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Richard Teitelbaum and Carlos Zingaro ”The Sea Between”
これも聴くまでは謎物件でしたが、何とか記憶の底から釣り上げられました。一言で言うと「2人による即興音楽」ですね。それで、Richard Teitelbaum とCarlos Zingaroが、本作品での演奏者です。簡単に2人のバイオグラフィーを書いておきます。Richard Teitelbaumは、NYC生まれの米国人作曲家で、他にも鍵盤演奏者、即興音楽家の肩書きを持っています。また、彼はAllen Forte, Mel Powell及びLuigi Nonoに師事し、シンセなどを使ったライブ・エレクトロニクスで有名ですが、もう一つの顔としては、脳波音楽の先駆者でもあります。一方、Carlos Zingaroは、Lisbon生まれのポルトガル人ヴァイオリニスト兼電子音楽家で、即興音楽界でも有名な方です。もう少し、両人の経歴を詳しく述べます。 Teitelbaumは小さい時からピアノを弾いており、1960年にHaverford Collegeを卒業後、Mannes School of Musicにてキーボードを学んでおり、その後、Yale大で、音楽博士号を取得しています。その後、欧州に移り、前述のように、伊でLuigi Nonoなどに師事し、その時に、Alvin Curran, Frederic RzewskiとMusica Elettronica Vivaの創設メンバーとなり、脳波で楽器をコントロールすることを研究しています。その結果、1967年に欧州一早くMoogシンセを購入し、同年終わりに彼はBarbara Mayfieldと最初のパフォーマンスを行なっています。1970年代には、米国に戻り、 Wesleyan大学でエスノ音楽学を研究している一方で、文化横断的な即興演奏を行うWorld Bandを結成しています。1976-1977年には彼は日本を訪れ、雅楽を研究し、尺八を横山勝也に師事しています。彼は沢山の音楽家との共演をしており、1988年には、Bard Collegeで教鞭をとり、大学の電子音楽スタジオの監督となりましたが、2020年4月に心不全で他界しています。 Carlos Zingaroは、1953年〜1965年の間、Lisbon音楽大学でクラシックを学んだ後、1967-1968年にはパイプオルガンをSacred Music High Schoolで学ぶと共に音楽学や電子音響音楽学についても研究しています。彼は1960年代はLisbon大学室内楽オーケストラのメンバーでしたが、1967年には彼自身のグループPlexusを結成しています。Zingaroは欧州、米国、日本でも多くの音楽祭にも出演し、50枚以上のアルバムに参加しています。1984年から1990年には、LisbonのギャラリーCómicosの創設メンバーかつ監督もやっており、数々の賞を受賞しています。2002年には、実験音楽/前衛美術集団Granularの創設者兼会長に就任しています。 以上のような経歴を持った2人の音楽家の即興演奏のコンサートを記録したのが、本作品”The Sea Between”となります。A面2曲、B面1曲ですが、このデュオのポイントは、Teitelbaumが単なるピアニストとかじゃなく、シンセも含めた鍵盤奏者だと言う点ですね。A面でもかなり緩急をつけたテンションでの即興演奏になっていますが、B面では、Teitelbaumは、主にシンセの音を使用しており、単に鍵盤楽器以外の音も駆使して演奏になっている点からも、彼が演奏による表現の幅も拡張しようとしているかのようです。このフットワークの軽さはやはり見習わなければと思いました。それにしても、正式な音楽教育を受けた方が、Yamahaのシンセとか使っているって言うのが、何だか親近感が湧きますね。でもプレイ自体は超ガチで凄いです。もし、チャレンジイングな即興音楽を聴きたいのであれば、こちらもお勧めします。機会があれば是非! https://youtu.be/Nd9q6K74hEkP #RichardTeitelbaum #CarlosZingaro #TheSeaBetween #LesDisquesVICTO #ModernClassic #FreeImprovisation #Synthesizers #Piano #Violin #Duo
Improvisation Les Disques VICTO 1190円Dr K2
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Fred Frith “Guitar Solos”
