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パライバトルマリン(パレーリャス産)0.268ct,CuO:1.40wt%,MnO:2.71%
ブラジルのパライバトルマリンはインクルージョンが入りやすく、透明感が良いものは限られます。特に、原産地のバターリャでは、エイトリータのような透明感のある石は今ではかなり珍しく、相当な高値で取引されます。 ブラジルでは、バターリャに近い、隣のリオ・グランデ・ド・ノルテ州パレーリャスでもパライバトルマリンの鉱山が3つ(4つ?)あり、それぞれバターリャに近い側の鉱山から、グロリアス、キントス、ムルングと言われます。 この石はバターリャ産として入手したものですが、透明感は抜群で、色はエメラルドに近い様相です。日独宝石研究所に提出したところ、バターリャ産の特徴は見られず、パレーリャスのいずれかの鉱山のものと考えられる、とご意見をいただきました。パライバトルマリンは産地偽装の多い石ですので私もこれはパレーリャス産として扱います※。透明感に定評のあるキントス産かな、と思いますが、それぞれ鉱山が近すぎるため、追跡は困難と判断し諦めました。 ※私の取引したセラーは信頼度が高い人物なので、おそらく流通のどこかで、「ブラジル産」→「バターリャ産」と誤解が生じたのでしょう。 インクルージョンが肉眼では確認できず、パビリオン側からは、わかりにくいですが、若干ながら黄緑色が確認でき、バイカラーの様相が見て取れます。 エイトリータがパライバトルマリンの青側の限界色であれば、この石は緑側の限界色と思われます。 鉱物名:トルマリン 宝石名:パライバトルマリン 組成: Na(Li,Al)3Al6(Bo3)3Si6O18(OH)4 重量:0.268ct/ CuO:1.40%、MnO:2.71% 産地: Parelhas, Rio Grande do Norte, Brazil 鑑別:日独宝石研究所
宝石 京都市左京区 2020年shm
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アレキサンドライト(ロシア産)0.212ct
発見は1830年、ロシア帝国はウラル地方、スヴェルドロフスク州エカテリンブルクから北東約90km、トコワヤ川流域のエメラルド鉱山にて。 その石は昼はグリーンですが、夜はレッドに変色し、時のロシア帝国皇太子アレキサンダーⅡ世の名からアレキサンドライトと命名されます。 その後、スリランカ、インド、ブラジル、マダガスカル、タンザニア、ジンバブエなどでも産出し、世界五大宝石のひとつに数えられるようになりましたが、宝石になるレベルの原石の産出は極めて少ないレアストーンのひとつです。 ロシア産アレキサンドライトは緑から赤へのカラーチェンジが抜群で、発見から200年経とうとしている今でも世界最高の評価を受けます。しかし、20世紀初めには産出が途絶えたため、これに比肩するアレキサンドライトが出回るのは、1987年、ブラジルのミナスジェライス州アントーニオ・ジアス、ヘマチタでの発見を待たねばなりませんでした。 しかし、ヘマチタのアレキサンドライトも、採掘期間が3〜4ヶ月で産出が止まっているようで、宝石市場でみるものは"幻のヘマチタ産"とまでいわれます。 ヘマチタ産でなくても、ブラジル産のアレキサンドライトは平均してクオリティが高いものが多く、最高品質のものはブルーイッシュグリーンからパープルにはっきり変色します。 なお、ヘマチタ産のアレキサンドライトは、難しいですが探してみれば見つけることは可能です。国内の比較的大きなミネラルショーでも価格に糸目をつけなければ取り扱うセラーを見つけることはさほど難しくはありません。また、ネットショップなどでも"alexandrite hematita"と検索すれば、何点かヒットします。そして、かなりの品質のものでもそれほど大きくなければ、高額ではありますがまだ現実的に購入可能な価格です。 ロシア産は全くありません。 宝石のバイヤーが、一生に一度見ることが叶うかどうか、というレベルの希少性です。試しにネットで"alexandrite russian"と検索してみても、ロシア産と確信を持てるアレキサンドライトはありません。ebayでヒットするものも、産地同定がされた鑑別書がついたものがないため、本物のロシア産アレキサンドライトか疑わしいものばかりです。 私も海外のコレクターにも話を聞きつつ、注意深く探していたのですが、持っているコレクターはおらず、この石を入手するまでの3年3ヶ月の収集歴で、直接見かけたのは1度のみでした。 もしあったとしても、同サイズ同品質のヘマチタ産より価格は10倍程度となります。 また、聞くところによればロシア産はインクルージョンが多い裸石ばかりだそうです。