DVD「武器よさらば」
アーネスト・ヘミングウェイの作品は数多く映画化されていますが、なかなか観る機会には恵まれなかったですかね。本文を作成するので、一応調べてはみたのですが、本展示アイテム収録作と、後でも触れますがそのリメイク作、そして『誰が為に鐘は鳴る』の3作品に止まったのは少し残念だったかな。もっとも、こと映画音楽に限れば『老人と海』『海流のなかの島々』『陽はまた昇る』などはサントラ盤を聴いたことがあるので、機会があれば触れることもできるでしょう。
それでまず原作ですが、個人的には高校生の時に読みました。それまでに、ヘミングウェイにはいわゆる「反戦作家」という刷り込みがあったので、小説のタイトルも相まってそのことが強調された内容だろう、という先入観を持っていたのですが、戦争によって人の運命が左右されてしまうというのはストーリーテラーの常道ですから、読後の印象は要するに「悲恋物語だった」というものでした。
それから20年以上経過して本アイテムを入手したときに本作を、そして本文作成時の数年前にリメイク作『武器よさらば』(1957年製作)を観たのですが、小説と映画は比較の対象にはならないとは言いながらも、あえて比較すれば、やはり両作とも原作ほどの魅力に乏しかったですね。
そうなると新旧両作の比較ということになりますか。まず、主役の二人についてはゲーリー・クーパーとヘレン・ヘイズのコンビの方が、ロック・ハドソンとジェニファー・ジョーンズのそれよりも明らかに魅力的でした。他方、脇役陣はリメイク作では、名女優マーセデス・マッケンブリッジや、ビットリオ・デ・シーカ及びアルベルト・ソルディというイタリア映画の重鎮が脇を固めていました。豪華ですね。そして、観た率直な感想は、本展示アイテム収録作の方が優っている。というか、リメイク作の方は2時間半を超える長尺であるも、冗長な凡作だったから、本展示アイテム収録作の方が印象がよかったのかな。ヘレン・ヘイズの色香はそこそこ魅惑的でしたが、クーパーは相変わらずクーパーでした。あと、監督のフランク・ボーザージ(ボーゼイギ、ボーゼージなどと表記されることも)は映画史に残る名匠なのですが、どうもそれに見合うような知名度に乏しいような気がします。文献上では多くの作品を残していることがわかるものの、実際に観たことがあるのは、『歴史は夜作られる』や、このフロアでも紹介している『第七天国』くらいなのが口惜しい。
最後に、本展示アイテム収録作の劇場公開時の邦題は『戦場よさらば』、この展示フロアのシリーズお得意の改題をしており、しかもリメイク作との混同もあり得るという愚行をここでもIVCは行っていました。
https://www.youtube.com/watch?v=KT1RIeg5WL0
#DVD #淀川長治 #武器よさらば #戦場よさらば #アーネスト・ヘミングウェイ #フランク・ボーザージ #ゲーリー・クーパー #ヘレン・ヘイズ #アドルフ・マンジュー
淀川長治
IVC
woodstein