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Eiko Ishibashi & Jim O’Rourke “Lifetime Of A Flower”
今回は、泣く子も笑うEiko Ishibashiこと石橋英子さんと世界を股にかけて日本在住のJim O’Rourkeさんのコラボ・アルバム”Lifetime Of A Flower”を紹介します。もう皆さんはこの2人のバイオグラフィーはある程度知っていると思いますが、恒例に従い、簡単に紹介しておきます。石橋さんは、千葉県茂原市出身の音楽家/作曲家で、2000年〜2010年の間、吉田肇率いるバンド、PanicsmileにDrsで参加していますが、Drs以外にも、Piano, Flute, Vibraphone等の楽器も演奏するマルチ奏者でもあります。一方で、灰野敬二、突然段ボール、山本精一、吉田達也、坂本慎太郎、七尾旅人、町田康、秋田昌美 (Merzbow)、Jim O’Rourke、山本達久、前野健太、豊田道倫、星野源等といったミュージシャンと共演し、セッションもこなしています。映画のサントラ・ドラマの音楽も担当し、2021年には映画”Drive My Car”の音楽も担当。この作品は、第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門へ正式出品され、脚本賞、国際映画批評家連盟賞、エキュメニカル審査員賞、AFCAE賞を受賞しており、2022年に石橋さんもサントラ賞を受賞しています。話しが少し前後しますが、石橋さんは、2006年にアルバム”Works For Everything”でソロ・デビューを果たしており、米国レーベルDrag Cityから2013年に、ソロアルバム”Imitation of life”リリースしています。石橋さんは、ちゃんとした曲も出来るのですが、日本のノイズ・ミュージシャンMerzbowこと秋田昌美さんや変拍子ドラマー吉田達也さん或いはK2ことわたくしともコラボをやっており、その音楽的許容量は途轍もなく大きいです。また、Jim O’Rourkeと山本達久とのトリオカフカ鼾やコサカイ・フミオと私とは、スーパー・ノーウェーブ・バンドRNAもやっています。一方、Jimさんは、米国Chicago出身で、現在、日本に住んでいるマルチ奏者/作曲家/プロデューサーで、ジャンルレスに活動したおり、ポスト・ロック、アンビエント、ノイズ、テープ音楽などもこなし、更にはシカゴ音響派と関わり、即興シーンにいた後に、2000年にNYCに移り、そこで数多くの即興音楽グループなどとコラボを行っている一方で、1999年〜2005年には、ノイズ・ロック・グループSonic Youthのメンバーとしても活躍しています。またソロとしては、1997年作”Bad Timing”〜2015年作”Simple Songs”をDrag Cityレーベルから、より伝統的な曲から成る一連の作品のリリースで有名です。2人とも活動の幅が半端ないので、ここら辺で止めておきます。 それで、本作品“Lifetime Of A Flower”ですが、このアルバムは、石橋さんとJimさんがキュレートした20世紀・21世紀芸術祭での独Dortmund展覧会の作品”Flowers”の為に作製された音楽です。この作品では、パラメーターはセットしてありますが、その先のプロセスは制御されていないので、その後どんどん変わってしまう訳です。日本家屋の庭に種を蒔いて、展覧会期間中にその植物が育っていく様子を撮影したのだそうです(間違っていたらごめんなさい!)。本作品は両面とも1曲ずつ(と言うか、多分便宜上2つに分けた?)です。なお、本作品は、2022年4月30日〜9月25日の間に録音されています。それで内容なのですが、先ず感じたのは、全ての音(楽器か非楽器かに関わらず)がフラットに配置され、鳴っていると言うことです。フィールド録音の音も物音もフルートもシンセも全く区別無く、同一空間に配置され、等価の音として用いられているように聴こえます。また、それは決して無機質な感じは無く、有るべくして有る所に配置され、曲自体が一つの生命体のようにも聴取できます。そこら辺がセンスと言うかある種の能力なのだと確信しました。元々がそう言う植物の成長に合わせた音を使ったサウンド・インスタレーションだったのですから。決して、万人受けする音楽ではないですが、この2人にはこう言う面もあるのだと知っておいて良いでしょう‼️なのでマストです❗️ [Live at CAP10100 (Torino) in 21/04/2023] https://youtu.be/SWDL5rs7XLw?si=q4dQao_7EVs8Jv4w [BandcampのURLを貼っておきます] https://eikoishibashijimorourke.bandcamp.com/album/lifetime-of-a-flower #EikoIshibashi #JimO’Rourke #LifetimeInAFlower #Week-EndRecords #Soundtrack #Ambient #Abstract #SoundInstallation #石橋英子