たしかにebayなどの海外オークションで、"ロシア産"と書いてあるアレキサンドライトはインクルージョンが多いものばかりですが、確かなことは分かりません(それらの石には産地同定鑑別がございませんでした。)。 アレキサンドライトの産地同定は、国内では唯一日独宝石研究所が可能です。既に解散した全国宝石学協会は可能だったかもしれませんが、ジェムリサーチジャパン、中央宝石研究所も無理だと思います。ただ、海外ではGRS、ギュベリンはもちろん可能です。2019年からはGIAでも可能になりました。 しかし、産地を鑑別書に記載することで、ものによっては色石の価値をかなり引き上げることになるため、日独宝石研究所は、「バターリャ産パライバトルマリン(バターリャ産とは記載不可ですがパレーリャス産との区別はつきます。)」、「ジャンムー・カシミール産サファイア」、「ロシア産アレキサンドライト」については審査が特に厳しい印象です。 その日独宝石研究所の審査をクリアしたということは、日独宝石研究所のサンプルストーンの成分と一致した、ということなので、当該石はまごうことなきロシアンアレキサンドライトの最高品質です。 ブルーグリーンからパープリッシュレッドへの抜群のカラーチェンジにロシア産の中でも滅多に見られないルーペクリーン。日独宝石研究所の鑑別書には液体インクルージョンのみの記載。 今回はあえて英字鑑別をとりました。価値が世界で広く認められる石です。折角だし、という感じで取りました。 価値あるロシア産アレキサンドライト。色石の中で、入手難易度はジャンムー・カシミール産サファイア、パライバトルマリンエイトリータに並ぶか、それ以上。色石の頂点に立つ石のひとつであることは間違いありません。 鉱物名:クリソベリル 宝石名:アレキサンドライト 組成:BeAl2O4 重量:0.212ct 産地:Krupskoye deposit (Lyublinskoye; Tokovoi priisk), Izumrudnye Kopi area, Malyshevo, Sverdlovsk Oblast, Russia 鑑別:日独宝石研究所
宝石 京都市左京区 2019年shm
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スキャポライト(強蛍光)0.352ct
蛍光スキャポライト。マリアライト寄りかメイオナイト寄りか、おそらくはマリアライト寄りかなと思いますが、日独宝石研究所にはどちら寄りか、確認していません。 長波紫外線でかなりの強烈な蛍光を示します。一部のアフガニスタン産のスキャポライトの特長でしょうか。 鉱物名:スキャポライト 宝石名:スキャポライト 組成:NaAl3Si9O24Cl(20-60%)+Ca4Al6Si6O24(Ca3, SO4)(40-80%) 重量:0.352ct 産地:Afghanistan 鑑別:日独宝石研究所
宝石 京都市左京区 2019年shm
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紫水晶(ウルグアイ産)
ウルグアイ産の紫水晶です。 よく、メキシコのベラクルスアメジストが世界最高品質の紫水晶と言われますが、私はウルグアイ産以上の色の濃く、深みのある紫水晶は知りませんし、原石であれば、福島県産の通称かぐや姫水晶だって負けていません。 当該標本は、典型的な濃い色のウルグアイ産の紫水晶です。 鉱物名:クォーツ(アメジスト) 和名:紫水晶 産地:ウルグアイ
鉱物 京都市左京区 2018年shm
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紫水晶(かぐや姫水晶・福島県会津郡只見町産)
2017年に発見されたかぐや姫水晶。一時ミネラルショーなどで沢山販売されていましたが、徐々に落ち着いてきています。当該石も出だした当時に入手したものです。 周りの白い母岩は流紋岩で、ノジュールを削れば紫水晶が出てくるようです。 産地は福島県会津郡只見町が唯一の産地。要は只のアメジストですから鉱物自体珍しいものではありません。 鉱物名:クォーツ(アメジスト) 和名:紫水晶 産地:福島県会津郡只見町
鉱物 京都市左京区 2017年shm
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カシミールルビー(非加熱)0.378ct
カシミールルビー。 パキスタン側のアザド・カシミールではピンクサファイアが圧倒的に産出しますが、結晶に一定のクロムが含まれることでルビーとなったコランダムが少量ですが産出します。 アザド・カシミールのあちこちから産出するピンクサファイアと違い、産地は限定されます。当該石はニーラム渓谷、ナンギマリ産。 ピジョンブラッドの色相のルビーと異なり、透明感はあまり感じられないものが多いです。しかし、当該石のような濃いピンキッシュレッドの色相のルビーは、今後産出が増えた場合、人気が出るポテンシャルを秘めていると思います。 鉱物名:コランダム 宝石名:ルビー 組成:Al2O3 重量:0.378ct 産地:Nangimali, Neelum Valley, Azad Kashmir 鑑別:日独宝石研究所
