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The Story of Vernon and Irene Castle
一連の「アステア=ロジャース シリーズ」の最終作(後に一本だけ共演するが)。 最終作で実在のダンスペアを演じるというのは、妥当というか、誠に相応しい。 衣裳を始め、事実に忠実に描かれたというハナシなので、各ダンスの振り付けも当然そうなのだろうが、どれもアステアにしか見えないというのは流石、というべきか、ご愛嬌とするべきか。 (オリジナルナンバー「By the Light of the Silvery Moon」の軽妙さは素晴らしい) そしてそして。 前作辺りから顕著になってきた、ジンジャー・ロジャースの際立つ美しさ。 初共演の『空中レヴュー時代』から6年。スター女優に“変身”したジンジャーに比べ、アステアは相も変わらず燕尾服を着せられ・・・というようなことが、いろいろな文献に書かれている。 ちなみにこの作品で、アステアは出演ミュージカル映画史上 唯一「死ぬ」。 今回は実在の人物の事実に基づいているので例外なのだが、フレッド・アステアという男、実は「死なない」のだ。 この件に関しては別のところで文章にまとめたので、ご興味がある方は「死なないアステア はしりがき 白川」とGoogleででも検索してみていただきたい。
1939 ヘンリー・C・ポッター パンドロ・S・バーマン カッスル夫妻Nozomi Shirakawa
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Carefree
気儘=「きまま」と読む。 この作品がアステアとの初めての出逢いだった。 1990年(頃)の正月三が日(あたり)に、日本テレビの深夜枠で、水野晴郎氏の映画番組の特番として『アステア=ロジャース特集』が組まれた。 オンタイムでは見ずに、ビデオに録画したのだが、記憶が間違っていなければ放映の順に見たはずなので、どういう意図でこの一本が最初だったのかは不明。 他の主演作と比べられる今ならわかることだが、ダンスシーンが少ない作品である。 その最初のナンバーが「Since They Turned 'Loch Lomond' into Swing」(全然覚えられない)で、ゴルフクラブを手に、見事なスイングを披露しながらタップを踏むというもの。 とにかく驚いた。「なんだ、この楽しさは!」と。 何度も何度も巻き戻して見直して、このダンスにタップが入っているのに気付いたのは、かなりの回数を経た後だ。 つまり、タップの技術を見せるのではない、、、「見て楽しかった、それがタップだった」という体験。 この体験の翌年からタップダンスを習い始めた。 そんな個人的な思い出は置いておいたとしても、この作品でのジンジャー・ロジャースはとにかくキュートだ。 催眠状態で街に出て、いろいろなイタズラをしでかす時の表情のカワイさといったら! そうそう、ほぼどうでもいいことだが、アステアが珍しく精神科医の役です。
1938 マーク・サンドリッチ パンドロ・S・バーマン 気儘時代Nozomi Shirakawa
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A Damsel in Distress
「アステア=ロジャース シリーズ」から一度離れたことになる。 その背景や理由についてはいろいろな所に書かれているが、それを考慮しながら見る必要はない良い一本だと思う。 これまでソロかジンジャーと踊るかしかなかったアステアがトリオで、しかも男性ダンサーを含む3人で見せる「Put Me to the Test」(捉えどころのない覚えにくいタイトル)は秀作。 伝わりやすく小気味いいリズムのステップに、ジョージ・バーンズが途中で二度 " Yeah! "と声を出す気持ちもわかるというもの。 中盤の遊園地のシーンの諸々を見て『バンド・ワゴン』の「Shine on Your Shoes」を連想して楽しくなるか、『レッツ・ダンス』の「Tunnel of Love」を思い出して苦い気持ちになるかは、その日の体調と運勢による。 「Nice Work If You Can Get It」のドラムナンバー、燕尾服は製作側からの要望だったかもしれないが、アステア本人が見せ場としてやりたいようにやった感じが滲み出ているようだ。 原題は「囚われの姫君」の意(自分のための備忘録)。
1937 ジョージ・スティーヴンス パンドロ・S・バーマン 踊る騎士Nozomi Shirakawa
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Shall We Dance
アステアマニアを自負しているし、関連グッズなどではなく「映画のアステア」を大好きでいる自分なれど、恥ずかしながら、この作品と前作『有頂天時代』は混同してわからなくなってしまう(コロンビアに於けるリタ・ヘイワースとの2作品もだ)。 バレエダンサー役というのが、それだけでまず笑わせてくれるが、「Slap That Bass」や「They All Laughed」の中で、ちょこちょこと茶化した風に小出しにしてくるポーズにもニヤつかされる。 「Let's Call the Whole Thing Off」でのローラースケート……ジンジャー、えらい! 題名にもなっている「Shall We Dance」、タイトルだけだと『王様と私』の同名異曲が有名だが、こちらのガーシュイン版の方が好き。 最後の「大勢のジンジャー」は少し怖いがナイスアイディア。 そして「They All Laughed」での衣裳はとても素敵。実際は何色なんだろうと想像したくなる。やっぱり赤とオレンジと黄色、とかだろうか。
1937 マーク・サンドリッチ パンドロ・S・バーマン 踊らん哉Nozomi Shirakawa
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Swing Time
