プレス・マーク(PM)の刻印と読み方 東芝1
初版 2023/01/01 05:45
改訂 2023/11/22 14:35
概要
刻印
- 1961年後期以降にプレスされた東芝のレコードには、「プレス・マーク(PM)」が刻印されています。刻印は、マトリクスNoを真下にして、時計の12:00の位置が基本となっていますが、そうでないものもあります。特に、複数のPMが打ち込まれている場合、12:00〜10:30〜9:00といった具合に書き足されています。
- PMは原則として片面にしかなく、マトリクスNoの若い方に刻印されています。これは、通常A面の場合が多いのですが、B面刻印もあります。(ごく稀に両面に刻印されているものや、刻印のないものもあります)
- 刻印は必ずしも鮮明ではなく、薄くて判読し難いものもあれば、上下・左右が反転してしまっているものもあります。
※上の画像で、盤面上のマトリクスNo.とプレス・マークの位置を確認して下さい(基本形)。
※プレス・マークのみを拡大すると「A2」と読めます。
※複数刻印の例で「F3」〜「G3」が確認できます。
プレスマーク(PM)の意味
- PMは、スタンパーを出所としており、プレスが行われた時期を示しています。
- ラッカー盤から直接作られるメタル・マスターと違い、マザーやスタンパーは複数枚作られますし、特にスタンパーの場合、売行きの良い商品だと数十枚も作られています。使われたスタンパー毎にPMは違っていますので、このPMを読み取れば、同じ品番のレコードであっても、それが初期のプレスなのか後期のプレスなのか、といったことが容易に判別できます。
- 複数刻印の場合は、一番最後のPMがそのレコードのプレス時期です。同一スタンパーを使用し、複数回に亘ってプレスが行われた時に、PMが追加刻印されている訳です。
- もちろん、スタンパーの番号からプレス時期を推定することも可能かもしれませんが、ヒット商品の大量生産時には複数のスタンパーを使用し、同時進行でプレスも行われたでしょうから、一概に番号の若い方が初期のプレスであるとは言い切れないことになります。更に、スタンパーの番号は単なる一連番号ですから、そこから年月を推定することは困難です。
- プレスは、新譜の場合は発売当月~凡そ1ヶ月前、旧譜(追加プレス)の場合は出荷の直前に行われたと考えられますので、ここから市場に出回った時期も推定することが出来ます。例えば、従来特定することのできなかったビートルズのAR,APナンバーや、オデオン・セカンドジャケ・シングルの流通タイミングも、ここから探り出すことができるでしょう。
プレス・マーク(PM)のタイプと読み方
タイプ1(1961年10月頃〜1973年5月頃)
- この時代のPMは、アルファベットと数字の組合わせで構成されており、「E4」,「G5」といった表現になっています。中には「4M」等、アルファベットと数字が逆転しているものもありますが、意味合いは同じです。
- 数字部分は、西暦の下1桁で年を表しています。1964年なら「4」、1967年なら「7」です。従って、「1」〜「3」は、60年代と70年代の両方に存在します。
- アルファベット部分は月を表しているのですが、以下のように読み取ります。
- 「I(アイ)」が抜けていますが、これは数字の「1(イチ)」と混同しやすいため、敢えて外したのでしょう。
タイプ2(1973年6月頃〜)
- 2つの数字で構成されており、「3−7」,「4−1」といった表現になっています。前方の数字は、タイプ1と同様に西暦の下1桁です。タイプ2の場合は、70年代と80年代とで同じ番号が発生します。手持ち品で確認出来たのは1988年までですが、その後もあるかもしれません。
- 後方の数字は、直接月を表していますが、10月は「X」,11月は「Y」,12月は「Z」となります。(その後ろに「V/」といった刻印がついている場合もありますが、これは単なる決まり文句で、特に意味は持たないようです)
- タイプ2の複数刻印は、フル表示ではなく、「4-7V/ 9V/」といった表記となっており、これは「4-7V/」+「4-9V/」ということでしょう。ただし、後方ばかりでなく前方にも追加刻印があるようで、年は左側に、月は右側に広がっているようです。
上がタイプ2の刻印「6−1」(1976年1月)、下はタイプ2の複数刻印の例「4−7と4−9」(1974年9月プレス)です。
chirolin_band
国内盤アナログ・レコード(1950年代〜1960年代〜1970年頃)のデータ・ベース(リスト)を作成しています。
(国内盤レコードDB)