宝石 京都市左京区 2018年shm
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フレンチサファイア(非加熱)0.430ct
フレンチサファイア。 フランスのオーヴェルニュ地域圏は伝統的なサファイアの産地です。 オーヴェルニュのサファイアは普通、加熱処理が施されますが、当該石のような非加熱無処理石は極めて稀と聞きます。 当該石のような深いグリーニッシュブルーか、ブルーの色相の石が採取されていましたが、今では殆ど採っていないようで、市場には滅多に出回りません。 日独宝石研究所の鑑別で、「非加熱・フランス産」として出ました。この産地の鑑別書を持っているコレクターは少ないでしょう。 鉱物名:コランダム 宝石名:サファイア 組成:Al2O3 重量:0.430ct 産地:Auvergne, France 鑑別:日独宝石研究所
宝石 京都市左京区 2018年shm
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玉髄
2017年に流行ったインドネシア産の"グレープアゲート"。アゲート(瑪瑙)と呼ばれていますが、カルセドニー(玉髄)です。 玉髄に乗っている粒は方解石(カルサイト)です。ぶどうに乗った氷砂糖のようで綺麗です。 鉱物名:アゲート 和名:玉髄 産地:インドネシア
鉱物 京都市左京区 2017年shm
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ポードレッタイト0.388ct
私にとってこの石は2ピース目。 色々経緯があって、入手することになりました。大きさも申し分なく、濃い桜色の上級品です。 結晶インクルージョンは目視できますが輝きが凄まじいので気にはなりません。 ポードレッタイトはグランディディエライトやベニトアイト、アウィンやターフェアイトといったメジャーなコレクターストーンより見かけることはなくこれらの石より高価です。 桜色の優しい色合いで、大規模な鉱床が出たら、国内でも間違いなく人気の宝石になりうる石です。 実はスギライトの仲間で、オースミライトグループに当たります。その辺りの詳細な解説は中央宝石研究所のラボトピックスに記載がありますので、ご興味がある方は以下のアドレスからご確認ください。 こちらには著作権の関係から原文は掲載しません。 http://www.cgl.co.jp/latest_jewel/gemmy/140/48.html 鉱物名:ポードレッタイト 宝石名:ポードレッタイト 組成:KNa2B4Si12O30 重量:0.388ct 産地:Pyant Gyi Mine, Pein-Pyit, Mogok, Pyin-Oo-Lwi, Mandalay, Burma 鑑別:日独宝石研究所
宝石 京都市左京区 2018年shm
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ネプチュナイト0.930ct
ベニトアイトとよく共生しているレアストーンです。原石はたまに見かけますが、ファセットカットされている裸石はかなり稀というか、そういう石ではありません。レアストーンを取り扱う業者でも、ツーソンショーで狙わない限り取り扱うことは困難と思います。 和名は海王石ですが、ブルーではなく、完全にブラックです。以前から探しておりましたが、2017年の京都ショーでようやく見つけることができました。 鉱物名:ネプチュナイト 宝石名:ネプチュナイト 組成:KNa2Li(Fe, Mn)2Ti2[Si8O24] 重量:0.930ct 産地:San Benito, California, USA 鑑別:日独宝石研究所
宝石 京都市左京区 2017年shm
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エピスティルバイト0.401ct
"エピスティルバイト"ではどんな鉱物か想像することは難しいですが、"エピ"と"スティルバイト"に分けた場合、原石コレクターの方ならお判りになられると思います。 スティルバイトはアポフィライトとよく共生する"束沸石"、ゼオライト(沸石)の一種です。エピスティルバイトはスティルバイトに見た目が似ているため、名称も「スティルバイトに近い」という意味で付けられました。 硬度4。沸石に共通して言えるのは総じて脆い、というところ。当該石は果敢にもファセットカットにチャレンジし、見事に仕上げてきた中々の標本だと思います。 この石は、沸石の中でもあまり見かけません。スティルバイトより珍しい鉱物です。 鉱物名:ゼオライト 宝石名:エピスティルバイト 組成:CaAl2Si16O16•5(H2O) 重量:0.401ct 産地:India 鑑別:日独宝石研究所
