らしいです❗️是非ともご一聴を! A3 “Ships In The Night” https://youtu.be/FSYDqLmnYEA?si=iG-239E9Ym0brm2V [full album] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_kuh7ruwClwnIPoDIICtt4xPoUZ1IIYemc&si=EXAYoFo6s9mrOxFV #Be-BopDeluxe #SunburstFinish #Fame #HarvestRecords #Reissue #GlamRock #ProgressiveRock #PopMusic #Guitar #BillNelson #AndrewClark #CharlesTumahai #SimonFox #IanNelson #AndrewPowell
Glam Rock Fame (Harvest Records) 不明Dr K2