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Himukalt “A Third Fantasy”
これまた、エグい物件を入手しました。米国ネバダの女性パワー・エレクトロニクスの旗手Himukaltの登場です。今回は、彼女の作品の内、2023年7月現在最新のレコード・アルバム”A Third Fantasy”を紹介します。と思って、調べてみたのですが、マトモな情報源が殆どありません。まあ、皆さんほ知っていると思いますが、Himukaltは、Ester Kärkkäinenのソロユニットで、彼女がHimukaltとして登場したのは、2016年のカセット作品”Conditions Of Acrimony”ですので、その少し前には既に活動を開始していたと思われます。その後、米国Malignant Recordsや独逸Tesco Organisationからも作品をリリースしたおり、女性パワ・エレ・ユニットとして瞬く間に有名になってきだようです。また、彼女は、1990年代のパワ・エレの音楽的要素とWolf Eyesのような電子音を使い、過剰エフェクトを掛けたヴォーカルでHimukaltの美学を体現していると評されています。それで、彼女は、欲望、性欲、敵意、怒り、固執、鬱、血液、肉体からの発生した音を通して、肉体の再生や複製の為に、ノイズやヴォイス、エレクトロニクス及びゼロックスを用いるとのこと。また、”Sex Worker”3部作のように、ある種のセクシズムを体現しているのも、彼女のコンセプトみたいです。また、彼女の作品のジャケには、彼女が作製した女性のヌード写真のコピーを破って貼り付けた、独特のコピーアートが使われているのも一貫しています。(バイオグラフィーはこの位しか分かりませんでした。すまん!) それで、本作品ですが、A面3曲B面2曲が収録されていますが、その前にジャケ写やインナースリーブを見てみると、女性のヌード写真のコピーが使われており、一貫した彼女のアートワークとなっており、この女性モデルはMarie, Beth, Claire, Amber, Eslerとクレジットされています。A1 “I Am Naked”は、ヘビーなリズムに極端に歪んだヴォイス(とても女性ヴォイスとは思えない)が淡々と乗っており、不穏極まりないです。A2 “Practically Begging To Be Assaulted (Version)”では、リズムもテープ音もヴォイスもエレクトロニクスも全て歪んでいます(しかしながら、凄いタイトル!)。A3 “Bad Habits”は割と落ち着いたイントロから始まりますが、やがて歪みまくった音へと突入していきます。途中出てくる女性の叫び声(?) が痛々しいです。それで、B面に行きます。B1 “Can't Survive”では、歪んでいますが、ノリの良いリズムで始まるものの、やがて過剰エフェクトを掛けてかつ歪んだヴォイスに乗っ取られて、再びビートとのコンビネーションになる強力かつ暴力的な曲となっています。本アルバム中、最も聴き易いかも? 最後はタイトル曲のB2 “A Third Fantasy”です。不穏な低音と心音のようなリズムで始まり、テープ音などが混じってくると、歪んだ電子音も徐々に圧を増してきて、始終、不穏な音が続き、聴いている方が不安になります。とまあ、一曲ずつ感想を述べるとこのようになりますが、女性特有の感覚が歪んだ音の向こう側に見えてきて、やはりこう言うところにも男女の違いは出るのだなあと感心しました。次は、”Sex Worker”3部作を聴いてみたいと思いました。なので、女性のパワ・エレに興味がある方は是非とも体験した欲しい作品です❗️ A2 “Practically Begging To Be Assaulted (Version)” https://youtu.be/XKeFTlPWBPY Bandcamp も貼っておきます。 https://foundremains.bandcamp.com/album/a-third-fantasy #Himukalt #AThirdFantasy #FoundRemains #Album #Female #PowerElectronics #Industrial #USA #Noise #NoiseMusic #Sexism #XeroxArt #Nude #EsterKärkkäinen #SexWorkerSeries #XeroxArt #NudePhotos
Power Electronics / Industrial Found Remains 4080円Dr K2
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Nord “ L∴S∴D∴”
