物の価値について
初版 2022/11/06 12:57
改訂 2022/11/06 12:57
その物の価値は普遍性すなわち再生産可能かどうかに依存していると考えています。
世界遺産の価値しかり。
歴史的背景と結び付いて人類が再び同じものを産み出すことが困難なものは、失えば二度とてに入らないことから工芸品、美術品に至るまで可能な限り後世に残すべき遺産であると考えています。
小さなモノでも19世紀以前の手工業品などは、現在ではそれだけの技術をもった職人が時間をかけて作成に携わるには莫大なコストがかかりとても作れないものが沢山あります。現代人の時間の価値と、過去の職人の時間の価値が同じでないとすれば、それこそ過去に生きた人々への冒涜です。技術の粋を尽くして作り上げたモノに古い新しいは関係ありません。装飾的に優れたアンティークが現代の同品質の物よりも安価で手にはいるのは過去の職人に感謝し、大切にこれからも引き継ぐべきと考えます。
イギリスでは古きを尊び、古いものを直して使う習慣が根付いています。古いものには職人の技術的投資の成果のみならず、木や革、真鍮や貴金属などの材質が豊富に使われています。限りある良質な資源を有効活用し、保存して使い続けることで相対的に物質的価値の高いものを使うことが出来ます。伝統的な材料で当時の技術を使って修理した住宅はもはや歴史的建造物として100年を越えた住宅は更に価値が高まって行くのです。日本人にも技術と素材、歴史的価値を重んじる考え方が根付いて欲しいものです。
また、人間性を否定するものでは無いのですが、個人の感性、経験や喜びは、いかに素晴らしい経験や喜びでも何かモノに残さないと世界に対して影響を及ぼせず、また客観的評価もできません。受動的なものであり、そこに創意工夫、人類の叡智はありません。対して無形文化は形として残すのが難しいですがこれも人類の大いなる遺産です。楽譜や振り付けなど再現するための教えを残すか、映像や画像で記録を残し、モノとして固定することで価値の保存を容易にして後世に引き継ぐのがのぞましいと考えます。
daphnids
無窮の虚空にアストラクラーベを翳して歴史の欠片を探求する西洋アンティークコレクター。大英帝国信奉者。歴史の世界が現実を侵食することを望む時代錯誤のスノッブ。驚異の部屋の住人。唯物主義者。物欲の権化。アンチミニマリスト。歴史的価値や伝統を守ることに比べて、利便性など唾棄すべきと信ずるも、文明の利器に囲まれた都会の生活に目をつぶる日々。荒俣さんの「この世にはちょっと不思議なものを見に来ているだけ」という世界観や心ときめくものしか身の回りには置かないという方に憧れます。
世界遺産検定1級
美術検定2級
西洋アンティーク蒐集歴19年
コイン蒐集歴29年
ヤフオク歴20年
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