漸く、たどり着きました、天才ギタリストFred Frithのソロアルバムとしてはファースト・アルバム、その名も”Guitar Solos”です。Fredについては前回、バイオグラフィーを書きましたので、省略しますが、ちょっとだけ補足を。彼は自分が関わったグループとしては、Henry Cow, Art Bears, Massacre, Skeleton Crewがらあり、またそれ以外にもRobert Wyatt, Derek Bailey, the Residents, Lol Coxhill, John Zorn, Brian Eno, Mike Patton, Lars Hollmer, Bill Laswell, Iva Bittová, Jad Fair, Kramer, the ARTE QuartettやBob Ostertagなどの強者ともコラボをしています。このような多彩で精力な活動していますが、その中に、本作品でもある”Guitar Solos”と言うシリーズを出しています。Henry Cowのファースト・アルバムをリリースした後の1974年に、Fredの最初のソロアルバムでもある本作品をリリースしていますが、彼がギターで何をしようとしたか柄垣間見れます。このアルバムには、8曲が納められていますが、全て、LondonのCamden TownにあるKaleidophone Studioで、たった4日間で録音されており、全曲オーバーダブ無しの一発録りの即興演奏で作製されています。内容は、題名通り、ギター或いはプリペアード・ギターによる即興演奏はそのままパックしたものですが、単にプリペアード・ギターで変な音を出している訳ではなく、とてもソロで一発録りとは思えない万華鏡のような音色が聴取できますし、それを可能にしているFredのテクも凄いです。この時期、またルーパーもない時代ですので、そこら辺は機材とテクで演っているようです。また音域の幅も広く、ギターの可能性を拡張したと言っても過言ではないでしょう。 即興演奏とは何か?ソロとは何か?に興味のある方は是非ともこのアルバムを聴いてみて下さい。それでなくても一つの楽器でどこまで出来るのか?を興味のある方も是非是非! A1 “Hello Music” (1:31) A2 “Glass C/W Steel” (5:35) A3 “Ghosts” (3:12) A4 “Out Of Their Heads (On Locoweed)” (8:24) B1 “Not Forgotten” (1:55) B2 “Hollow Music” (2:44) B3 “Heat C/W Moment “ (1:43) B4 “No Birds” (12:46) https://youtu.be/YSOFCm_ejbo?si=tI5psydiX1kwmfxX #FredFrith #GuitarSolos #CarolineRecords #1974年 #Reissue #VirginRecords #1981年 #Guitar #PreparedGuitar #Improvisation #Solo
Improvisation Virgin Records (Caroline Records) 1500 円Dr K2
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AMM “AMMMusic”
来ました!1960年代中半にフリージャズ出身者達が、フリージャズの境界の拡大を計る為に結成したAMMのファーストアルバムです(私の持っているのは、リイシュー盤ですが)。まあ、フリーミュージックのお手本と言うべき作品ですね。簡単にバイオグラフィーを書いておきます。1965年、英国ロンドンでAMMが結成された時のメンバーはLou Gare, Keith Rowe, Eddie Prévostであり、翌年にLawrence SheaffとCornelius Cardewとが加わり,更に、Christopher Hobbs, Christian Wolff, Rohan de SaramとIan Mitchellも参加するようになったとのこと。John Stevens及びTrevor Watts, Paul Rutherford, Derek BaileyとEvan Parkerから成るSpontaneous Music Ensemble (SME)はよくAMMを誘って、ロンドンの外れにあるLittle Theatre Clubで演奏していました。最初は誰だか分からず、Cornelius Cardew Quintetと呼ばれたりしていましたが(半笑)、その内、CorneliusがKiethのギターアンプをフルテンにしてた為に、他の楽器の音が聞こえず、CorneliusとEddieはコンタクトマイクを使って、音を増幅していたとか。