-
Swell Maps “Mayday Signals”
やっぱり買っちゃうよねー、Swell Mapsの秘蔵音源!パンクの前に既に「ポスト」パンクであったSwell Maps。その1976年〜1979年の間に、自分達のガレージやベッドルームやらスタジオやらで録音された曲(或いは曲の素)を、メンバーだったJowe Headがコンパイルした2枚組のセルフ・コンピ・アルバムが、今回ご紹介する”Mayday Signals”です。殆どが短い曲で、これらが今後、曲になっていくのだとすると、結構、スリリングな内容になっているようです。因みに、Swell Mapsのバイオグラフィーは既に書いてありますが、多少、付け加えることもありますので、そこら辺だけ少し。ちょっと復習になりますが、先ず、メンバーはNikki Sudden (本名Adrian Nicholas Godfrey), Phones Sportsman (本名David Barrington), Jowe Head (本名Stephen John Bird), Epic Soundtracks (本名Kevin Paul Godfrey)で、John CockrillやBiggles Books (本名Richard Earl)も加わります(因みに、NikkiとEpicは本当の兄弟です)。結成は1972年、英国Birminghamでとなっていますが、Nikki Suddenに寄れば、彼が、実際に音楽(T. Rex “Telegram Sam”)を意識的に聴き始めたのが、1972年初頭で、彼は直ぐに同級生から中古アコギを購入し、翌週には、Phones Sportsmanと意気投合して、演り始めます。彼の弟Epic SoundtracksはDrsがやりたくて、手作りのドラマキットを組み立てており、その1年後、漸くスネアを購入します。この3人は、最初、Sacred Mashroomと名乗っていますが、EpicとPhonesでは、CalicoとかOdysseyと名乗ったり、NikkiとPhonesでは、MithrilとかThe Black Ridersとか名乗ったりしています。そこに、1973年に、Nikkiの親友Jowe Head(彼もこの時に同級生から中古Gを購入)が、その直ぐ後にEpicの友達のJohn Cockrillが加わって、再びSacred Mushroomとなります。Joweに言わせると、Johnは、ちゃんとGレッスンを受けているように思えたらしいです。しかしながら、NikkiとJoweで、Cardboard Giantになったり、彼等にEpicを加えて、Fall of Eaglesを名乗ったり、Epic, Phones, JohnとPhonesの同級生David WrightではCivil Serviceを名乗ったりして、他にもThe Sheep PoliceとかCirkusとかIncredible HulkとかFountain HeadとかIronとかを色々な組合せで名乗って、ちょこちょこセッションしたり録音したりしています。そうして、最後に、Phonesの友達でKing Edward VI学校出身のBigglesが加わり、1974年夏に、NikkiとJoweは漸く学校を卒業し、Nikkiは数ヶ月、Gを練習した後に、Londonに出稼ぎに行きます。そこで、新しい音楽(パンクなど)とそのムーブメントの熱量に当てられたNikkiは、地元に戻り、Bigglesの親のガレージで演奏・録音を本格的に始めます(その時も、The Nozels, The Himalayas, Sacred Mushroom, The Sausage Rolls等と名乗っています)。それで、NikkiとEpicとJoweで、Swell Maps名義で最初にギグを演ったのは、1977年だそうで、ライブ・デビューは意外と遅かったのだなと思います。そして、Swell Mapsの最初の録音の時には、この3人とPhonesがGで参加しています。また、彼らはSwell Mapsのレコードがリリースされるまでは、それ以降一度もライブをやってはいないのです。彼等をLondonに呼ぶような話もあったらしいのですが、彼等にはプロになるだけのお金が無く、また機材も小さなラジオ付きアンプとスピーカー、中古のGやB、スネアとハイハットだけのDrs、そこら辺にある物を録音する古びたマイクがあっただけだったので、彼等はずっとBirminghamで活動を続けていましたが、1980年に、ベルギー、蘭、伊とツアーを敢行し、その後、バンドは解散してしまいます。その直後の1981年に、2枚組のアーカイブ・アルバム”Whatever Happens Next...”