コラム1.「ワイプ・アウト」のレコーディング
初版 2023/10/31 05:04
ベンチャーズのスタジオ録音の「ワイプ・アウト」
「ワイプ・アウト」という曲はサファリーズがオリジナルで、国内でもシングル盤が
1963年に発売されていた。(DOT : JET-1293 : 1963年10月新譜)
ベンチャーズにとっても重要なレパートリーとなっていたが、スタジオ録音盤は、
シングル・カットされなかったこともあり、どちらかと言うとライブでの欠かせない曲
として知られていた。
ところが、そのスタジオ録音盤なのだが、ファンの間では違和感漂う録音として有名だった。
その最たるものが、この曲で大活躍するドラム・ソロ。
私も含め、当時のバンド仲間も「レコードを聞いてプレーヤーを当てる」などという
才能はなかったが、どう聞いてもメル・テイラーの演奏には聞こえなかった。
ここで聞かれるドラム・ソロは、最初のうちは普通に聞いていられるが、やがて
「何やってるの、これ?」状態に陥る。少なくともロックン・ロールのビートしか知らない
未成年にはそう聞こえた。メル・テイラーのどの年のライブ盤を聞いても、こんな演奏は
していない。先代のハウィー・ジョンソンだってこんな演奏はしないだろう。
しかし、情報の乏しい当時としては、「多分誰か違う人が叩いているんだろうね」で
終わっていた。
ところが21世紀に入り、以前にも紹介した「WALK-DON'T RUN the story of THE VENTURES」
が発刊され、そこに答えが書いてあった。巻末の APPENDEX 2 に録音セッションの一部が開示
されており、そこにこの「ワイプ・アウト」が載っていた。
これが、そのコピーである。
![](https://muuseo-jp.s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/uploads/2023/10/10/16/53/37/435dbaee-b761-4a55-ac1e-821e08f3cb0e/40bed7cf9b3d4bb3a3d7a7e3eb18c5eb-converted.jpeg)
1963年6月18日のセッションで、ここでは「モア」と「ワイプ・アウト」が録音されている。
リード・ギターはビリー・ストレンジかトミー・テデスコのどちらかだろう。
リオン・ラッセルは恐らくキーボード要員で、モアの方を弾いたのだろうか。
問題のドラムだが、ハル・ブレインとフランク・カップの名が見える。
ドラマーが2人いるのは頷ける話で、「ワイプ・アウト」ではドラムが2セット録音されており、
全編に渡るタムタムに一人、フル・キットのソロに一人となっている。
当時のスタジオ・セッションではオーバー・ダビング等という面倒なことはやらないと思うので、
予め二人のドラマーが雇われ、同時録音のだろう。
ハル・ブレインは当時の様々なレコーディングに参加していてお馴染みだが、フランツ・カップ
という人は私は知らなかった。調べてみると、ジャズ系のドラマーのようで、やはりセッション・
プレーヤーとしても活躍していたようだ。
この「ワイプ・アウト」のドラム・ソロが極めてジャズっぽいプレイであることを考えると
ソロをフランツ・カップがとり、タムタムをハル・ブレインがプレイしたのではないかと思える。
(これは想像に過ぎないが)
いずれにせよ、この時のセッションには公式のベンチャーズ・メンバーは誰も参加していない。
どういう経緯で組まれたのかは判らないが、このレコードから「ベンチャーズらしさ」が
さっぱり聞こえてこなかったのも、さもありなんというところ。
これが、サファリーズのオリジナル盤。
https://www.youtube.com/watch?v=fZw1hkX6BzM
![](https://i.ytimg.com/vi/fZw1hkX6BzM/hqdefault.jpg)
ザ・サファリーズThe Surfaris/ワイプ・アウトWipe Out (1963年) - YouTube
ザ・サファリーズThe Surfaris/ワイプ・アウトWipe Out (1963年)
https://www.youtube.com/watch?v=fZw1hkX6BzM
これが、問題のベンチャーズ盤(スタジオ録音)。
https://www.youtube.com/watch?v=lcBa0I118Iw
![](https://i.ytimg.com/vi/lcBa0I118Iw/maxresdefault.jpg)
ワイプ アウト - YouTube
Provided to YouTube by TuneCore Japanワイプ アウト · The Venturesザ・ベンチャーズ スーパーベスト VOL3℗ 2017 ザ・ベンチャーズReleased on: 2017-01-27Composer: BOB BERRYHILLComposer: PATRIC...
https://www.youtube.com/watch?v=lcBa0I118Iw
これがメル・テイラーがプレイしたライヴ盤。
演奏は1965年(映像として公開されたのは翌年)のものだが、我々が良く知っている
ベンチャーズの「ワイプ・アウト」である。
ちなみにこの映像を見ていると、ノーキーのリード・ギターが、ピック(サム・ピック?)と
フィンガー・ピッキングを併用していることが良く判る。(アドリブ・パート)
https://www.youtube.com/watch?v=3bKG0p6Tv9Q
![](https://i.ytimg.com/vi/3bKG0p6Tv9Q/maxresdefault.jpg?sqp=-oaymwEmCIAKENAF8quKqQMa8AEB-AH-CYAC0AWKAgwIABABGGUgZShlMA8=&rs=AOn4CLCl7taCJcRBU6A_6xOQRwXPsQkxQw)
The Ventures - Wipeout live in Japan 1966 - YouTube
Mel taylor....great drummer!www.eddiejordan.net
https://www.youtube.com/watch?v=3bKG0p6Tv9Q
![File](https://d17x1wu3749i2y.cloudfront.net/2021/02/18/10/31/26/7ba8a0e8-2194-437e-86be-077e58dfd55b/file.jpg)
chirolin_band
国内盤アナログ・レコード(1950年代〜1960年代〜1970年頃)のデータ・ベース(リスト)を作成しています。
(国内盤レコードDB)
ジャンルはオール・ジャンルで、フォーマットはExcel ファイル(xlsx)です。
現在仮開示しているのは、
日本グラモフォン
東芝
日蓄工業
日本ウエストミンスター
日本ディスク(1950年代)
日本マーキュリー(1950年代)
ユニバーサル・レコード(1950年代)
日本コロムビア
キング・レコード
です。
2024.07.08 テイチク・レコードを追加しました。
今後、随時追加していく予定ですが、時間はかかります。
ダウンロードして自由に使って頂いて結構ですが、同時に開示している説明ファイル(ワード文書 or リッチ・テキスト)を
よくお読みになってください。また、現段階ではあくまでも仮開示であり、完成形ではないことにもご留意ください。
https://1drv.ms/u/s!ApINowI3ybkacrP3M_GV7wSe6j0?e=67lDy2
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