もう一つの日本のノイズのオリジネーターNord (「ノール」と発音)は、1979年に片山智と及川洋によって結成されましたが、1980年にLP”Nord”をリリース後、1983年の分裂。両方がNordの名を冠したことで、便宜上「片山Nord」と「及川Nord」と呼ばれています。片山Nordは都内でライブを中心に活動して、今に至りますが、及川Nordは分裂後、宅録中心の活動になります。今回は、その及川Nordが出したアルバムの一つ” L∴S∴D∴”について紹介します。先述のように及川Nordは、ライブは演らず、宅録でのカセットやLPなどのリリースだけになっています。その中には4本組カセット”Psycotron - 1”やカセット作品”NG Tapes”の他、本作品を混ぜて、2枚のLPを出してはいますが、1980年中頃に、その活動が収束して、リリースも無くなっており、現在もその活動については不明のままです。今回、紹介するアルバムLP” L∴S∴D∴”も、及川Nordの作品の一つで、L∴S∴D∴RecordsのLPとしてはファーストに当たります。都合、4曲入っていますが、どうも”LSD”と言う曲はA面とB面に2つに分断されて、収録されているようです。音的には、アナログ・シンセによる電子音が中心になっていますが、A2は、軟体生物のようなシンセ・パルスに段々のファズ・ギターが絡みつくバイオ・ノイズとも言える曲で、単なるノイズの垂れ流しでは無いのだなと感心しました。また、B1では、60年代のサイケデリック・ロックの楽曲が不明瞭に流れてきて、段々の電子パルス・ノイズに置換されていくと言う構造も聴取でき、及川氏が1960年代のサイケの影響下で、このようなノイズ・ミュージックにたどり着いたのでは?と思わせられます(本人も認めていました)。更にはテープによる具体音も不明瞭ながら加味され、伊のM.B.などのような同時代性を感じます。更にB面最後の曲は、気味の悪い悪夢のようなアンビエントっぽい作品で、これにはパルス音は無いので、余計に異様な曲になっています。 分裂前とかなり異なる音像になっており、彼が創作活動を続けていたら、どうなっていたか?が興味深いところではあります.入手は困難ですが、サイケとノイズの関係について少しでも知りたいのであれば、是非聴いてみることをお勧めします。 “L∴S∴D∴”A面 https://youtu.be/biaEDIa7-Z4 #Nord #LSD #LSDRecords #及川洋 #HiroshiOikaws #宅録 #Noise #Electronic #Synthesizers #Pulse #Psychedelic
Noise L∴S∴D∴ Records 不明Dr K2
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Naoki Kasugai “DD. Records Works 1983-1984 Part Five”
名古屋の春日井直樹氏が、1983-1984年の間にDD. Recordsから出したカセットアルバム6部からのセルフ・コンピもいよいよ最後になりました。当時の音楽志向がより明確になったように思います。今回はノイズ度が高い作品になっているようです。A1 “Medical Point Part 1”の不穏なノイズへの調べと共に、A2 “I’m Home”の高周波ノイズをバックに、接触不良系ノイズとディレイの誤用、そして電化したデレク・ベイリーのようなギターノイズ、時々、怒号と言う明らかにノイズ・ミュージックを意識した曲が続き、A3 “Low Work”でややスパイシーな音楽が、更にA4 “Help Me”の小曲でA面を締めます。B1 “Medical Point Part 5”のホワイトノイズの壁で幕をあけ、B2 “A Different World =Can You Stand Up This Noise?”の濃霧のような音像の中に迷い込みます。まるで初期LustMordのよう。続くB3: “Key-I”は不穏なヴォイスがら印象的。そして、B4 “Down To Hell”では、エフェクトの掛かったリズムボックスとザグザグのギターノイズで締めています。総じて、この”Part Five “ではノイズ度が高く、やや異質な印象も受けますが、Part Oneからずっと聴いてくると、全作品はやはり「1983-1984年の春日井直樹」そのものなのではないか?と思えてきます。そんな土台があって、その後のサイケに流れる道筋が分かるような気がします。私自身もこの時期は方向性を見失い勝ちだったようにも感じており、そのようなシーン(?)で、彼がもがいていたのは想像に難くないと思います。そんな時代を垣間見たあのであれば、このシリーズを聴いた方が良いように思います!さあ皆さん、聴きましょう! この作品もYouTubeにはないので、彼の他の作品を貼っておきます。 https://youtu.be/T-SK-GQV7DQ #NaokiKasugai #DD.RecordsWorks1983-1984PartFive #DaytripRecords #DD.Records #Experimental #Noise #Industrial #宅録
