憧れとの距離 Pianosonata No.3 in f op.5
初版 2024/11/27 19:48
改訂 2024/11/27 20:28
ブラームス/ピアノ・ソナタ第3番ヘ短調 op.5
第1楽章 アレグロ・マエストーソ
第2楽章 アンダンテ・エスプレッシーヴォ~アンダンテ・モルト
第3楽章 スケルツォ: アレグロ・エネルジーコ-トリオ
第4楽章 間奏曲(回想):アンダンテ・モルト
第5楽章 フィナーレ:アレグロ・モデラート・マ・ルバート
20歳で完成し、同年11月にロベルト・シューマンに譜面を送り、その批評を仰いでいる。
シューマンはこの長大な作品が、音域や構築性において若書き故の脆さを持ちながら、破棄するに忍びないスケールを持っていることに気づいていたのだろうか。
ブラームスがシューマンに友人として接することになる以前に、彼の批評家としての耳に自分の作品を晒したのはこれが最後になった。
この作品はブラームスが最晩年の孤峰の域に達していたベートーヴェンへの意識が彼の交響曲や弦楽四重奏曲以上によく顕れているようだ。
構成においてベートーヴェンの弦楽四重奏曲に、探ろうとする内省の深さを後期のピアノソナタに習っている。
でもベートーヴェンが積み重ね壊してきた32番までのソナタの流れはなく、ブラームスはいきなりベートーヴェンの頂点に迫ろうとするのである。
無茶というものだ。
過程がなく、結論に迫る。
若さの持つ羨ましくも不遜、大胆な挑戦。
20歳のブラームスが最晩年のベートーヴェンを作り手として意識する。
その情熱と激情の奔出。
第29番のハンマークラビール・ソナタが意識された第1楽章と偉大な緩徐楽章に近づこうともがいた末、自らがもつロマンティシズムの断固たる切り捨てができなかった彼の若さが、かえって新鮮である瞬間をいくつも産み出す第2楽章。
最もブラームスらしいハンガリー風のスケルツォ。
そして、第4楽章。
ベートーヴェンの『運命の三連符』に楽聖を回想しつつ、主題にのぞくロマンティックな旋律。
書けば書くほど、ベートーヴェンに感じていた自身のイメージと真の距離が見えてきてこの間奏曲で折れてしまったように思う。
フィナーレはロンド形式を踏みながら、はっきりと知覚した遙かな距離を縮めようともがく事をやめ、緊密さに欠けながらも、自分の音楽を展開している。
ベートーヴェンはブラームスにとってある意味絶対的憧れであり、メルクマールであり続けた。
作曲する意味においてプロとして拮抗できる作品を作り出すために、以後彼は常に背後から楽譜をのぞき込むボンの巨匠の視線を感じ続けたのかも知れない。
ただ一つ、ピアノ小品という分野において唯一彼はそれをほとんど残さなかった偉大な憧れから解放されていたように思う。
ラドゥ・ルプーのいつ頃の録音か知らないけれど。少し繊細だけど、きれいな展開と倦まない集中力を発揮したアンダンテが美しい演奏があります。
特徴的なベートーヴェン的緩徐楽章を意識しつつ、若さ故その緊張感と浮力によって深く内省に至れず、そのもどかしさを抱えたまま奇妙に澄んだ 音世界を展開する楽章です。
最晩年のベートーヴェンの世界に20歳で挑んだ純粋が、妙に胸を突きます。
第2楽章を終わりまで
なお、当時20歳ののブラームスが目指していた場所をフリードリヒ。グルダの演奏で
ベートーヴェン /ピアノソナタ第29番第3楽章 アダージオ.ソステヌート
Mineosaurus
古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。
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