また、通常のメロやハーモニー、リズムは意図的に避けられ、また各楽器の演奏方法や技巧は限界まで拡張させられ、フリージャズと言うよりも何でもありのフリーミュージックになっていました。例えばprepared pianoやtabletop guitarなどが演奏に使われたりしています。それで翌年の1966年に、AMMの最初の録音が行われます。それが本作品です。今回はここまでにしておきますが、1968年作のセカンドアルバム”The Crypt”は初期AMMの傑作と言われています。ただ私は未聴。そんなこんなで、AMMは現在、Eddie PrévostとJohn Tilbury及びKeith Roweのトリオになって,活動中です。 それで、本作品ですが、まず参加メンバーと担当楽器は、Cornelius Cardew (Piano, Cello, Radio), Lou Gare (Tenor Sax, Violin), Eddie Prévost (Dr, Xylophone, Bells, Cymbals), Keith Rowe (E-G, Radio)及びLawrence Sheaff (Cello, Accordion, Clarinet, Radio)で、LondonのSound Techniquesで録音されています。はっきり言って「ジャズ臭さ」は殆ど無く、本当にFreeな演奏が奏でられています。聴き方によっては、増幅された物音系ノイズとも言えるかもしれませんね。各人が担当楽器と格闘しているのが手に取るように分かります。しかし、各々がそれぞれ勝手に出している音なんでしょうが、それが音塊となって聴覚を襲ってくるようです。米国NYCのDeath JazzトリオBotbetomagusとは異なりますが、個々の音との格闘がグループとして昇華されているようで、一見,アンサンブルにもなっていない様にも聞こえますが、その本質は、個々人の演奏云々を越えた「演奏の熱量」ですね。そんな熱量を感じたければ、本作を聴いてみてはどうでしょうか? A1 “Later During A Flaming Riviera Sunset” (21:03) B1 “After Rapidly Circling The Plaza” (20:31) https://youtu.be/BwgkBZ-FLW0?si=4RgiKxwAA2x0OiAm #AMM #AMMMusic #BlackTruffleRecords #FreeMusic #Improvisation #LouGare #KeithRowe #EddiePrévost #CorneliusCardew #LawrenceSheaff
Improvisation Black Truffle Records (Elektra) 不明Dr K2
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陰猟腐厭 “s/t”
日本地下音楽界の最後の謎、陰猟腐厭 (インリョウフエンと読む)のファーストアルバムが登場です。このバンドは自動書記としての即興演奏をコンセプトに活動しているからか、作品名や曲名は一切付けず、また、その読みにくいバンド名も人が忌み嫌う漢字を4つ選んで、それで語呂の良いように並べたと言う徹底した無意味主義を押し通しています。メンバーは増田直行 (G), 大山正道 (Kbd)と原田淳 (Dr)の3人組で、結成は1978年,横浜で。3人は、高校生の時に,シュールレアリズム研究会に属しており、何の取り決めもなく、その場で演奏するバンドとして活動。初のレコードが、「妥協せず」と言うソノシートで、執拗に同じフレーズを繰り返す演奏の途中に,活動家がマイク・ジャックし、演説を始めたけれど、PAの人が、面白がって、エフェクトかけて、変調したりしたにも関わらず、そのまま演奏は続けられたと言うハプニング的な「事故演奏」がそのまま収められてると言う代物でした。それがCragale Records (クラゲイル)の一枚目のリリースになります。そんな得体の知れないバンド(バンドと言っていいのかな?)は当時の東京や横浜にはいなかったですし、勿体ぶった即興演奏とも関係が無かったと思います。その後、数十年経って、漸く、時代が追いついたのか、過去の演奏からのベスト盤的アルバムもリリースされました(初めて,曲名が記載されていた!)。 それで、本作品ですが、このアルバムには当初、真っ白なジャケとラベルで、何のクレジットも情報もない状態でリリース予定でしたが、これでは流通できないとの批判を受け、メンバーらがマジックの手書きでバンド名を書いたと言う逸話があります。A面と思しき片面にはドラムとキーボードとギターが中を浮く雲のように絡んだり、離れたりする即興演奏が刻まれており、もう片面にはリコーダーとオモチャのピアノ及び鉄琴(?)のポツポツした調べの小曲とダイナミックなドラムが曲を先導する讃美歌のようなちょっと長目の曲が刻まれている。