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1948-49 Brass Model Factory Repair "Mysterious Hinge"
ここはあくまで、リペア品の展示が趣旨である。ありふれた1940年代後期~'50年代のキャンド・ボトムのフルスタンプなど見飽きている目の肥えたご貴兄が対象である。 で、何のご自慢の逸品でもないのであるからして…現代ジッポー完成期前夜の味わいや特徴の薄い'47年~'56年製インサイドユニットの画像掲載もしない。 ここは1つ、小さな謎が生じたので、是非ともジッポーについて博識な諸先輩方にお尋ねしたいことがあっての展示なのだ。 画像は陰謀論界隈では有名なフリーメイソンのバッジがロウ付けされている。 些か…アメリカロッジの人間らしい明け透けな所属勢力アピールの強い、1947年頃のブラス製である。ebayでもよく見かける定番モノグラム貼りだ。 でも、問題はそこではない。見てお分かりの通り、ヒンジがジッポー社の手になる修理交換がされているのがお分かり頂けると思う。 ファクトリーアウトした新品の製品にならば必ず為されているヒンジ両サイドの面取りが全くされていないし、ヒンジ外面にもケースのメッキ工程の際のクロームメッキが被っていないことからも一目瞭然である。 しかし、このヒンジ…おかしいのである。 画像3を見て頂くとお分かりの通り、年式相応のビッグバレル(太い蝶番)なのにも関わらず、カムクリップの先端が1980年代後期~現行製品の物の様に斜めカットが両サイドに入っている。 私の知りうる限り、製品のヒンジのカムクリップ先端部分の斜めカットの入った物が導入されたのは1980年代後半辺りで、それまでのベトナムジッポーに代表される'68年や’70年代の物は先端がフラットな物であったと記憶している。 じゃあ…このビッグバレルは修理用ヒンジなのに、このような先細りのカムクリップって、いつ製造の部品で、いつ修理されたん???となってしまう。 考えられるのは、ビッグバレルの製品の製造が終了した後年、'47年~'56年製のヒンジ修理のために、新型カムクリップ仕様で、わざわざジッポー社はビッグバレル・ヒンジを再生産して用意したという事なのだろうか!? 謎は深まるばかりである。私が無知であるが故の謎で、事情をご存じの方にとっては何でもない事なのかもしれない…。なぜこのようなパーツが存在するのか、ご存じの諸先輩方がいらしたら、是非ともご教授願いたい限りである。
shinnosuke
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1938-39 Round Polished Model 【Part1】
この修理品収蔵のコレクションルームのトップ画のジッポーである。 実はこれ、某大手オークションサイトで或る方が出品された物を落札したのだが、出品者自体がこの年代のジッポーの価値があまり分かっていなかったようである。 商品説明にも『インサイドユニットがオリジナルの年代かどうか不明…』といった記述があり、出品画像が不鮮明だった事も祟り、最低落札額でゲット。 えらく安かった…。確か1.5栄一程で、久々の掘り出し物である。カムとホイールが50年代の物に修理交換されてはいるものの、カムクリップも、コの字型別体部品がロウ付けされた初期型で、4バレルヒンジはオリジナルが健在。 ケースとインサイドユニットの年式マッチングは元々のペアかどうかは別として矛盾はないし、腐っても鯛…あれほど衆目を集める巨大オークションで、誰の目にも止まらなかった事が不思議でならない。 ただ、これ…届いてみてから判明したのだが、『クセ強』の個体だった。 値段が値段なので、はじめから問題のない完品だとは思っていなかったが、とにかくケースのボトム側ヒンジ面内側とインサイドユニットの接触面との間に約1ミリのすき間があり、どうにもガバガバである。キャップを開く度にチムニーが競り上がってくる…。そして、波形スプリングが絶賛折損中だった…。 どうも、私は『波型カムスプリング運』に恵まれない運勢らしい(笑) これも…普段使い用候補生として我が『自己流炸裂!ジッポー・クリニック』入りとなった…。まずはウィックホール兼、カムスプリング固定アイレット(ハトメ金具)を抜き、スプリングを外した(画像5)。 さらにチムニー外面のキャップ擦れが酷く、真鍮地がかなり露出していたので表面研磨後ニッケルメッキし直し、何とか見れるレベルにした(画像3)。 ただ、このような『新品仕上げ』は、レストアの方針として賛否の分かれるところで、使い古した擦れなどのボロさも個体の風合いとして尊重し、手を付けないという向きもある事は承知している。 そして、画像6が、『小生謹製!波型リーフ・スプリング復刻版』である。1941年製のプレ大戦スチールモデルで実装済みで、オリジナルと遜色無く機能することは確認出来ている。 ただ、この年の瀬…『師が走る』と書く暦。文字通り、私も仕事に私事に忙殺し、年内の着手は…と言う所で、この拙い展示をご覧頂いている諸貴兄方には誠に申し訳ない限りである。
shinnosuke
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1941 Pre War Steel Model
ジッポー史的年代考証で言う所の1941年製モデル。 折しも、米国政府は軍需物資統制法を発布…。 初期段階ではラウンドトップモデルの生産においても、ブラス(真鍮材)の使用制限として、ブラスチューブ製インサイドユニットの基盤パーツであるチムニー・プレートがスチール製に置き換わる程度だったが、何やかんやで戦時色の深まる1941年後期、フリントチューブ以外ブラス材を全て排したオールスチールとなった。 ここにも、フランクリン・デラノ・ルーズベルトの思い描く未曽有の大戦争の一端が垣間見える…。 それでも、まだこの頃はジッポー社製オイルライターが100%軍への納入にはなっていなかったのかもしれない。私見ではあるが、この頃のケース外装には、まだ民生品を想起させるクロムメッキが施されている。 ともあれ…一番最初に展示しようと思ったのが、この最初期のスチールモデルである。もう、私の修理の手が加わっていない部分がほぼないという物だからだ。 まず、この個体購入時、ケースのヒンジが近年製造の5バレルの物でキレイに修理されていたのだが、どうにも気にいらず、ヒンジを外し、他のジャンクのインサイドユニットのタンク部分のステンレス材を切り出して4バレルヒンジを作成し換装している。 という事で…まあ、ある意味ジッポー社純正の部材を使用しているので、オリジナルヒンジですよ~と言い張る事も不可能ではない…と、信じている(笑) インサイドユニットもサビが酷く、ハンダ接合された部分も彫金用バーナーで完全に分解し、徹底的にサビをクリーニングした後磨き上げ、改めてフリントチューブやプレートをハンダ付けで組み直した。 そもそも、こいつを直したら普段使いを念頭に置いていたため、特に腐食劣化の酷かった水平刃フリントホイールは外し、オリジナル性を犠牲にした。 ジャンクパーツから'50年代製の真鍮製コア・リングとホイールの2ピース構造の新型の斜め刃ホイールに換装している。今更ながらではあるが、水平刃では実現不可能な心地よい着火率は劇的で流石である。 また、波形リーフスプリングも折れていたので、ジャンク部品の完全体オリジナルパーツを原型に、本職のバネメーカーに同等品の製造を発注し、換装している(画像8枚目)。 ある程度、まとまった数製作したので、これが折れてお困りの『リペア猛者』の方にも実費でお分け出来たら…と企画中でもある。 最後に、インサイドユニットはサビを取った後のボロ隠しにニッケルメッキを掛けて1930年代後期のラウンド風に2トーンのコントラストにしてみた。 これだけ手を掛けた難物はこいつくらいで、これまでになかった達成感があり、他のコレクションに比べ、非常に思い入れ深いお守りの様な存在である。
shinnosuke