Experimental / Industrial / Noise Daytrip Records 2500円Dr K2
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Naoki Kasugai “DD. Records Works 1983-1984 Part Four”
春日井直樹氏のDD. Records期のセルフ・コンピレーションも第四弾になりました。DD. Recordsを、春日井氏の作品から謎解く作業もここまできましたが、謎は深まるばかりですね。と言う訳で、春日井直樹氏のPart Fourを紹介したいと思います。A1 “The Walls of One Theorist”でのダブっぽい処理のなされたギターとハイハットの絡み合い、それに続くA2 “Monster Battle”での強靭なビートとわん、そしてA3 “Shock !”でのヴォーかルとドラムマシンによる 即興演奏への流れはバッチシですね。B1 “Top News”の逆回転、B2 “5 O’Vkick News”ではフリー系ピアノがインダストリアルな音の上で転がっているような。そしてB3 “TV Study”ではT.G.(特に“Discipline”)を思い起こすようなインダストリアルな力強い曲が。また他の曲では接触不良系のミックスも聴くことができます。と言ったように振り幅が広いのですが、何となくちゃんとまとまっているところがいいですね。一番、インダストリアル色が強いLPですね。 この作品はYouTubeにないので代わりに”Film Music 2”を貼っておきます。 https://youtu.be/T-SK-GQV7DQ #NaokiKasugai #DD.RecordsWorks1983-1984PartFour #DaytripRecords #DD.Records #Industrial #ExpermentalPop #宅録
Experimental / Pop / Industrial Daytrip Records ¥2500Dr K2
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Naoki Kasugai “DD. Records Works 1983-1984 Part Three”
DD. Recordsでリリースされていた春日井直樹氏のセルフ・コンピレーション第三弾です。今回は全体の印象は「リズミック」といっても良いんじゃないかなぁ。A1 “Let’s Dance”はタイトル通り「踊ろうぜ!」って言う歌詞だし、曲もファンキーだしね(すこーしだけダブのスパイスあり)。でも何かスネイクマン・ショーっぽい?A2 “They Will Fall A s It Is !”もバッチリとビートが効いてるし。A3 “Sakes=Radio P=“もミディアムテンポながらもリズムが強調されてるし。A4 “Henius Picasso’s Prophecy”はビートは無いんですが、何らかの電子的な打撃の乱打から成ります。B2 “Death Time”はDomeのようなミニマルだけど、冷徹なパルスが感じられます。 B4 “One More Time”は少しだけThe Residentsが入っているような曲ですが、この曲自体は静と動が上手く配置されています。 と、こちらの作品も色々楽しめるように曲が配置されていますが、本作では、リズムボックスなどの多用からよりポップな感じがします。でも決して万人のポピュラリティーを皆さんが感じる訳ではなくて、独自路線を走っています。それが「春日井直樹」ですから。 この作品もYouTubeには無いので、彼の他の作品を。 https://youtu.be/aL5R3XYuDsQ #NaokiKasugai #DD.RecordsWorks2983-1984PartThree #DaytripRecords #DD.Records #ExperimentalPop #Industrial #宅録
Experimental / Pop / Industrial Daytrip Records ¥2500Dr K2
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Naoki Kasugai “DD. Records Works 1983-1984 Part Two”