当然、タイトルとかクレジットとか録音などに関する情報等は一切無いのですよ。しかしながらB面と思わしき曲はドラムが凄くて、私のタイプですね。本来なら、A面の演奏が現場の音に近いとは思いますが。決して緩い訳ではなく、剥き出しの音楽の「意味性」を軽々と超えているところが凄いです。そんな音楽の無意味性を聴いてみてください。難解な音楽ではないので。 A “Untitled” B1 “Untitled” B2 “Untitled” [別のアルバム”初期作品集 = Early Works 1980-82”] https://youtu.be/o2YD2PH4N_s?si=g5Klypvo8DKxPzBY #陰猟腐厭 #Inryo-Fuen #CragaleRecords #即興 #Improvisation #増田直行 #大山正道 #原田淳 #横浜
Improvisation Cragale Records 不明Dr K2
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Blowhole “Free Metal”
今や、アメリカ物音系ノイズの重鎮とも言えるJeph Jermanが それまでのHands Toの活動とも別にやっていたのが、このBlowholeです。元々は自身のレーベルAnimist Recordingからカセットで出していたのを、アメリカの中堅ノイズレーベルZabriskie Pointがレコードで再発したシリーズの一つがこのアルバム”Free Metal”です。ここら辺の作品って、日本では殆ど話題になったことはなく、人気もイマイチですが、聴き直したら、結構面白かったので紹介します。今回のBlowholeのメンバーは、Aaron Wintersongsがギターで、Jeph Jermanがドラムで、一曲だけ、Patrick Barberがベースで一緒に演っています。ので、殆どがギターとドラムのデュオと考えて下さい。そして、作品タイトル通りに、歪んだメタリックなギターとフリーフォームなドラミングがカオティックに暴れ回ります。リフっぽい部分もあるのですが、ドラムがそれを叩き壊して進めていきますね。フィードバックの嵐、正にFree metal musicですね。そう言う意味では、日本の非常階段の最初期にも近いように思えます。因みに録音は1994年8月にNa-asho & Studioにて4チャンネル・レコーダーで行われたと記載されています。 それで,このバンドの情報は殆どないのですが、ある記述によると、元々、1987年にColorado Springs にてJeph JarmanとBarber兄弟が中心となって、Scott Hiller, Fil RodriguezとDr. Souleも巻き込んで結成されたバンドで、当初はJephもこのバンドを中心に演っていたのですが、自身のソロ活動やHands Toでの活動に注力していったので、このバンドは語られることは少なくなってきました。しかしながら、Patrick Barberがシアトルに引越したのが契機となって、再び活動し始め、1987年〜1998年の間に、CDRでの再発も含めて50作近くのリリースをしてきたらしいです。その中でも、”Gathering”と言うアルバムはかなり良い出来であるそうですが、私は未聴です。フリージャズからノイズロックまでを演奏する集団即興バンドとして、アメリカでは受け入れられたとのこと。いやー、この情報は今回、調べて、やっと分かりました。Jephが突然演り出したのか⁉️と思っていましたので、、、本当はその前に既に結成されていたのはビックリです。そんなJeph Jermanの多彩さが分かる,このアルバムも面白いので、聴いてみて下さい。是非とも大音量で❗️ A1 “Hodad” A2 “Suddenly That Afternoon” A3 “Resonant Frequency (Of A Bucket)” A4 “Free Metal” A5 “Shards” B1 “The Crux” B2 “Workhorse”: Patrick Barber (B) B3 “Addenda” B4 “Righting The Table” [本作品はYouTubeにアップされていないので、本作品以前のカセット作品”A Love Extreme”を貼っておきます] https://youtu.be/Nr94DrfAGdw?si=aW8lNyteLPOO4jiL #Blowhole #FreeMetal #ZabriskiePoint #FreeJazz #HeavyMetal #Guitar #Drums #JephJerman #AaronWintersongs #GuestBassist #PatrickBarber
Improvisation Zabriskie Point (Animist Recording) 不明Dr K2