夫が手放せない旧東ドイツの科学の教科書
初版 2019/05/12 01:15
改訂 2019/05/12 01:24
夫は西ドイツで生まれましたが、夫の両親は東ドイツ出身でベルリンの壁が建設される少し前に着の身着のままで西ドイツへ逃れた難民でした。一文無しの状態から新しい生活を立ち上げなければならなかったため生活は楽ではありませんでしたが、西ドイツが経済発展して行く中、「東に残っている親族よりは恵まれている」と、定期的に西の物資を段ボール箱に詰め、東の親族に送っていました。コーヒーやお菓子、布地屋その他の生活用品など東ドイツでは滅多に手に入らないものをせっせと送り、喜ばれていたようです。
東の親族は「いつも送ってもらうばかりでは悪い」と当時子どもだった夫に何か送れるものを探しましたが、物資が不足し、品質も全般的に良くなかった東ドイツでは子どもへのプレゼントに適したものがなかなか見つからなかったようです。せめて、とクリスマスに送られて来たのは教科書でした。東ドイツの教育は社会科などにおいては思想の面で西の教育とは相入れませんでしたが、自然科学の教育は優れており、東ドイツの科学の教科書は西ドイツ側でもその質に定評がありました。西ドイツでも流通し、西ドイツの教科書よりも安価だったため、大学の教授も学生達に薦めていたそうです。
これらは大学生のためのもので、まだ10歳かそこらだった夫には内容的に難しすぎましたが、中の図を眺めていると未知の世界にワクワクしたそうです。高校生になった頃、改めて手に取り、読み始めました。
夫は大学では物理学を専攻し、博士号を取得しました。もう読むこともない本ですが、「これらの本との出会いがなかったら、違う人生になっていたかもしれない」と今も大事に持っています。
#思い出
ChikaCaputh
ドイツ在住。博物館巡りが趣味で、自分でも博物館を作ってみたくなりました。
ドイツで手に入れたものをカテゴリーごとに展示していきます。
「まにあっくドイツ観光」というブログを運営しています。
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