がリリースされていますが、これは再発はされていません。解散後、NikkiやEpic等は、ソロ活動をしていますが、Epic Soundtracksは、1997年に、38歳と言う若さで亡くなっており、死因は不明です。また、Nikki Suddenも2006年3月に、NYCのホテルの部屋で他界しており、49歳と言う若さでした。一方、Phonesは、1980年代から地質学者として働いており、音楽界からは脚を洗っていますが、2008年から数枚のCDR作品を出しています。 以上が、今回、分かったSwell Mapsのバイオグラフィーの一部ですが、本作品では、LP1は、1976年〜1977年に、西Mudlandsの地元のガレージやベッドルーム、リビングで録音された音源から編集・収録されており、LP2は、C1が1977年にCambridgeのSpaceward studioで、C2-D5が1978-1979年にLeamington温泉のWoodbine studioで録音された音源となり、それぞれ、Mike KempとJohn Riversがエンジニアとして付いての録音となっています。D6, D7については、クレジットされておらず、出所不明です。それでは、各曲についてご紹介していきましょう。 ◼️LP1 ★A1 “Intro / Sweet And Sour Extract” (0:10)は、ピアノソロの断片です。 ★A2 “Almost Grown” (1:21)は、アコギとBとガラクタDrsによるMaps流ロッケンローな曲ですが、実はChuck Berryのカバーです。 ★A3 “City Boys (Dresden Style)” (2:23)は、Mapsの代表曲の元曲で、やっぱりこのぶっ壊れ方はイカしてます。 ★A4 “Sahara” (2:11)は、ディレイを掛けたGと物音系Percに、チャルメラのようなFluteが吹き荒れる曲です。 ★A5 “One Of The Crowd” (2:15)は、G, B, DrsによるMaps流ロッケンローなノリの良い曲で、ヘロったVoもイカしてます! ★A6 “Wireless” (3:38)は、ラジオノイズと反復するピアノの合奏で、Gらしき音も微かに聴取可。 ★A7 “Ripped And Torn” (1:55)も、Maps代表曲の原曲で、ぶっ壊れており、最後のGもイカしています。 ★A8 “God Save The Queen” (0:33)は、Sex Pistolsの曲ではなく、アコギとGのせめぎ合いで、意味不明! ★A9 “Platinum Blind” (1:02)は、Drsと物音系Percの乱れ打ちから成る曲で、Lo-Fiな録音により面白さ倍増です。 ★A10 “Harvist” (0:38)は、反復するGに自在に上下するBの一騎打ちですね。訳分からん! ★A11 “Gramofonica” (1:43)は、鼻歌付き、タンテの誤用と物音系Percの合奏で、もう意味不明です。 ★B1 “Read About Seymour” (1:36)も、Maps代表曲の演奏なんですが、このヘナヘナさがサイコー!名曲ですね。 ★B2 “Shubunkin” (1:09)では、変拍子のリズム隊&Gに、更に歪んだGを弾きまくってます。 ★B3 “Trade Kingdom” (2:20)では、アコギとハーモニカとハイハットをバックに、Nikkiが音痴に歌っており、もう大抵の事では怒りません。 ★B4 “Pets’ Corner” (2:24)は、スローテンポの怪しげな曲で、ワウGやJoweの抑制的なVoも不穏な雰囲気を醸し出しています。 ★B5 “Fashion Cult (Opaque)” (2:12)も、Maps流ロッケンローな曲で、痺れます!敢えてLo-Fiと言うより元々がそうしか出来なかったと言う意味で元祖ですね。 ★B6 “Plankton” (1:29)は、Gの単音弾き、ホワイトノイズ、コーラスとB、そしてB, G, ,Drsによる合奏。これってMusique Concreteじゃないか? ★B7 “Johnny Seven” (1:32)は、Maps流サーフ・ロックとも言うべき曲で、何故か泣けてきます。 ★B8 “Below Number One” (3:43)では、Gらしき持続音に微かな物音系Percが絡んでいますが、縦笛のようなFluteや歪みまくったGに移行していきます。 ★B9 “Plumbing / Radio Ten / Here’s The Cupboard” (1:06)は、Drsや物音系Perc、缶ドラム、エコーの掛かった叫び声(?)の狂演で、何でもありですね。 ★B10 “Organism” (1:08)では、悲しげな足踏みオルガンの調べに、微かに唸るようなVoが聴こえます。 ★B11 “Sweet And Sour Reprise” (2:02)は、アコギで始まったかと思うと、G, B, DrsによるMaps流GSロッケンローをぶちかましてきて、最高! ◼️LP2 ★C1 “Vertical Slum” (1:13)も、Maps代表曲の演奏で、音も良く、また元気一杯です。サイコー! ★C2 “Avalanche Prelude” (2:44)は、スローテンポのDrsと通奏低音にシタール様のGが乗っかっているインスト曲で、心地良いです。 ★C3 “International Rescue” (2:27)も、Maps代表曲ですが、VoはJoweがやっており、印象が違いますね。 ★C4 “Deliverous Mistail” (4:09)は、執拗に反復するアルペジオGとリズム隊が変拍子で不穏な空気を出しているダークな曲で、Mapsにしては珍しいです。なお、Mayo Thompsonが独白で参加。 ★C5 “Armadillo” (3:41)も、これぞMapsと言う代表曲の演奏で、コーラスも含めて最高にして最強! ★C6 “Avalanche Part 2” (1:33)は、単調なDrsに不穏なフレーズのBと呟くJoweのVoから成る曲です。 ★C7 “Off The Beach” (2:22)は、これぞMaps流ロックとも言うべきノリのよい曲で、やはりNikkiのVoだと安心できます。最後にStylophoneが聴こえます。 ★D1 “Drop In The Ocean” (2:13)は、ドラムマシンとSynth-Bを使ったウエスタン調の曲で、Mapsにしては珍しい曲調です。 ★D2 “Whatever Happens Next (Acoustic)” (3:00)では、アコギとハイハットとピアノを使った伴奏に、バラライカも入り、3人でのVoも良く映えています。 ★D3 “Elegia Pt.2” (1:57)では、重めのハンマービートに弾きまくるGが、何となくCanを想起させます。 ★D4 “Bandits 1-5” (2:44)は、Wireの”Pink Flag”を想起させるMaps流ミニマル/ハードコアパンクな曲ですが、JoweのVoはヘナヘナです。 ★D5 “Secret Island Choir” (0:38)は、代表曲のアカペラ・ヴァージョンで、貴重。 ★D6 “Big Cake Over America” (1:55)は、シェイカーとBが何となくアメリカンですが、2人のVoは馬鹿にしているようで、Mapsにしては珍しくシンセも使用。 ★D7 “Tibetan Bedsprings” (3:19)は、ワウGと反復するBとハイハット、その間を埋める柔らかいシンセ音から成る曲で、シンセはJ.G. Thirlwellが担当。 確かに、Swell Mapsは最初から自由であったと分かる音源が揃っています。噂で言われているように、彼等がT. RexとCan等のGerman Rockから影響を受けたと言うのも納得です。特にLP1の内容は、彼等の初期衝動による破壊的作曲/演奏の萌芽が含まれており、非常に面白かったです。それに対して、LP2は音質も良好で、機材的にも新たなことに挑戦しており、彼等の許容量の大きさを実感できました。まあ、マニア向けかもしれませんが、この作品には、Swell Maps誕生/成熟の秘密があるように思えますので、そこら辺を知りたい方、或いは宅録のアイデアを模索している方には是非とも聴いて頂きたいですね。そうじゃなくてもマスト❗️な作品。 C4 “Deliverous Mistail” (4:09) https://youtu.be/aFvTzpoZrc8?si=SOJPo_8A0n6ShMzR [full album] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_lIrkpy_8jNmUwo5SodAbDlDAGFun4LOm8&si=7f94cSpT9fmhUQPr #SwellMaps #MaydaySignals #EasyActionRecords #SelfCompilationAlbum #2LPs #1976-1977年 #宅録 #StudioRecording #1977-1979年 #PostPunk #Experimental #DIYPunk #NikkiSudden #PhonesSportsman #JoweHead #EpicSoundtracks #JohnCockrill #BigglesBooks #Guests #MayoThompson #J.G.Thirlwell #Cover #ChuckBerry
