定期新譜が輸入盤になった時(1974年)

初版 2021/06/11 10:08

改訂 2021/06/11 10:08

ウィルヘルム・ケンプによるシューマンの「子供の情景」等を収めたLPです。



普通のDG盤ですが、メーカー直輸入盤として1974年4月1日に発売されました。

レコード・マンスリー1974年4月号に広告が載っています。

ポリドールは所謂メ直盤を扱うメーカーでしたが、この時は「ユーザー・サービスの一環」といったことではなく、大部事情が異なっていました。



前年の1973年10月には、日本のレコード業界にとって重大な事件が2つも起こっています。


  • ひとつ目は第一次オイル・ショックです。中東産油国の原油価格が大幅に引き上げられ、大きな社会問題になりました。当時をご存じない人でも、「トイレット・ペーパー争奪戦」の話は聞いたことがあるのではないでしょうか。


  • ふたつ目は信越化学工業・直江津工場の爆発事故です。これは知らない人が多いかと思いますが、「塩ビ工場」とも呼ばれていたところで、レコード盤原材料の重要拠点になっていました。(世の中全体としては、レコードよりも医薬品関係等の方が大問題だったのですが)


この2つの事件により、レコード業界は原価の上昇や、そもそも原材料が充分に確保できないということで大騒ぎになりました。

レコード・マンスリー1974年1月号の編集後記には、こんなことが書かれています。


そして、1973年末から1974年初頭にかけて、各レコード会社が一斉に値上げに踏み切ります。

下の画像は、レコード・マンスリー1974年2月号に掲載された告示の一部です。


加えてレコード盤は、より薄くなって行きました。各社「品質に影響はない」と訴えていましたが、重量盤がハイ・クオリティのひとつの要素として謳われていることを考えれば、それに逆行することが「良い影響を与えるはずはない」と判りますよね。


そんな中、ポリドールが定期新譜の一部を直輸入盤に切り替えて発売したのです。

動機が「原材料が足らない」という「背に腹は代えられない」ということだったのか、クオリティを落としたくないという「メーカーの良心」だったのか、そこは私には判りません。(両方あったということにしておきましょうか)


見開きジャケットの中は、フル・カラーのページが多数挿入されており、もちろん基本は広告ですが、添えられた名画の数々と併せて、目を楽しませてくれました。










#コレクションログ

#思い出

#参考

国内盤アナログ・レコード(1950年代〜1960年代〜1970年頃)のデータ・ベース(リスト)を作成しています。
(国内盤レコードDB)
ジャンルはオール・ジャンルで、フォーマットはExcel ファイル(xlsx)です。
現在仮開示しているのは、
日本グラモフォン
東芝
日蓄工業
日本ウエストミンスター
日本ディスク(1950年代)
日本マーキュリー(1950年代)
ユニバーサル・レコード(1950年代)
日本コロムビア
キング・レコード
です。

今後、随時追加していく予定ですが、時間はかかります。

ダウンロードして自由に使って頂いて結構ですが、同時に開示している説明ファイル(ワード文書 or リッチ・テキスト)を
よくお読みになってください。また、現段階ではあくまでも仮開示であり、完成形ではないことにもご留意ください。

https://1drv.ms/u/s!ApINowI3ybkacrP3M_GV7wSe6j0?e=67lDy2

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