-
悪魔の調べ~ミステリー映画の世界~
横溝正史原作の金田一耕助映画の音楽を集大成した徳用盤(作曲者は、田辺信一、芥川也寸志、大野雄二、大林宣彦、村井邦彦)。と言っても、あの片岡千恵蔵御大による映画とか高倉健主演とか、そんないかがわしくも見てみたい映画の楽曲は含まれていない。石坂浩二、渥美清、中尾彬は取り揃えましたが、古谷一行と西田敏行は漏れてしまいました。金田一俳優の一方の雄である古谷一行も、映画は一本だけですからねぇ。しかも、あんな出来では……(ただ、「何故、犯行を阻止できないか」に対する言い訳は素晴らしかったと思います、皮肉でも嫌味でもなく)。そんな映画にしてしまった大林宣彦は、何故か曲が採用されてますが。しかし、『悪魔が来りて笛を吹く』(音楽担当は尺八の大家、人間国宝の山本邦山!)が入ってないのは痛い。私がこよなく愛するテーマ曲「黄金のフルート」が聞けないのは実に痛い。更に、版権の関係上、すべてがオリジナル音源ではない(最も有名と思われる『犬神家の一族』がオリジナルじゃないのも、これまた痛い……)けれど、カバー曲でもオリジナルにまったく遜色がなく、クオリティが高いので、これはズバリ買い、でしょう。本当に美しい旋律です。身を委ねているだけで幸せです。今回収録された作品のほとんどを監督した市川崑は、こういうメロディアスな曲が仕上がってきたのを聞いて、あまり好ましくは感じなかったらしい(もっと現代音楽っぽい方が合うと思ってたらしい)ですが、この路線で正解でしたね。でも、せっかくなら、ジャケットは杉本一文描き下ろしでお願いしたかった。いや、なんとなく、それっぽい絵ではあるんですけどね。
サントラ 日本コロムビア 1996年大吉GUY
-
モンスター・クラブ・コンパイル -ゴジラ・ガメラ・ギララ 史上最大の音楽決戦!-
帯に「モンスター・ムービー・レア・グルーヴ・バトル!!」とあります。「50~70年代のSFXならぬ昭和特撮サウンドが鼓膜を直撃するカルトコンピレーション」というわけで、これは隠れた大名盤。いや、これを隠れたままにしておくなんて、日本音楽界の一大損失です。とりあえず、各小学校に一枚は常備するよう手配して、子どもたちを洗脳……もとい教育しなければなりません。 「昭和特撮サウンド」などと言うと、例の伊福部昭のマーチ等を想像されるかもしれませんが、まったく違います。もちろん、あれはあれで燃えるんですが、このアルバムでは、怪獣なんて雰囲気は全然感じ取れません。勇壮な戦闘音楽もありません。悲劇的なメロディーもありません。流れてくるのは、ジャズ、ゴーゴー、サーフミュージック、サイケデリックロック(この名前自体が懐かしい)が唸りまくる、究極のラウンジ・ミュージック。ただただ快感、このままトリップしてしまいそうです。 「昭和特撮」の映画音楽というのは、実に多様で、実に贅沢だったのだなぁと改めて感動してしまいます。イカス音楽というものがどういうものか知りたかったら、このアルバムをお聞きなさい。さすがは泣く子も黙るVAPのミュージック・ファイル・シリーズ、期待どおり、いや、期待以上の素晴らしい選曲でマニアのツボを刺激しまくります。最早サントラなどという枠を飛び越えて、全世界に問うべき人類の至宝です。 『ゴジラ』シリーズでは、一段低い評価しかされていない真鍋理一郎の仕事、こういうところではなかなか聞けない、いずみたくの仕事、本当に素晴らしいものです。『宇宙大怪獣ギララ』のブロックで流れる激しいチェンバロは、ちょいとスゴイですぜ。 特に「ギララのロック」(台詞なしバージョンなのが少々残念)、「大巨獣ガッパ」、そして『ゴジラ対ヘドラ』の「かえせ!太陽を」なんて歴史に残るトチ狂ったボーカル曲を連続で聞かされた日には、曲に身を委ねる以外、何をする気も起きません。ギララの永六輔(!)、ヘドラの監督でもある坂野義光の作詞センスが光りに光っています。それにガッパの美樹克彦(実は、この人、私の小学校の大先輩だったりする)の伸び、艶のある声はどうでしょう!さすが「大嫌いだ、白い雲なんて」「バカヤロォォォォォッ!」の美樹克彦、怪獣映画の主題歌だからといって、まったく手抜きはありません。 五社協定(後に六社)なんて何のその、映画会社の垣根も取り払って、東宝、松竹、大映、日活から(あら、新東宝はともかく、東映がありませんね)、レアな佳曲が目白押しです。おまけに、各作品の完全盤アルバムが発売されている場合は、どこの会社のものであろうと関係なく紹介するという太っ腹なところまで見せています。他者を儲けさせるようなことしていいんでしょうか。ここんとこ、ちょっと心配ですね。更に、御覧のジャケットをはじめ、水野久美をフィーチュアしまくったアート・ワークも素晴らしすぎるほどに素晴らしい。騙されたと思って聞いてみていただきたい。とにかく聞いてくれ!いいから聞いてくれ!今すぐ聞いてくれ!
