古墳時代以前の考古資料の真贋の鑑定について

初版 2023/12/11 15:38

改訂 2024/03/24 01:02

昨今のミュージアム熱は異常である。

ひとたび人目を引く企画展が開かれれば、万単位の考古ファンが押し寄せ行列を作り、整理券を配っているような所もある。

こうなってくると、博物館で見たもの(展示品)を、自分も欲しいと思う人が出てくるのも人情、というものである。

ところで、今日の骨董市場ではかなりの数の考古資料が出回っている。

自分の見る限りでは、市場に出回っている日本の古代考古資料の贋物に関しては、知識ある人間を騙せるレベルのものはほとんど無く(完全にゼロというわけでも無いが…)、明らかに粗悪な偽物が目立つように思う。

これが中国美術やエジプト文明の考古資料になると事情が違い、一流の骨董商や研究者でも鑑別が難しい偽物が多く出回っている。

もちろん、熱ルミネセンス法やC14法、その他精密な成分分析を複合的に行えば、科学的にはっきりと真贋をつけることは可能である。

しかし、多くの土器・石器は、それ以前の「目利き」で判断可能である。

各種考古資料を、目利きによる判断のしやすさの順に並べると、

1.土器、土偶

2.石器

3.須恵器、ガラス製品

4.金属製品

となる。(個人的見解)

金属製品の判定は、贋物が容易に作りやすい為、個人ではきわめて難しいと思う。(特に青銅器は、博物館の研究者ですら騙されるケースも多く、精密な成分分析が必要。)

逆に土器・石器はかなり簡単と思う。

以下に土器・石器の場合の判定法を示しておく。

①水を掛けて土臭があるかどうかで判定する。

土器の場合、水をかけると土臭がするので、これで真贋を見分ける事ができる。

土器の真贋に関して、この手の言説をよく見るが、これは「必ずしも」では無い。

海や河川、または砂漠地帯で出土した真物に水を掛けても、通常土臭はほとんどない。

この判定法は、富栄養気味な土壌から出土したものに限られる。

一方で、使ってる粘土が良いのか、粗悪な出来の贋物に土臭がする事がままあり、確実な判別法と言えない

またこの方法は、真物であれば風化を促進させるため、余りおすすめできない。

②表面の古色(パティナ)の具合で判定する。

これが極めて重要。

土器・石器の場合、ほとんどのものを区別する事ができる。

土中に千年〜万年単位で埋まっていた物というのは、(特に日本の場合は酸性土壌であるから)土中の酸によって侵されて摩耗し、特有の古色が生じる。

土器であれば、表面は焼成直後の荒々しさが削り取られて滑らかになり、破断面すらも摩耗している。

朱や彩が塗られている物は、当然かすんでいる。

石器であれば、表面に土粒子が不可逆的に侵入し、脆い素材であれば化学変化すら引き起こしており、当然のように摩耗も見られる。

時には土圧による変形もある場合がある。

中国の贋物製作集団だと、贋物表面にフッ酸を掛けてそれっぽい古色を作ることもあるというが、非常にレアケース。

日本の贋物で、そこまでするという話は聞いた事がないし、そこまでしても真物には到底及ばない。

水中にあったものに関しては特殊でレアケースだが、やはり特有の古色が見られるようだ。

フジツボのような固着生物が見られることも多いという。

③編年学的・考古学的な背景知識から判定する。

これは土臭判定同様、「必ずしも」ではない。

なぜならば、史実無視の粗悪品は論外としても、悪意と知識と技術力のある贋物制作者ならば、知識面から信ぴょう性の足る品を作るのは容易だからである。

例えば、贋物の非常に多い縄文土偶であるが、大量の粗悪品がネットオークションで出回っているのでそういったものの判定には有効なのだが、ごく一部には考古学的に精巧な物もあるようだ。

精巧な贋物は、特に明治期〜昭和初期に掛けて製作されていたようで、贋物土偶が当時の好事家の間で流通していたという研究もある。

現代では、技術力のある窯元が精巧なレプリカを博物館の売店向けに量産している事もあり、これらの技術を悪用すれば十分に人を騙す事は可能と言わざるを得ない為、真贋判定法として100%有効と思えない。

通常は上記①〜③の判定法を使って、総合的に判定している。(大体は②だけでも事足りるのだが。)

また物を入手する際には、出土地や出土状況を確認しておくとなお良いだろう。

今まで収集した考古資料・化石・鉱物標本等を紹介していきたいと思います。

特に考古資料の数は200点以上ありますが、大抵が非常に脆い為破損の恐れがあり、所有者の当方ですらあまり触れる事ができなくなっています。
この考古資料等をデジタルアーカイブとして残しておき、また当方だけでなく多くの人に鑑賞してもらいたいです。

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