本作品も春日井直樹氏が、若かりし頃、日本地下音楽界最大の謎DD. Recordsからリリースしたカセット音源から、彼自身がセレクトした曲をコンパイルした曲から成るレコードで、200枚限定です。今回はPart Twoになります。こちらの作品はどの曲も知らなかった曲なので、純粋に楽しめました。A1 “Frustration”ではギターとベースのユニゾンから成るミニマルな展開が面白いてす。A2 “Escalation”は歌詞付きの曲だが、歌詞はちょっと厨二っぽい。がしかし、曲はインダストリアルで良い❗️ A3 “Die Summer”はこれまた諸ポストパンクな曲調で唸ってしまいました。編集しているのか、途中で終わっている感じが残り、フルで聴きたいと思いました。また、B1 “Heathen Beat”の躍動感は飛び抜けているし、B2 “Gray Forest”やB4 “Water”(こっちの方はビートレスで実験的)ではメタリックなギターも聴けて、この辺りからサイケへと流れたのかな?とも思ったりします。最後はB5 “A Daily Life”でワルツのリズムになって聴き取り辛いヴォーカル入りの曲で締めます。この作品はセルフ・コンピレーションの割に統一感があり、中々楽しめました。こう言う「何ものにも形容し難い音楽」こそが、真の地下音楽なんだろうと思います。そんな音楽を求めてる方にお勧めします。 この作品とは関係ないですが、春日井氏が関係している実験映画のサントラを引用しています。 https://youtu.be/5UNdKKIPGKg #NaokiKasugai #DD.RecordsWorks1984-1984PartTwo #DaytripRecords #DD.Records #SelfCompilation #ExperimentalPop #Abstract #宅録
Experimental / Pop / Industrial Daytrip Records ¥2500Dr K2
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Naoki Kasugai “DD. Records Works 1983-1984 Part One”
名古屋の春日井直樹か、かつてDD. Recordsに残した自分のカセット音源からチョイスした曲を5枚分のLPにまとめ上げたのが、この”DD. Records Works 1984-1984”となります。その第1作目が、本作品”Part One”です。そもそも、DD. Recordsって何?と言う方もいらっしゃると思いますので、簡単に書いてみます。1980年前位にレコードなどを録音してカセットを交換するサークルがあったのてすが、そこから発展して、当時、宅録機材を持っていた鎌田忠氏が中心となって作ったのが、DD. Recordsです。このレーベルは基本的にカセット専門で、購入規模者は、希望作品と一緒にカセット代(クロームテープ!)とデータやアートワークが載ってあるコピー4面分のA4コピー代と郵送料を送ると、希望作品が、ダビングされて送られてくると言うシンプルなシステムでしたが、今ではすっかり「日本地下音楽最大の謎」として噂されるようになっています。しかも、当時から鎌田氏がよっぽどじやないとリリースしないと言うスタンスであったので、最終的に250本位の作品をリリースしています。一部の作品は、80年代には米国Aeonによっても配給されていました。そんな中で、1980年代中頃に就職で名古屋に移った鎌田氏はは 突然プッツリと連絡が途絶えてしまい、DD. Recordsは、以後、都市伝説的に語られるようになってしまいます。 そんな中でも本作品の作者 春日井直樹氏は後期DD. Recordsから作品をリリースしていた方で、当時は高校生であったようです。元々はノイズ/インダストリアルな曲でしたが、どうもその後はサイケがかった音楽に移行していきますが、ここではその萌芽はまだ聞こえてきません。A1 “Image”はDD. Recordsのコンピ”Omni 4”に収録されていた曲で、当時、この曲の完成度に驚嘆し、嫉妬すらしたものです。この曲は所謂インダストリアルで、兎に角かっこいい。それ以外の曲は初めて聴いたものばかりですが、既にアマチュアのレベルを越えた曲作りや録音技術に舌を巻いた次第です。A2 “12 People Died Yesterday”などはThe Residentsっぽい雰囲気さえありますね。ただ、複数の収録アルバムから選んでいる為か、アルバムとしての統一感には欠ける印象です。そこが、ちと惜しいです。”Image”以外にもA面は割とポップ寄りの曲が配置されており、それに対してB面はインストの小曲から成り、ちょっとしたポップミュージックてと実験性を試しているようです。よく考えたら、このアルバムの中で、インストじゃ無いちゃんと歌詞がある曲は2曲しかないですよ!そんなことを軽く超えている春日井氏の世界を一度、体験しては如何でしようか? 春日井氏はこのシリーズのYouTubeを殆どアップするのを辞めたので、このCMだけ。 https://youtu.be/ISZZm5wD_y4 #NaokiKasugai #DD.RecordsWorks1983-1984PartOne #DayTripRecords #DD.Records #Industrial #ExperimentalPop #宅録
Experimental / Pop / Industrial Daytrip Records ¥2500Dr K2