「Pick Yourself Up」はアステア=ロジャースのタップデュオナンバーとしてはベストだと思う。 「Waltz in Swing Time」、「Bojangles of Harlem」、「Never Gonna Dance」―― 難易度では頂点を極めたダンスナンバー群。 最後のシーンのまとめ方が、まぁなんというかアレだが、キャストとしてはエリック・ブロアーに代わる(?)ヴィクター・ムーアがいい味を出している。 この映画で、燕尾服とモーニングの違いを初めて意識した。 アステアには山高帽はイマイチ似合わないと思う。
1936 ジョージ・スティーヴンス パンドロ・S・バーマン 有頂天時代Nozomi Shirakawa
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Follow the Fleet
珍しく海軍の船員役か! と驚くのも束の間、やっぱり「元ダンサー」。 お、水兵服か! と珍しがるのも束の間、最後は燕尾服。 (どちらも良い意味です) 「Let Yourself Go」での身体のキレはスゴい。ほとんど見ていないが、隣で踊っていて悪目立ちしていないんだからジンジャーもかなりのものなのだと想像できる。 ストーリー仕立てが楽しい「I'd Rather Lead a Band」(最後のポーズはどうしたものなのだろう?)と「I'm Putting All My Eggs in One Basket」(最後のポーズの後、ジンジャーがスカーフを緩めるのは演技だろうか?)。 そしてしっかりとしたダンスシークエンス「Let's Face the Music and Dance」。 ジンジャーのタップソロも見られる(『ダンシング・レディ』のJ・クロフォードより100倍良い)。
1936 マーク・サンドリッチ パンドロ・S・バーマン 艦隊を追ってNozomi Shirakawa
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Top Hat
ストーリーがつまらない とか、キャストや服装が同じでどの作品かわからなくなる とか、そんなごもっともなご批判など どうでもよくなる。 『コンチネンタル』での感触を、I・バーリンによる書き下ろしの音楽と共に磨き上げた名作。 個人的にC・ポーターよりも、G・ガーシュインよりもバーリンが好きだが、なかでも「No Strings」はベストの一つ。 この作品以降、アステア映画でのダンスナンバーには隙が無くなったと感じる。どれも納得がいくまで作りこみ、満足するまで撮影したのだろう。 冒頭の「紳士クラブ」や、終盤のスイートルームの上の階で、一見めちゃくちゃなステップを踏んでいるようなタップも、何度も何度もリハーサルしたに違いない、絶対。 「The Piccolino」のデュオは、踊りこなすのがかなり難しいと思う。
1935 マーク・サンドリッチ パンドロ・S・バーマン トップ・ハットNozomi Shirakawa
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Roberta
フレッド・アステアを知り、レンタルビデオ店をいくつもいくつもまわっては未見のものが一つでもあれば会員登録をし、借りてきてはダビングし……という活動をしていた高校生時代に幻の一本だった作品。 タイトル前に「ピピピのモールス信号」(RKO)と「ガオー! のライオン」(MGM)が両方流れるあたりに、なかなかソフト化できなかった理由がありそうだが、わざわざ調べる気にはならないので省略。 「Let's Begin」、「I'll Be Hard to Handle」など格段に楽しいナンバーが収められている。 特に後者はアステアとジンジャーが実際にシューズを履いてタップを踊る唯一のシーン。 確実に踏んでいる緊張感と、同時録音だと思われる息づかいや笑い声が嬉しい。 「I Won't Dance」でのソロはまさに“アステア one and only”! タップでもダンスでもない独自のジャンルだと思う。 作品ごとに確実にダンスの技術と勘を上達させてきたジンジャー・ロジャースが「Smoke Gets in Your Eyes」ではイマイチ。厚めのゴージャスさが合わなかったか?(普段はアステアしか見てないが、そんな理由でジンジャーに目がいってしまう) が、その直後の「I Won't Dance」の短いデュオではドレスをたくし上げやんちゃに踊る姿がすこぶるカワイイ。
1935 ウィリアム・A・サイター パンドロ・S・バーマン ロバータNozomi Shirakawa
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The Gay Divorcee
冒頭の「Don't Let It Bother You」でのアステアの“指ダンス”がけっこう好き。 また、同じ曲で船上の舞台で踊らされるシーンで、タップではあるが状況的にタップシューズではないということに忠実に(?)バタバタとした革靴の音にしてあるのが面白い。 RKO期のアステアの作品に対してはストーリーの薄さがよく指摘されるが、このての「勘違いもの」は会話の内容などを入り組ませて練っているのでニヤニヤできる楽しさがあると思う。 アステアとジンジャーがお互いの勘違いを解き“軟禁”からの脱出を画策するシーン、 " I don't care what you did as a boy."(意訳;「あなたにも男の子だった頃があるの?」) のセリフまわしがとても自然で大好き。ああいう演出はどうやってつけるのだろう? 「A Needle in a Haystack」が「No Strings」に、「Night and Day」が「Cheek to Cheek」に、翌年の『トップ・ハット』で洗練・昇華される。
1934 マーク・サンドリッチ パンドロ・S・バーマン コンチネンタルNozomi Shirakawa