Abstract / Experimental / Soundtrack Week-End Records 2850円Dr K2
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Hastings Of Malawi “Visceral Underskinnings”
この前、ご紹介したHastings Of Malawi (以下HOMと表記)ですが、HOMのアルバムを持っていたことを持っていたことを思い出して、発掘しました。本作品”Visceral Underskinnings”は、彼等のセカンド・アルバムに当たります。Nurse With Wound (以下NWWと表記)のオリジナル・メンバーで1990年代初頭まで在籍していたHeman Pathakと、NWWの1stアルバムにも参加しているDavid HodesとJohn Grieve(によって結成された英国ダダイスト・グループが、このHOMです。彼等のファースト・アルバムでは、1981年のある夜、スタジオで、ドラム、クラリネット、シンセ、ピアノだけでは無く、スタジオに置いてあった古いレコード、料理本、電話帳や電話と言った非楽器も用いて録音をしたとか。彼等のバイオグラフィーは前回、ご紹介しましたので、そちらをご参照下さい。 それで、HOMのセカンド・アルバム”Visceral Underskinnings”ですが、両面とも1曲ずつで、また曲名も記載がありません(ただし、Metalator 1 / Slowly Eric (ゆっくりとエリック) / Idealised Freedom Lament // Metalator 2 / Concrete Voluteとの記載が裏ジャケにある)。と言う徹底振りで、ファースト・アルバムを1981年にリリースしてから、何と35年振りに、本作品でもあるセカンド・アルバムが出されたと言いますから、そのマイペース振り(?)は凄いですね。彼等にとって、本作品は、40分に渡る光源の無い映画(つまり映像の無い映画)であり、電話や電子機器の発達した現代社会における人間の状態を反映させたものであるとのことです。何とそこには、米国初代大統領のGeorge Washington Johnsonの声やMalawiの初代大統領Dr Hastings Bandaの声も使われているらしいです。それらは、コンピュータ音楽とか声の合成とか冷戦時代の各局の放送とか米軍の武器の音とかを録音して、彫刻のようにHOMが30年以上かけて作り上げた作品な訳です。HOMは、サウンド・アートと音楽の交わるグレーな立ち位置に留まっていますが、HOMはその一方に属することを嫌い、またどちらにも良い顔をする訳でもないです。この立ち位置にある作品は、決して聴き易い作品ではなく、聴く者がその意味を解読しようが、解読しまいが関係がないとのことです。と言う訳で、内容の詳細も先述した通り、A面は、物音系の音とか金属製の音の連なりから始まり、古いレコード音へと急変し、電話のコネクターのクリック音や再びの古レコード音、更に、ドローン様の持続音へ。そして、電話交換手の声やプッシュ式電話の音が続き、やがて逆回転や正体不明な物音へと変容し、またまた古いレコード音へ。更に、重い重力音が唸り出し、どんどんと電磁気音へ、更に音響詩の男性の声とテープ操作とオルガン。更に土着民族の踊りや女性ナレーションになり、A面は終わります。B面も、金属製の音や唄いで始まるも、モーター音のような持続音へ。そして、キーボードの即興のような音に急変し、また日本語のナレーションと動物の鳴き声へ、更に、金属製の音へと移ろい、低速回転の男性の声に変容していきます。何かを燃やす音から散歩する音、更に人の声等がブレンドされ、再び、金属箱の音や水音に代わり、段々とテープ操作された人の声とストリングスへと移行、グチャグチャになった所で、罵倒する声や囁き、それに正体不明の物音に変わり、やがて囁くような微音へと落ち着いて終わります。今回、敢えて、内容を具体化して書いていますが、こんなことは無視して、音の万華鏡/紙芝居のようなHOMの音楽を堪能して下さい‼️NWWとの比較も面白いかも? 感じるのはあくまで貴方自身です❗️ Side A https://youtu.be/yz2aSXo1fzI?si=_B6x9muUK3MXvtsE Side B https://youtu.be/36R3X72i26k?si=P9sfCX6l-hiOytE6 #HastingsOfMalawi #VisceralUnderskinnings #SubRosa #PapalProducts #Experimental #MusiqueConcrete #Collage #BritishDadaistGroup #Dada #HemanPathak #DavidHodes #JohnGrieve #NurseWithWound #Telephone #OldRecords
Experimental / Musique Concrete Sub Rosa / Papal Products 不明Dr K2
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Naked Roommate “Do The Duvet”