Post Punk / Experimental Easy Action Records 3740円Dr K2
-
Colin Newman “Provisionally Entitled The Singing Fish”
ご存知、WireのVo兼G兼ソングライターであるColin Newmanのソロアルバム第二弾“Provisionally Entitled The Singing Fish”の登場です。Colin NewmanのバイオグラフィーについてはWireの項目等をが参照下さい。それで、このアルバムは、1980年にWireが一時的に解散した翌年に、Newmanがほぼほぼ全部のパートを録音して作り上げた作品です(因みに、1984年にWireは再結成されています)。彼のファーストソロアルバム”A-Z”は1980年にリリースされており、それには、This Mortal CoilやGary Newmanがカバーした曲も含まれています。今回のセカンドアルバムでは、全曲、ほぼほぼインスト曲(ヴォイスは使われていますが、歌詞は無いです)で、しかも、曲名は全て”Fish(数字)”と言う徹底振り。またジャケも極めて空虚な印象で、それこそWireの”154”のジャケを思わせるシュールなものとなっています。なお、B3 “Fish 9”ではWireのRobert Gotbedがドラムで参加しています。どの曲も割とミニマルかつ抽象的な展開で、淡々と流れて行きますが、何処かしらWireで聴くことの出来たギターの音色とかを感じますね。Newmanはギター以外にも、Piano, A-G, B, Mouth Noise (Voices), Drs(DrumMachineかも?), Sax等も演奏しており、その多彩振りが遺憾無く発揮されています。B面最後に、ちょっとしたギミックがありますが、ネタバレになってしまうので、聴いてみて下さい。そんな訳で、本作品は、独自かつ孤高の出来栄えとなっており、現在のミニマル・ミュージック(或いはミニマルなロック)の礎の一つとしても考えられます。なので、そう言う音楽の限定を探りたい方にはお勧めします。また、NewmanやWireのファンにはマストな一枚ですね。 B2 “Fish 8” https://youtu.be/0RRzYH5upFk [full album] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_m3wg5JuawqKYy7_-xrbhfcc4juurvfRDE #ColinNewman #ProvisionallyEntitledTheSingingFish #4AD #Wire #Minimal #Instrumental #Experimental #PostPunk #SecondAlbum #SoloAlbum #Surrealistic #AllInstruments #RobertGotbed
Post Punk / Experimental 4AD 不明Dr K2
-
Clock DVA “2nd”
やっぱり探しちゃうよね。と言う訳で、Clock DVAの再登場です。これ、Discogs見ると、6枚組LPなんですが、私が入手したのは2枚組でした。これはレーベルが特別にプレスし直した作品みたいです。Clock DVAについては、前回、紹介しましたので、ここでは簡単に。1978年に英国Sheffieldにて、Adolphus "Adi" NewtonとSteven "Judd" Turnerによって結成されています。この時のメンバーはAdiに加えて、Judd Turner (B), David J. Hammond (G), Roger Quail (Drs), Charlie Collins (Sax, Clarinet)でした。Adiらは元々実験的電子音楽をやりたかったので、当初よりテープループやEMS Synthi Eなども使ってました。前回紹介したアルバム”Thirst”の後、彼等はミュージック・コンクレートも取り入れ、インスト・シングル”4 Hours”をリリースしますが、1981年に、Juddがドラッグのオーバードーズで死亡しています。それで、バンドはその年に一度解散しています。Adiは再度メンバーを集めて、1983年に、アルバム”Advantage”をリリース。音楽評論家からは「最もパワフルなダンスミュージックだ」と肯定的な評価を得ます。1983年に欧州ツアー後、Adiはより実験的な音楽を目指す為に、The Anti-Groupを結成します。