-
鉱物標本 コバルトカルサイト(Cobalt-bearing Calcite)
別名:Aphrodite Stone 産地:Bou Azzer Mine, Ouisselsate Caïdat, Amerzgane Cercle, Ouarzazate Province, Drâa-Tafilalet Region, Morocco コバルトを含有することでビビッドピンクまたはマゼンタピンクと言われる鮮やかなピンク色を呈する様になったカルサイト(方解石、CaCO3)の変種。カルサイトとスフェロコバルタイト(コバルト方解石、CoCO3)の固溶体とも定義出来る。 元々はイタリア、トスカーナ地方にあるCape Calamita鉱山のVallone stopeという場所で発見されたものがコバルトカルサイトとして言及されていた。 宝石名としてはアフロディーテなどとも呼ばれており、産地はコンゴ、モロッコ、スペインなどが有名である。 本標本はモロッコのBou Azzer産で、この地域は石炭紀の地層に由来するモロッコのコバルト鉱山地帯であり、コバルトカルサイト以外にもコバルトドロマイトやエリスライト(コバルト華)(*1)などのコバルト鉱物が多く産出している。 2021年3月、ミネラルマルシェにて購入。色はピンクというより紫色寄り。実はケースに収まりきらなくて母岩のカルサイト部分を若干削った。 *1:エリスライト →鉱物標本 エリスライト(Erythrite)
鉱物標本 3 ガラス光沢~亜ガラス光沢、樹脂光沢、蝋光沢、真珠光沢たじ
-
鉱物標本 エリスライト(Erythrite)
別名:コバルト華 産地:Bon Azer District, Tazenakht, Morocco コバルト-ニッケル-ヒ素の酸化帯に紅色~桃色の結晶が花びらの様に集まって産出するヒ酸塩の二次鉱物。 エリスライトのCoがNiに置換した緑色鉱物はアンナベルガイト(ニッケル華)と呼ばれ、両者は固溶体を形成する。CoとNiが1:1の比率では桃色を呈するらしい。 1832にFrançois Sulpice Beaudantによってギリシャ語で紅色を意味する"έρυθρος(erythros)"から命名された。 工業的な用途は無いが、二次鉱物という形で地表付近に産出するため、コバルト鉱山を探す上での指標になる。 2021年、ミネラルマルシェにて購入。
鉱物標本 1.5~2.5 亜ガラス光沢、蝋光沢、真珠光沢、鈍光沢、土光沢たじ
-
鉱物標本 バナディナイト(Vanadinite)
別名:バナジン鉛鉱、褐鉛鉱 産地:Mibladen mining district, Midelt Province, Drâa-Tafilalet Region, Morocco 赤い六角形の板状結晶が特徴の含バナジウム鉱石。カルノー石やバナジン雲母と共に産業用バナジウムの主要な鉱石鉱物となっている。 乾燥気候帯の鉛鉱床の酸化帯にて母岩のケイ酸塩鉱物から侵出した硫化バナジウムが変質して生成されたと考えられている。ミメタイト(ミメット鉱)(*1)およびパイロモルファイト(緑鉛鉱)(*2)と固溶体を形成し、1966年にBakerが合成によって3つの鉱物が完全な系列(同構造)にあることを示した。 バナディナイトは1801年にメキシコ、イダルゴ州、ジマパンで鉱山学校の教授をしていた化学者Andrés Manuel Del Ríoにより発見され、彼はこの鉱物を茶鉛"brown lead"と呼称した。その後、彼はこの鉱物からクロムに似た未知の元素を発見してパンクロミウム"panchromium"と命名。さらにこの元素の化合物を加熱した所、鮮やかな赤色になったことからエリスロニウム"erythronium"と改名してフランスの研究機関に鑑定依頼を出した。しかし、研究機関からはクロム化合物であると鑑定されてしまったため新元素として公認されず、彼もそれを納得してしまった。 その後、1830年にスウェーデンの化学者Nils Gabriel Sefströmが軟鉄中から発見した新元素が美しい多彩な色に着色する性質を有していたことからスカンジナビア神話の愛と美の女神バナジス"Vanadis"に因んでバナジウムと命名した。後にドイツの化学者Friedrich WöhlerがDel Ríoの発見したエリスロニウムがバナジウムと同じ元素であったことを確認、1838年にジマパン鉱山で茶鉛が再発見されたことで高いバナジウム含有量からvanadiniteと再命名された。 このバナディナイトから産業用のバナジウムを抽出する際は 1.バナディナイトをNaClまたはNa2CO3と共に加熱してバナジン酸Naを生成。 2.水に溶解させ、塩化アンモニウムで処理してメタバナジン酸アンモニウムの橙色沈殿を得る。 3.沈殿を加熱溶融して粗五酸化バナジウムに分解した後、カルシウムで還元して純バナジウムとして抽出。 といった手法が一般的に用いられる。 本標本は2019年にミネラルマルシェにて購入。バナディナイトの産地として世界的に有名なモロッコ、ミブラデン産の標本である。ミブラデンのバナディナイトはジュラ紀前期の石灰岩・苦灰岩に層状に堆積したガレナ(方鉛鉱)やバライト(重晶石)と共に産出し、本標本の白い母岩部分もバライトであると思われる。 *1:ミメタイト →鉱物標本 ミメタイト(Mimetite) *2:パイロモルファイト →鉱物標本 パイロモルファイト(Pyromorphite)
鉱物標本 褐鉛鉱 3~4たじ
-
鉱物標本 アズライト(Azurite)
別名:藍銅鉱、紺青、mountain blue 産地:Morocco ラピスラズリやラズライト同様に古代ペルシャ語で蒼穹を意味する"lazhward"が語源。1824年にFrançois Sulpice Beudantによって鉱物名が"azurite"へと正式に変更された。 マラカイトと同様にCu2+からなる塩基性炭酸塩銅であり、d-d遷移によって緑~青色を呈するCu2+塩の中でも特に深い青色を示す。そのため古くから世界各地で青色顔料として用いられ、プルシャンブルーが人工合成されて江戸時代に日本に輸入されるまでは日本でも紺青の名前で利用されていた。 組成式から分かる通り、マラカイトよりも若干炭酸リッチであり、その差は生成条件の違いであり、マラカイトが炭酸カルシウム等から供給されるアルカリ条件下で生成するのに対し、アズライトはアルカリ分が減ってCO2リッチになった弱酸性~弱アルカリ条件下で生成する。そのためアズライトはマラカイトよりも希産であり、かつマラカイトと共に産出する傾向が多い。顔料として利用する場合はマラカイトと選り分ける手間がかかるため、より希少となった。因みにアズライトとマラカイトが一緒になったものはアズロマラカイトと呼ばれ、共産鉱物として有名である。 2010年代、科博にて購入。
鉱物標本 3.5~4 ガラス光沢たじ