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帰り道は遠かった/サブ・アンド・ビート 自主製作GS
秋田のとあるスナックのトイレで、作家の藤本義一がトイレット・ペーパーに書いた歌詞を、作曲家でジャズ・ギタリストの奥村英夫が作曲して生まれた一曲。二人はかつて大阪でのイレブンピーエムの出演者で、ロケで訪れた秋田での逸話だそうです。当然この曲は「チコとビーグルス」で大ヒットして世に知られ、東京を追われた(笑)ザ・ジェノバもカバーしてシングルをリリースしています。が、このレコードはそれら以前に製作されたオリジネイターの奇盤とでもいいましょうか。1966年に結成された大学生によるセミプロのトリオで、67年の夏に奥村氏と知り合い、68年の夏にはこの盤を製作したということのようです。ジャケット裏のライナーには、この曲を名付けて「民謡ロック」と書かれておる。笑い。確かに民謡そのものの合いの手が。セーノで一発で録ったのでしょうが、演奏は遠く、ボーカルとハーモニーだけ近く、そのアンバランスさも最高です。楽曲そのものは知名度の高いポップ・チューンなので、その事実と録音状態のあまりのギャップが味わい深いですね。ちなみに、この曲と同名の奥村氏の自伝では、いきなりチコとビーグルスに歌わせたことになっている。絶対に、先にこちらで録音したはずですが、無視黙殺の憂き目だ。可哀想・・
民謡ロック 7" Single キング揖斐是方
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昭和脱力歌謡 『青いゴムゾーリ』バーブ佐竹
坂本九の夜空路線に寄せたと思しきシングル「星が云ったよ」(1967年)のB面、かつて小堺・関根の深夜放送で話題となった脱力歌謡の極北「青いゴムゾーリ」です。作曲はシナ・トラオこと佐竹本人。歌われるのは1960年代の夏のビーチ・リゾートで履かれるゴムゾーリを己の弟分としてとらえた、たとえようもないシュールかつ脱力感いっぱいの異様な歌詞です。「青い青いゴムゾーリ/ひとりで歩いている時も/いつもペタペタついてくる/沖に向かって投げたのに/波にゆられて帰ってきた/妙な奴だよ青いゴムゾーリ」もちろんスティール・ギターの演出でハワイ感横溢のアレンジです。ただし当時のハワイとは、たぶん全国に点在していたであろう「なんとかハワイアン・ランド」というでかいプールが売り物のアミューズメントのイメージ、昭和40年代でもまだハワイ航路は憧れで、せいぜいこうした歌と「ハワイ疑似体験」プールで満足する、そんな時代でした。佐竹の低音ボーカルでそういう時代のこうした歌を現在聴き返すと、ハワイではなく「当時の日本国」に対する異国情緒(笑)が。つまりそれほど現在では考えられない要素ばかりの、今とはかけ離れたテイストの楽曲といえましょう。大人が大人のために創った娯楽音楽というものが、かつてはこの国にもあったことの証明です。ヒット曲「女心の唄」をフィーチャーした4曲入りコンパクトピクチャーソノシートに写るモアイ像、もしくは将棋の駒に等しきポートレートも潔い。
歌謡曲 7" Single ソノシート キング揖斐是方
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CCR,クリムゾンを歌う。ザ・ピーナッツ・オン・ステージ
1972年、民音でのステージを収録したライブ盤です。オリジナル・エルピーとはジャケット写真が違いますが。オールデイズやオリジナルのヒット曲は当然としても、問題は当時の洋楽ヒットのカバー。キャロル・キング「心の炎も消え」とかCCRあたりはまあ、良しとしましょう。しかし、リンゴ・スターの「ひっこめポール」もとい「バック・オフ・ブーガルー」やユーライア・ヒープの「対自核」というのは驚かされます。ピーナッツでか?!といったところです。そしてやっぱりトドメは「エピタフ」でしょう。あの当時、ステージでキング・クリムゾンを歌っておりましたかピーナッツ。まあ、例によって全曲が宮川泰の遊び放題・やり放題のアレンジ仕事ですから、ピーナッツは先生にいわれるままレッスンを重ねたのでしょうか。後年の坂本冬美が「ムーン・チャイルド」をパクったように(そういうわけでもないですか笑) 初期クリムゾンのマイナー叙情は日本人に親和性あり。ショーの司会は岸部シローでした。#ringostarr #CCR #kingcrimson
歌謡曲 CD キング揖斐是方
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あほう鳥 b/w 砂の唄 秋田明大
本日で75歳となる秋田明大氏、唯一のシングル盤。1976年の発表でa面は岡本おさみ作詞 加藤登紀子作曲。「俺の十年どこいった」という歌詞が重く響きます。b面もすばらしく、秋田氏自身の科白の独白。歌詞カードには表記されていないところが実に良い。当時の等身大の心情を淡々と、朴訥とした語り口で。熱かった政治の季節が終わり、激烈なアジ演説も聞こえなくなった70年代中頃、日大全共闘の闘士として駆け抜けた激動の時間を、一切の衒いも虚飾もなく振り返る。その科白はだからこそ非常に説得力、訴求力を伴っています。タイトルが「砂の唄」というのも実に意味深です。詩集「幻視行」と同様、大切にしたい一枚です。#日大全共闘
ロック 7" Single キング揖斐是方
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寺内タケシ大賞
寺内大将を追悼して、「だからナンなんだ!!」収録の本作を。1990年リリースのいつもどおりの時流にのせた安易な企画盤ですが(失礼)、これは当時テレビで人気の「ものまねオールスターズ」のビジーフォーや清水アキラが寺内大将の楽曲を推薦し、それを収録しているという趣向。なんだかわかりませんが、モト冬樹あたりが発起人かもしれません。しかしなによりも重要なのはラストに登場する「だからナンなんだ!!」という、大将渾身の自伝的名曲、問答無用・頑固一徹・天上天下・唯我独尊 HeyHeyTERRY GO!と歌われる、そして弾きまくられるこの曲、まさにエレキ一代男のテーマでした。#寺内タケシとブルージーンズ #寺内タケシとバニーズ #ビジーフォー #清水アキラ
企画物 音楽CD キング揖斐是方
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三島由紀夫 深沢七郎 『からっ風野郎』 シングル盤
勝新太郎とくれば、当然『人斬り』での相手役の俳優、三島由紀夫のシングルも。これは彼の主演映画デビュー作であり、「主演のみならず主題歌まで吹き込んだのは僕ぐらいだろう、デュワッハッハッハ」と石原慎太郎に哄笑とともに自慢したという問題の一曲。しかし悲しいことにこの曲は映画に使われませんでした。作詞が三島本人、作曲とギターがなんと深沢七郎。『風流夢譚』のことを考えると、信じられない両極の共演です。しかし没後五十年もたちますと、三島由紀夫は日本国にとって本当のからっ風野郎だったんじゃないかなどと思ってしまいます。#アナログレコード #7インチ #シングル盤 #三島由紀夫 #深沢七郎
カルト歌謡 7" Single キング揖斐是方