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生と死の幻想/キース.ジャレット
祭り囃子を彷彿とさせるプリミティブな演奏に始まり、スピリチュアルな響きの中で序々にスピードを増し、高揚感とともに絶頂へ――#1 “Death and the Flower” 「生と死の幻想」は奔放さと緻密さを併せ持った完成度の高い傑作です。#2 “Prayer” はチャーリー・ヘイデンとの静謐で繊細な美しさがきらめくデュオ作品。続くドラマティックな多重構造をもつ即興演奏の#3 “Great Bird” で締めくくられるこのアルバム、全編、キースの奇才の鼓動を感じます。次に紹介するのは「メメント・モリ宣言」ともとれるキース自作の詩の一部です。 私達はもっと花のように努めるべきである。 彼らにとっては毎日が生の体験であり、死の体験でもあるから。 1. Death and the Flower 2. Prayer 3. Great Bird Keith Jarret (p,ss,fl,perc) Dewey Redman (ts,perc) Charlie Haden (b) Paul Motian (ds) Guilherme Franco (perc) Recorded 1974
MCA平碆 善幸
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至上の愛、ジョン、コルトレーン
熱く流れる魂の音 2006年5月6日に日本でレビュー済み 重厚で宗教性に満ちたトータル・アルバムである。ジャズのディスクでも珍しく、際立った存在である。過去多くの人が魅せられ賛辞を送ったように、私もまたこのアルバムに魅せられる。 タイトルでも、Coltrane作のライナーノートでも解る様に、宗教性に満ちている。ライナーノートにはGodが溢れ、ジャケットのColtraneの表情もただならぬ雰囲気が漂う。確かに重厚で緊密な音楽であり、「a love supreme」と19回も唱和されるのは異色である。しかし宗教性が強くても、ジャズであり、サックスの音色を堪能できる音楽であり、十分に楽しめる。フリージャズよりも伝統的なジャズの匂いが強い。 宗教性も、いわゆる教会音楽ではない。原始宗教に近く、力強さや土臭さが強い。こうした雰囲気から、ストラビンスキー『春の祭典』やベートーベンの交響曲との類似を感じる。トータルアルバムの雰囲気からは、ビートルズの『アビーロード』やマイルスの『A kind of Blue』を思い起こす。 私は何かに詰まっているとき、何かを始めようとしているとき、これらのアルバムを聴く。数十分間どっぷりと浸かると、心の中の何かが取れ、エネルギーに満ちる変化を受ける。軽く聴けるポップさもあるのだが、やはりのめり込んで聴くことをお勧めしたいアルバムである。
MCA平碆 善幸