1987年に、AdiはClock DVAを再活性化する為に、Dean DennisとPaul Browseを加入させて、The Anti-Groupで得たサンプリングを使う為にPCを使用し始めます。批評家は「Cyberpunkの先駆者」と評しています。そうして、1989年にアルバム”Buried Dreams”をリリース。一方で、DeanとPaulが脱退しましたので、Robert E. Bakerが加入し、1992年に、アルバム”Man-Amplified“をリリース。Adi Newton, Robert E. Bakerに加えて、Andrew McKenzie (Haflar Trio)とAri Newtonと共に欧州ツアーをやっています。独逸のVinyl On Demandがアンソロジー・アルバム”Collective”とボックスセットを1994年にリリースしています。この頃、Adiは、Brian Williams, Graeme Revell (SPK)とPaul Haslingerとコラボし始めますが、Clock DVAやAdiの名前は音楽シーンで一時期聞かれなくなります。2008年に、AdiはまたもやClock DVAを再活性化する為に彼のパートナーJane Radion Newtonと共に活動を始めます。2011年になると、Adi, Maurizio "TeZ" MartinucciとShara Vasilenkoと言うラインナップで、欧州の様々な電子音楽フェスやライブハウスでライブ活動を始めます。その一方で、独逸のVinyl On Demandが、2012年1月に、1978-1980年のClock DVAの曲をコンパイルした”Horology”をリリースするとアナウンスしました。そして、今でも、Clock DVAは活動中です。 やっとここまできました。そのVinyl On Demandは確かに6枚組をリリースしていますが、本作品は、その中の2枚のLPを抜粋したもので、オフィシャル・リリースです。この時のメンバーは、Adi Newton (Vo, Tapes, EMS Synth), Steven J. Turner (B), David J. Tyme (G), Simon E. Kemp (Synth, Electronic Perc)となっています。単調なリズムボックスと言うかパルスに合わせて、ベースとシンセ或いはギターがつま弾かれ、それにAdiの焦燥感溢れるVoが乗ると言う構成で、当時としてはシンセが前面に出ていたり、シンセのパルス音に合わせての演奏は珍しかったのでは?と思いますね。まあ工業都市Sheffieldのバンドで、かつCabsとも関係があったり、AdiがThe Futureのメンバーだったりしたこともあると考えると、地味ながら、こう言う音楽を作ることになったのも分かりますね。そう、ちょうど初期Human Leagueと初期Cabsの良いとこ取りみたいな(こう言っちゃうと元も子もないないんですが)。両者と比べると、ギターやベースも使っているので、その分、「人間味(?)」と言うか「慕情(?)」を感じるんですが、それでもAdiのVoは覚め切ってるようで、時代と言うか当時の状況を感じさせられます。そんなClock DVAの初期の音楽を聴いて、1980年前後のSheffieldの音楽シーンを想像してみて下さい。 A面のみ https://youtu.be/0trGVy6EefE #ClockDVA #2nd #VinylOnDemand #Industrial #AdiNewton #JuddTurner #TheFuture #CabaretVoltaire #Experimental
Post Punk / Experimental Vinyl on Demand 不明Dr K2
-
Alternative TV “Vibing Up The Senile Man (Part One)”
Punkでありながら、既にPost PunkであったAlternative TV (ATV)。それがこのアルバムによって決定付けられたように思います。ATVのバイオグラフィーについては前回、書きましたので、そちらを参考にして下さい。本作品でのATVのメンバーはMark PerryとDennis Burnsの2人のみで、ゲストにT.G.のGenesis P-Orridge (Perc), Mick Linehan (G), Steve Jameson (Vo)が数曲参加しているだけです。MarkとDennisはそれら以外の楽器とVoを担当しています。まあ、それからも分かるように、ビートを刻むドラムもなく、またパンクっぽいギターもなく、ベース或いはピアノとかとVoで殆どの曲が成り立っています。