サントラ vap 1996年大吉GUY
-
冬木透BGMコレクション “ULTRA”GALLERY
冬木作品は『円谷プロBGMコレクション・リミテッドエディション 円谷プロダクション アーリーデイズ・クロニクル』という6枚組でもいろいろ聞けるが、「アーリーデイズ」だけに、『ザ・ウルトラマン』、『ウルトラマン80』までフォローしてくれていないのが玉に瑕。いわゆる第3期ウルトラは、宮内國郎と冬木透というウルトラ・シリーズの音楽の二大巨匠が担当し、シリーズ初のステレオBGM及び海外録音という快挙を成し遂げているのに、単に4年だけ放送時期が離れているというだけで本当に不遇で、あの名盤『ウルトラマン・決戦ミュージックファイル』でもレオ止まりで収録されずという哀しい扱いを受けて悔しい思いをしてきたが、このアルバムではスッキリ解消! CD1枚に、ここまで見事に収録するなんて、構成の早川優は天才ではないか。ヒーローのテーマ、防衛チームのテーマが次から次へと流れてきて「あの曲が入ってないぞ」なんて全然感じさせない完璧な選曲、サントラ史上最高最強と言っても過言ではない大名盤。
サントラ 日本コロムビア 1996年大吉GUY
-
渡辺宙明BGMコレクション“CHUMEI”BRAND
テレビ特撮作曲家御三家である、ライダーの菊池俊輔、戦隊の渡辺宙明、ウルトラの冬木透のうち、渡辺編である本盤は、『秘密戦隊ゴレンジャー』でゴレンジャーハリケーンのときに流れた「ゴレンジャーがやってくる」や『ジャッカー電撃隊』で行動隊長ビッグワンが主役どころかBGMまで乗っ取った「スペードエース若き獅子」が入っていないなど、実は有名曲の取りこぼしも多数ありそうなのに、それほど気にならないのは、主題歌メロオケではなく、どれを聞いても同じ、いや、偉大なるマンネリの劇伴からの選曲が功を奏したのだろう。新しめの作品からは『光速電神アルベガス』や『ビデオ戦士レザリオン』からも選曲(例えばこれがもっと新しい『破邪大星ダンガイオー』だったとしても、アルバム全体の仕上がりは大して変わらないに違いない。さすが偉大なるマンネリ)、最後にマニア感涙の宇宙刑事シリーズのレーザーブレード3連発まで収録して大満足の仕上がり。
サントラ 日本コロムビア 1996年大吉GUY
-
ディープ・サントラ・ファイル 激闘!黄金の大捜査線!!
これまたVAPのコンピ盤で、「プレイガール」「女必殺拳」「ザ・ゴリラ7」「ザ・ボディガード」「大追跡」なんかを収めたアルバム。菊池俊輔だの山下毅雄だのの名曲が流れまくって、テレビドラマ黄金時代が蘇る。最近のドラマって、BGMがあんまり耳に残らないのよね。タイアップみたいな主題歌じゃドラマは盛り上がらんよ。
サントラ vap 1996年大吉GUY
-
ディープ・サントラ・ファイル 豪華!オールスター夢の競演!!
「キイハンター」、「アイフル大作戦」、「バーディ大作戦」に混じって「男はつらいよ」とか「釣りバカ日誌」とかが入ってるのがよく分からんが、この時期のVAPだからこその素晴らしいコンピ盤。お徳用ってのは、こういうアルバムのためにある言葉だと思う。
サントラ vap 1996年大吉GUY
-
ウルトラ・クラシカル・コンパイル -ネオ・ロマンティシズム'66~'74-
ウルトラシリーズから、クラシック・テイストで、シンフォニックでバラードなBGMを集めたアルバム。宮内国郎、冬木透、日暮雅信が作曲した『ウルトラマンレオ』までのシリーズから選ばれているものの、実質的には冬木透のアルバム。大雑把に言うと、宮内はジャズ、日暮は現代音楽、そして冬木はクラシック・テイストの曲に特徴があるわけで、ウルトラシリーズに感じられるスケールの大きさ、ある種の格調の高さは、冬木による音楽のおかげと言っても過言ではない。
特撮 vap 1996年大吉GUY
-
ウルトラ・クラブ・コンパイル ~グルーヴ! 円谷ヒーロー!!~
当時のシネジャズ・ブームに乗った、円谷作品のコンピレーション・アルバム。宮内国郎、冬木透、冨田勲、玉木宏樹、小山恭弘の作品から選ばれているが、『マイティジャック』、『恐怖劇場アンバランス』のクラブ、バーの場面用の音楽を書いた冨田勲が素晴らしい。特に『マイティジャック』のクラブJ用のBGMは、私がこよなく愛するビブラフォンも入っていて、まさにジャズそのもの。『ウルトラマン』のオープニングに出てきたバルタン星人の影絵を使ったジャケットもオシャレ。
特撮 vap 1996年大吉GUY