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スリッピング・イントゥー・クリスマス/レオン・ラッセル
平和キャンペーンの一環として、ドングリを植える活動をしていた夫妻が「ステューボール」の替え歌に等しいクリスマス・ソングを発表したのは1971年。このレコードは翌年にシェルター・レーベルからリリースされました。 バングラ・デシュ・コンサートの出演、ソロ・アルバムとしてはサードの「カーニー」の後というタイミングになるようです。こちらはラッセル節炸裂の渋いスローブルース仕様で、ヒット性や後年に聴かれ続けるような要素は皆無です。しかしながらこの渋さが実に良い。ラッセルのシェルター時代のシングルとしては比較的珍しい1枚かもしれません。特にプレミアがついているわけでもないようですが。何故か両面がモノラルで、プロコルのファーストじゃないけれど、リリースを急ぐあまりこうしたのかと、勘繰ることも可能です。クリスマス・シーズン商戦を狙ってレコードを発売するならわしがありますから。紙ジャケットで全てリイシューされる彼のアルバムの中にもボーナス・トラックとして収録はされないようで残念ですが。
ブルースロック 7" Single シェルター揖斐是方
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カンパニー1 デレク・ベイリー、エヴァン・パーカー、トリスタン・ホンジンガー 国内盤初回帯付LP
フリー・アンド・プログレッシヴ・ミュージックとして1978-9年にビクター音楽産業から発売された一枚です。このシリーズでは他にベイリーのソロ、スティーブ・レイシー、アンソニー・ブラクストン、ロスコー・ミッチェル なども出ていたようですが、販売実数はいったいどのくらいだったのでしょうか?豊かな時代でなければ実験的・前衛的な表現は、メジャーからはなかなか「発売・発表」の機会を与えられないものですが。ベイリーのギターにパーカーのサックス、ホンジンガーのチェロ、アルテナのベースという布陣で、あくまで個人的な印象に過ぎませんが、これが一般的なフリー・ジャズとは聴こえないのです。いや、厳密にいうと、フリー・ジャズとも呼べるのでしょうが、ちょっと印象が異なる。フリー・ミュージックというのでしょうか、いや、ミュージックと呼ばなくてもいいのかもしれない笑。楽器を発音しつづけあう駆け引きの記録。例によって、この種のレコードにつきものの、清水俊彦、間章両氏によるスクエアかつシリアスを極めた6ページに及ぶライナーノート、ベイリーの組織論と運動論云々と、いつも通りの観念論でレコードを側面から支えているのでした。面白い時代だったといえましょう。
イムプロヴィゼイション LP, Album ビクター揖斐是方
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『ストリング・ドリヴン・シング』『占い師のヴァイオリン』 1973年の英国アンダーグラウンド・ロック・バンド
カリズマ・レーベルからのリリースですし、一応はプログレッシヴ・ロック・バンドとカテゴライズされているようですが、もっとダークでエモーショナルな「アンダーグラウンド」然としたサウンドの非常に特異な個性を持ったバンドでした。これは厳密にはセカンド・アルバムにあたり、カリズマからのいわばメジャー・デビュー盤といったところでしょうか。国内盤はシングルジャケットですが、英国オリジナルはゲートフォールド仕様。デザインはヒプノシス。特徴はなんといってもバンド名が示す通りのヴァイオリンをフィーチャーしているところで、ドラマーが正式にメンバーとなるのはこの次の次のアルバムあたりから。結構キャッチーなメロディの歌ものが印象に残る、知る人ぞ知るブリティッシュ・ロックの隠れた佳作といえるでしょう。アルバムでは「フェアグラウンド」と題されたナンバーもシングルの邦題は「占い師のヴァオリン」。ヴァイオリンをフィーチャーしたバンドといえば、コーマスやサード・イアー・バンド、コックニー・レベルを想起しますが、ここまでバンド名に直球でそれを反映させていたのは、当然彼等だけでした。
アンダーグラウンド・ロック LP, 7inch カリズマ揖斐是方
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三島由紀夫への弔魂歌『憂国』伊藤久男・歌 児玉誉士夫・作詞 古賀政男・作曲
「ニッポンはこれでいいのかーっ!」という命掛けの絶叫に、国民は「いいですよ別に」と笑顔で答えたに等しい、あのお馴染みの事件から半世紀余、しかし三島由紀夫の問いかけは今日いよいよ重く響き渡ります。このレコードは事件から一年後、1971年11月に発売された三島と森田への弔いの歌。歌うは「イヨマンテの夜」の、あの伊藤久男です。作曲が古賀政男ですから、これもれっきとした古賀メロディーといえるでしょう。しかしこの内容ですから、あまり表立ったところでは顧みられていないのかもしれませんが、その辺の事情はどうなんでしょうかね。「筆に尽くせぬ憂国を 剣に替えて叫びたり」と作詞したのは、自称CIAエージェントにして任侠右翼の巨魁、もちろん代表作は「ロッキード事件」の、あの児玉誉士夫。ただ、「剣に替えて」じゃなくて「刃に替えて」にしたほうがよかったのではないでしょうか。ジャケットには7ページにわたって、B面の曲ともどもこの曲の舞のための振り付け写真が。三島由紀夫事件に関して、こうした形でのシンパシーを表現した作品は、他にあまりないのではと思います。その意味では極めて貴重な楽曲といえるでしょう。#三島由紀夫
ディープ歌謡 7" Single コロムビア揖斐是方
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暗い夜 b/w テスト・パターン 古谷充とザ・フレッシュメン
クール・ジャズという言葉がありますが、本当に「クール」な日本人によるジャズとはこういう曲を指すのではないかと思います。普段はジャズ・ボーカルものなど全く聴かないのですが、この曲だけは別格。何度聴いても、昭和の大人たちによる、大人のための音楽であると痛感します。確か小谷氏が20代中ごろの録音のはずなのですが、そのスモーキーな歌声のすばらしさ。言うまでもなく関西ジャズ・シーンの重鎮だった小谷氏、一昨年の逝去が惜しまれます。B面の「テスト・パターン」の歌詞、「夕暮れ前のテレビに映る テスト・パターンのその顔」この曲のリリース当時はまだテレビ放送の黎明期で、テレビの放送開始は夕方からだったはずなのでこういう歌詞。これは誤った解釈だろうか。ちょっと古すぎてそこは定かではありません笑。いずれにしても、日本のジャズ史に残る極めてモダンかつユニークなキラー・チューンだといえるでしょう。
ジャズ 7" Single テイチク揖斐是方