時には、チェロやトイピアノ或いはリコーダーや短波ラジオも使われています。曲には明瞭なメロディも無く、適当に弾かれる楽器とスポークンに近いMarkのVoから成ります。ヘタウマと言えば、聞こえが良いですが、凄くプリミティブで簡素な音楽です。恐らく、このような実験的アルバムをセカンドで出したMark Perryは確信犯でしょう。T.G.のGenesisが関係しているのも、この作品に大きい影響が有りそうです。パンクの「バ」の字もなく、ただただ緩くスカスカな音楽(?)が流れています。ファーストでは、まだパンクっぽい音楽であったり、”Action Time Vision”のような割とキャッチーな曲がシングルでリリースされたりしたのとは、逆転の発想ですが、ここら辺まではMarkの読み通りでしようね(後にMarkはフリージャズに影響を受けたんだと言ってます)。録音時期も殆ど一緒なので。そんなギャップを味わいたい方は、一度、聴いてみても良いかも⁉️因みに、英国ポップなミュージック雑誌Mojoでは「読者が選ぶ最も奇妙な音楽50選」で19位になっています。 “The Good Missionary” https://youtu.be/V5Tl37wgAwM #AlternativeTV #VibingUpTheSenileMan(PartOne) #DeptfordFunCityRecords #PostPunk #Experimental #MarkPerry #DennisBurns #GenesisP-Orridge #SecondAlbum
Post Punk / Experimental Deptford Fun City Records 1980円Dr K2
-
The Raincoats “Odyshape”
その流れで、これはThe Raincoatsのセカンド・アルバム”Odyshape”の登場です。が!しかし、これはもう別バンドとして捉えた方が良いかもです。この時のメンバーはAna da Silva (Vo, G, Shruti box, Kalimba, B, Perc, Harmonica)、Gina Birch (Vo, B, G, Balafon), Vicky Aspinall (Vo, G, B, Vln, Piano)で、ゲストにはGeorgie Born (Cello), Dick O’Dell (Perc), Shirley O'Loughlin (Perc), Kadir Durvesh Shehnai (Perc), Ingrid Weiss (Perc, Dr), Robert Wyatt (Dr: from Soft Machine), Richard Dudanski (Dr), Charles Hayward (Dr: from This Heat)が参加しています。よりフリーフォームになった演奏で、ファーストアルバムのようなプリミティブなポップソングと言うよりも、アヴァン・ポップと言った言葉がしっくりくる音楽です。ベースがダビーであったり、英国フォークの様式、多数の中古パーカッション(1980年のUSツアーの時、骨董市で購入したらしいです)によるポリリズムなど、そこかしこに先進的な部分が見え隠れします。また、民族音楽のフィールド録音などにも影響を受けたらしいです。多分、ファーストアルバムの後で、これを聴いたリスナーは驚くでしょう。そして何より生楽器が多用されている点も、ポスト・パンクの時代で、他のバンドではシンセが多用されてきているのに反抗した、彼女らの特異的な一面と言えますね。そんな彼女らの極上にして、手に届かない程自由な音楽は如何でしようか?因みに、この時期のインタビューでは「ロックンロールの基本的なテーマは、男と女の間で起こっていることです……ロックンロールは黒人の音楽に基づいています。そして、それは女性の排除と、黒人のゲットー化に基づいています。だからこそ、私たちのやりたいこととロックンロールの伝統の間に少し距離を置きたいのです」と答えています。なる程ね!よーし、Let’s Listen!!!! https://youtu.be/PRP8nkaxMkQ #TheRaincoats #Odyshape #RoughTrade #PostPunk #FreeForm #AvantPop #AnaDaSilva #GinaBirch #VickyAspinall #RichardDudanski #CharlesHayward #RobertWyatt
Post Punk / Experimental Rough Trade 不明。Dr K2