乙女鉱山の灰重石/シェーライト
水晶の産地として名高い、山梨県の『乙女鉱山』より産出した清澄な灰重石(かいじゅうせき)です。
蛍光鉱物としてはホタル石と並び知名度が高く、短波の紫外線により青白い光を放つ姿が有名です。
この標本を目の当たりにし、私はひたすら驚嘆するばかりでした。
まず灰重石は、重金属「タングステン」を得るために採掘される鉱石です。
そのため本来であれば金属材の原料として製錬に回されてしまうであろうものが、こちらの彼にはどういう訳か宝石然とした研磨が施されていたのです。
幾ら透明度が高いとはいえ、この鉱物に対しカッティングが施されることはとても稀なことであります。
こちらに細工されているバゲットカットはとてもシンプルな研磨であるので、恐らくは研究用の試料として最低限の装いが成されたものだったのではないかと思います。
そのうえ国産品。
しかもラベルの産地表記に「乙女鉱山」と書かれていたのですから尚のこと驚きです。
かつてこの鉱山からもタングステン鉱が採掘されていたことは耳にしていました。
しかし水晶の方があまりに有名すぎて、乙女産の灰重石というのはそれまで図鑑ですら目にしたことが無かったのです。
この類まれな石との出会いに、ひたすら身が締まる思いであります。
#国産鉱物
宝石
鉱物標本
4.5~5
2019年
テッツァライト