ジャンルはオール・ジャンルで、フォーマットはExcel ファイル(xlsx)です。
現在仮開示しているのは、
日本グラモフォン
東芝
日蓄工業
日本ウエストミンスター
日本ディスク(1950年代)
日本マーキュリー(1950年代)
ユニバーサル・レコード(1950年代)
日本コロムビア
キング・レコード
です。
2024.07.08 テイチク・レコードを追加しました。
今後、随時追加していく予定ですが、時間はかかります。
ダウンロードして自由に使って頂いて結構ですが、同時に開示している説明ファイル(ワード文書 or リッチ・テキスト)を
よくお読みになってください。また、現段階ではあくまでも仮開示であり、完成形ではないことにもご留意ください。
https://1drv.ms/u/s!ApINowI3ybkacrP3M_GV7wSe6j0?e=67lDy2
57人がフォロー中
-
Visits
165,203
-
Items
255
-
Lab Logs
394
-
Likes
3,139
Since February 2021
MATHEW STREET 1962
2023/01/01 - 編集済み大いに勉強になりました。
親切丁寧に解説して頂き有り難う御座います。
5人がいいね!と言っています。
chirolin_band
2023/01/01コメントありがとうございます。何かのお役に立てれば幸いです。
4人がいいね!と言っています。
ryu_5u4g.2a3.6z-dh3a
2023/01/01 - 編集済みPMのことでお聞きしたいのですが、
70年代購入の国旗帯サージェントが、87-63
86年購入の国旗帯マジカルが、76-46yとあるのはどう解釈すれば良いのでしょうか?
宜しくお願い致します。
3人がいいね!と言っています。
chirolin_band
2023/01/01「年は左に、月は右側に広がる」で考えると、
サージェント:1978年3月プレス
マジカル:1987年6月プレス
になると思います。
ただ、貴殿の購入時期については、私としては客観的に判断出来ませんので、そことの整合性はコメントし辛いです。
4人がいいね!と言っています。
ryu_5u4g.2a3.6z-dh3a
2023/01/01なるほど。
60年代のレコードで7L5T4の場合、2回目プレスが67年4月となるのと同じ考え方ですね。
とても参考になりました。
ありがとうございました。
4人がいいね!と言っています。
koheinakamura5547
2023/11/21 - 編集済み今日はKojii3209です。東芝のグラシェス・スサーナのアドロで、見開きジャケット、ETP-72045 ロット5S 4 17ですがPM71-3と成っております。もう一枚見開きジャケットでEMIロゴの有るものはロット2S 3 60 PM5-7V/と成っています。このレコードは73/5/5の発売なので71-3を1971年3月と、読むのは間違いかと思いますが、では5Sとカッティングロットが後なので71-3を1977年1月3週と、読み解くのが正しいのでしょうか?だとすると75/4以降はシングルジャケットに変わっているので後に又見開きジャケットに変わったのか前のユーザーが複数のこのレコードを持っていてジャケットがテレコに成ったと読むのが正しいのでしょうか?御教授願います。
2人がいいね!と言っています。
chirolin_band
2023/11/22画像を見る限り、刻印は「71-3」らしく見えますね。それを素直に読めば「1-3」(1971.03)⇒「7-3(1977.03)」の複数刻印ということになりますが、これは正しくないと思います。理由は以下の2点です。
1.1971年時点ではこのタイプのPMは存在していない。1971年3月ならば「1C」などと刻印されているはず。
2.複数刻印の間隔(6年)が開きすぎ。
更に、発売日と照らし合わせてもおかしいですね。
ですので、PMとしては「7-3(1977.03)」と読むのが妥当だと思います。
ここからは推測ですが、「7」の右側の「1」は打ち損ないを消そうとしたのかもしれません。
ジャケットの変遷との整合性は私には何とも説明できませんが、前オーナーやディーラーによる差し替えの可能性は否定できないように思います。
なお、「1971年」を「71」と刻印するとか、週の刻印などはありません。世の中にはそそっかしい方もいらっしゃり、こういった会話を見て「週も刻印されているらしい」などといった誤情報を発信されるのは、私の望まないことですので…(念のため)。
2人がいいね!と言っています。