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Sinosaukia distincta
中国のサンドゥ (Sandu) 累層産のシノサウキア・ディスティンクタ (Sinosaukia distincta) です。 ほぼ全身を覆う目立った顆粒と長い頬髭が特徴的な種類であります。この標本は本体67mm、頬棘込みで75mmとかなりのサイズですが、このように大型化する個体も偶におります。8枚目の手との比較でも分かる通り、母岩も巨大でずっしりとしており、私の手持ちでは最重量級の標本の一つです。なお、見た目からはいまいちピンときませんが、新旧分類ともに、アサフス目に属するようです。 サンドゥ累層は広西チワン族自治区に位置し、ベトナムにも接する中国の辺境の産地ですが、2020年頃までは、本産地の種が比較的市場に出回っていたように思います。当時は。本種含めよく見かけたものですが、他の中国産の例に漏れず、最近はぱったりと供給が途絶えてしまいました。 Upper Cambrian産と時代的にも面白く、当時、手をつけておいて良かったなあと思う産地です。
Upper Cambrian (Furongian, Jiangshanian) Sandu Jingxi county, Guangxi Province, China Sinosaukia distinctatrilobite.person (orm)
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Orygmaspis spinula
マッケイ (McKay group) 産出のオリグマスピス・スピヌラ (Orygmaspis spinula) と思われる標本です。 マッケイの種々のオリグマスピスのうち、個人的には、本種はオリグマスピス・マッケラリ (Orygmaspis mckellari) と、かなり見分けづらいと思っています。ただ、マッケラリと比較すると、スピヌラでは、胸部の横幅が幾分スリムでその外縁は直線的、さらに胸部の棘の湾曲も弱く、直線的であるように思います。 本種は元々、Orygmaspis sp.として入手しましたが、いくつかの特徴から暫定スピヌラと考えております。
Upper Cambrian (Furongian, Jiangshanian) McKay Group British Columbia, Canada Orygmaspis spinulatrilobite.person (orm)
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Housia vacuna
カナダの三葉虫、ハウシア・バクナ (Housia vacuna) です。旧分類ではアサフスの祖先とされており、McKayグループの中では、実際一番アサフスっぽい見た目をしております。角がやや角張った楕円形の形態は、後の時代の、オルドビス紀のプレスヴィニレウス (Presbynileus) やプティオセファルス (Ptyocephalus) などを思わせるフォルムであります。ただし、近年の分類ではアサフス目ではなく、オレヌス目に組み分けされているようです。 市場レベルでは近年見かけるようになった、Mckay groupの種の中では、何故だか昔から販売されている種でもありました。しかし、質の良くないぼやけた標本が多く、購買意欲が起こらず敬遠しておりました。最近Mckayの他の種が市場に出てくるに伴い、本種も良質な標本が出てくるようになった印象です。 と言いつつも、本標本に関しては表面がだいぶ荒れてしまったおり、ベストな標本というわけではありません。ただ、本種にしてはサイズは大きめであり、最低限の構造は確認はできるのかなと思います。
Upper Cambrian (Furongian, Jiangshanian) Mckay Canada (産地情報喪失) Housia vacunatrilobite.person (orm)
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Wujiajiania lyndasmithae
ウジアジアニア・リンダスミサエ (Wujiajiania lyndasmithae)。マッケイグループの、名前がややこしくて覚えづらい三葉虫です。 潰れた草履のような見た目で、名前のみならず、形態も少々変わっているようにも見えます。最もこの標本は本当に潰れており、実際はもう少し厚みのある種類ではあるようです。何にせよ、細長く胸節の数が多い事が特徴です。 集団で産出することもしばしばであり、この標本でも、大きな個体と小さな個体がセットで載っています。 ウジアジアニア・スセルランディ (Wujiajiania sutherlandi) という、同属異種もマッケイより産出するのですが、調査不足で、両者の違いはまだ把握しておりません。本種の同定は提供者氏に依ります。
Upper Cambrian (Furongian, Jiangshanian) McKay Group Cranbrook, British Columbia, Canada Wujiajiania lyndasmithaetrilobite.person (orm)
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Orygmaspis mckellari (2 specimens)
マッケイ (Mckay) のオリグマスピス (Orygmaspis) というグループには、形態的に地味な種から派手な種まで、多様な種がいる事が知られています。 マッケイの種小名を冠する、本種オリグマスピス・マッケラリ (Orygmaspis mckellari) は、その中ではやや派手なタイプだと感じます。ベースとなるフォルムこそ地味ですが、胸尾部の側葉からは、柔らかそうな棘が複数生えており、総合的には優美な印象です。 形態的によく似た種に、オリグマスピス・スピヌラ (Orygmaspis spinula)という種がいますが、今一つ違いがはっきりしません。スピヌラの可能性は否定できませんが、本産地の専門家である提供者氏より、マッケラリとのことで購入しましたので、差し当たり、マッケラリのままとしております。 2023/7/27 最初の標本の尾部が不完全だった為、尾部がよくわかる標本を買い足しました (写真6-8番目) 。特に頬部のgenal caecaの可能性のある構造も確認できて、細部がよくわかる標本です。
Upper Cambrian (Furongian, Jiangshanian) Mckay group site4, near Cranbrook, British Columbia, Canada Orygmaspis mckellaritrilobite.person (orm)
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Aciculolenus askewi
カナダのカンブリア紀末の化石を産するMcKay groupから、風変わりな三葉虫、アキキュロレヌス・アスケウィ(Aciculolenus askewi) です。 McKay groupでは、原始的なアサフス目に属する小型でやや地味めの三葉虫を多産し、特徴が分かりにくく区別が付けづらい種が多いです。しかしよくよく見ると、そんな中に数種類の実に奇妙な種が多いことに気が付き、比較的コアなコレクターを惹き付けて止まない産地です。 本種はMckayのそんな変わり種の一つ。圧倒的にペラペラの背甲を持ち、そのニョロっとした全体像はどこか紙魚を思わせます。吹けばどこかに飛んでいきそうな体格をしており、化石化して残っている事自体が、奇跡のような種です。実際、本種は保存状態の良いものでも、特に自由頬か軸葉の垂直な棘が揃っていない事が多く、両自由頬のない本標本ですら、かなり状態が良い方です。 アキキュロレヌスは、アキキュロレヌス・パルメリ (A. palmeri)という種が元々知られておりますが、同種は胸節が7に対し、本種では13とより細長く、本標本入手時(2019年)には未記載種につき、Aciculolenus sp.としておりました。 しかしその後、2020年にBrian Chatterton氏らによって、アキキュロレヌス・アスケウィ (Aciculolenus askewi)との名で無事記載されております。 (参考文献:Mid-Furongian trilobites ans agnostids from the Wujiajiania lyndasmithae Subzone of the Elvinia Zone,McKay Grup,southerstern British Colombia,Canada, 2020) 小さいながら、とても面白い種かと思います。
Upper Cambrian (Furongian, Jiangshanian) McKay Group Cranbook, British Columbia, Canada Aciculolenus askewtrilobite.person (orm)