東芝の赤盤(エバークリーン)物語 その1

初版 2023/03/12 05:28

改訂 2023/03/12 05:28

はじめに

 かつて、東芝のLPは「エバークリーン・レコード」と呼ばれる特殊な材料を使ってプレスされていました。通称「赤盤」と呼ばれているこの赤いレコードは、「帯電防止処理を施し、レコード再生時のノイズと盤の摩耗を同時に抑止する」ことを目的に作られていました。その背景には、当時LP特有の「ピチ・パチ・ノイズ」に、多くの人が不愉快な思いをしていたということがあります。かつてのSPに比べ、音質や長時間再生面などで圧倒的な優位性を持っていたLPも、塩化ビニールという材料に由来する静電気ノイズという泣き所があったわけです。

 これを抑止するためのツールとして「レコード・クリーナー」や「シャワー(スプレー)」なども販売されていました。が静電気が吸い寄せる埃は、クリーナーで吹くと「パチ・パチ」と音を立て、音溝の深部に吸着したものは除去出来ませんでした。シャワーは一定の効果がありましたが、別の物質が盤に吹き付けられるわけですから、それが新たなノイズを発生させたり、ひどい時は針先にゴミがこびりついたりしました。

 そこで、製造工程で盤自身に対策を施したがこの「エバークリーン」でした。静電気対策盤は東芝だけでなく、ビクターの「スーパー・レコード」を始め、他社でも行われました。しかし、東芝の「赤盤」だけが有名になったのは、やはり「盤が赤い」ということに独特の付加価値を見出す人が多かったからだと思います。

 一方で、東芝自身は「赤盤」という言い方はしておらず、「エバークリーン」としか表記してしません。「盤が赤い」というのは、「エバークリーン」であることを明示的に示すためのもので、それ自体は目的ではなかったと思います。通常のレコードが黒いのは、原料にカーボン・ブラックを混入させているためですが、「エバークリーン」はこのカーボン・ブラックを使わずに、別の赤い染料を使ったようです。そして、このこと自体は静電気対策とは直接関係なかったのではないかと思います。「エバークリーン」の本質は、大目に混入させた静電防止剤であり、そのことによる副作用を抑止するための、他の原材料との配合調整(最適化)にありました。

 今回は、この「エバークリーン」の登場からその後の広がりを、当時の東芝レコード月報やレコード関連雑誌を元ネタとして振り返ってみたいと思います。

国内盤アナログ・レコード(1950年代〜1960年代〜1970年頃)のデータ・ベース(リスト)を作成しています。
(国内盤レコードDB)
ジャンルはオール・ジャンルで、フォーマットはExcel ファイル(xlsx)です。
現在仮開示しているのは、
日本グラモフォン
東芝
日蓄工業
日本ウエストミンスター
日本ディスク(1950年代)
日本マーキュリー(1950年代)
ユニバーサル・レコード(1950年代)
日本コロムビア
キング・レコード
です。

今後、随時追加していく予定ですが、時間はかかります。

ダウンロードして自由に使って頂いて結構ですが、同時に開示している説明ファイル(ワード文書 or リッチ・テキスト)を
よくお読みになってください。また、現段階ではあくまでも仮開示であり、完成形ではないことにもご留意ください。

https://1drv.ms/u/s!ApINowI3ybkacrP3M_GV7wSe6j0?e=67lDy2

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