これは完全に「ジャケ買い」に相当するものです。多分、ちょっとだけ試聴して買っちゃったブツだと思います。Naked Roommateなんて、全然知らなかったですから。それで、先ず彼等のバイオグラフィーを調べてみました。メンバーは、Amber Sermeño (Lead-Vo), Alejandra Alcala (B, Back-Vo), Andy Jordan (Drum Programming, Synth, Perc, Back-Vo), Michael Zamora (G, Synth, Sampler, Back-Vo, Perc, Cowbell)の4人組で、現在は、米国CAのBerkeleyで活動しています。元々は、2010年中盤に、オークランドで、ファンク風のポストパンク・バンドThe WorldをやっていたAmber SermeńoとAndy Jordanは、もっと融合的で映画的で影のある何かを加えることで、The Worldの有機的でダンサブルなエネルギーをもう一度作り直したいと考えていて、別ユニットとしてNaked Roommateを2018年に始めています。しかしながら、2020年1月に、The Worldの方が解散してしまい、その解散からNaked Roommateのフル・アルバムである本作品のリリースまでに数ヶ月の間が空いてしまいます。それでバンドメイトのMichael ZamoraとAlejandra Alcalaの協力もあって、曲に程良いアレンジを加えることが出来たそうです。彼等はこのアルバム1枚とカセットEP1本しかまだ出していませんが、英国のレーベルUpset! The Rhythmがわざわざ、黄盤も限定で出していることからも、有能なバンドと認めているのでしょう。ん〜調べても、これくらいしか分かりませんでした(すまん!)。 それで内容の方なんですが、両面5曲ずつ収録されています。A1 “Mad Love”は、ファンク調のリズムで、ぶっきらぼうな女性Voに、ミュートしたギターやシンセの伸びやかなリフが加わったクールなダンス・チューンです。A2 “We Are The Babies”でも四つ打ちのリズムにスラッピーなベースと宇宙的なシンセも絡む、これまた気持ちの良いダンス曲です。タイトルを連呼するVoもグー! A3 “Fondu Guru”では、変調させたドラムマシンと不明瞭なベースラインにコケティッシュなVoが何とも映える。サックスまで入ってくるけど、これはサンプラー? A4 “Credit Union”は、ベースの弾き語りに呟き声のVoという一風変わった小曲で、A5 “Je Suis Le Bebe”では、マシンの四つ打ちリズムと腰のあるファンキーなベース及びシーケンスが曲を構成し、上物は控え目です。ウィスパーなVoも良い感じです。それではB面に行きます。B1 “Fake I.D.”は、よりロック的なリズムとホーンのようなサンプラーとシンセに、女性Voと言う、割とスカスカな曲ですが、途中で分厚いシンセも鳴り響きます。B2 “Fill Space”もそれ程ファンキーでは無いリズムで、やはりホーンのようなシンセが鳴っています。ネオ・アコ・バンドのように浮遊するVoが新鮮です。B3 “(Do The Duvet Pt. 2)”は会話のサンプリングを色々弄って、リズムに乗せた小曲。 B4 “Repeat”では、久しぶりに四つ打ちのリズムに乗って、ファンキーなアレンジが冴えるシンセやギターと共に、女性Voも朗々と歌ってます。元気の出る曲で、ダンサブルですねー。B5 “(Re) P.R.O.D.U.C.E.”は突進するようなリズムが特徴的で、ベースはシンセ・ベースかな? シンセのリフもシグナルのようで、サンプラー音も効果的です。終わり方がまたカッコ良いです! 総じて、割とファンキーでダンサブルな曲が多いのですが、それを規定しているのは、ドラムマシンとベースで、上物はどちらかと言うと何でもござれですね。あと、Sermeñoのヴォーカルは、基本的にはコケティッシュな感じがしますが、彼女のVoは色んな局面に対応出来そうです。ファンク調が強いと、ESG, Liquid Liquid, Lizzy Mercier Desclouなんかも思い浮かびますね。しかしながら、ミックスが超絶上手いです。と言う訳で、Berkeleyにも、このようなノー・ウェーブを通過したファンクなバンドがいるのですね。また、1980年代のファンク/ダンスミュージックとは違う匂いがしますが、これは単にマシンドラムを使っていると言うだけでは無さそうです。ここら辺はまた、もう少ししたら、考察してみたいです。いゃ〜、それにしても面白かった❗️機会があったら、皆さんも聴いてみて下さい。何か発見があるかもよ。 https://youtu.be/tVFsnkR8Kwk #NakedRoommate #DoTheDuvel #Upset!TheRhythm #USA #CA #Berkeley #PostPunk #Funk #MachineFunk #DanceMusic #PopMusic #AfterNoWave #AmberSermeño #AlejandraAlcala #AndyJordan #MichaelZamora #TheWorld
Post Punk / Dance Music Upset! The Rhythm 1000円Dr K2