宝石 京都市左京区 2018年shm
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パイロクスマンジャイト0.251ct
ロードナイトと非常によく似たパイロクスマンジャイト。違いは結晶の生成過程ということらしいです。ロードナイトはたまに見かけますがパイロクスマンジャイトは稀産です。 愛知県にある田口鉱山には、世界的にも珍しいパイロクスマンジャイトの鉱床があるみたいで興味がひかれます。 当該石はカットが荒いですが、この石の稀少性、入手の難易度からして、仕方がない瑕疵です。 鉱物名:パイロクスマンジャイト 宝石名:パイロクスマンジャイト 組成:(Mn, Fe)7Si7O21 重量:0.251ct 産地:Brazil 鑑別:日独宝石研究所
宝石 京都市左京区 2017年shm
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バストネサイト0.185ct
クォーツが有名なパキスタンのザギマウンテン産バストネサイト。同産地はイットリウムを含む稀産のリン酸塩鉱物"ゼノタイム"が産出し、この石にもイットリウムやセリウム等レアアースが成分中に含まれます。 バストネサイト自体がマイナーでありほとんど誰も知らないような石ですが、コレクター向けの裸石専門店やミネラルショーでも割と見かけるので入手難易度はそれほど高くないのかと思います。 白熱灯下でカラーチェンジするものもあるようで、当該石でも試してみましたが微妙です。 鉱物名:バストネサイト 宝石名:バストネサイト 組成:(Ce, La, Y)CO3F 重量:0.185ct 産地:Zagi Mountain, Mulla Ghori, Khyber, FATA, Pakistan 鑑別:日独宝石研究所
宝石 京都市左京区 2018年shm
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クンツァイト1.152ct
リシア輝石で一番メジャーな石。宝石としてカットされるものは照射処理を施され色を濃くしているものが多いです。なので、濃い紫のクンツァイトは大体処理石です。 スポジュメンはクロム要因のヒデナイトを除いて退色しやすいです。マンガン要因のクンツァイトも例外でなく、日光に長時間晒すと薄くなってしまいます。 当該石はナチュラルとして入手したつもりですが、この石を完全にナチュラルと見抜くことは困難です。 鉱物名:スポジュメン 宝石名:クンツァイト 組成:LiAlSi2O6 重量:1.152ct 産地:San Diego, California, USA 鑑別:日独宝石研究所
宝石 京都市左京区 2017年shm
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ヒデナイト(ノースカロライナ州産)
リシア輝石の中では一番珍しい石。スポジュメンにクロムが含有されることでこのような鮮やかな緑色の発色が見られます。 この石には色々諸説がありまして、「クロムを含んだグリーンスポジュメン」をヒデナイトとする説と、「単なるグリーンスポジュメン」をヒデナイトとする説です。 後者の場合は"クロム"ではなく"鉄"が含まれることでグリーンに発色するスポジュメンも"ヒデナイト"と呼ばれることになります。しかし、国内の鑑別機関は後者の説をとりません。 クロムを含むスポジュメンは、確認されているもので米国ノースカロライナ州産のみになります。 ➡︎ブラジル産やアフガニスタン産のほとんどがクロム起因ではなく鉄起因のグリーンで、鑑別書には"宝石名:スポジュメン"または"宝石名:グリーンスポジュメン"と記載されます。私も確かめたことがないので確かな事は書けませんが、ノースカロライナ州産以外のスポジュメンが"ヒデナイト"表記されるケースがあるかもしれません。しかし、私は聞いたことがないのであったとしたら凄い事です。 当該石は、鑑別書記載の通りクロムを含むスポジュメン、ヒデナイトとして鑑別されます。産地はもちろんノースカロライナ州です。これが鉄起因のグリーンスポジュメンの場合、鉱物名が"天然スポジュメン"、宝石名が"スポジュメン"または"グリーンスポジュメン"となります。 カットが汚いのが残念なのでリカットしようか悩み中です。 ➡︎やはりこの石はリカットは難しいみたいです。 鉱物名:スポジュメン 宝石名:ヒデナイト 組成:LiAlSi2O6 重量:0.530ct 産地:North Carolina, USA 鑑別:日独宝石研究所
宝石 京都市左京区 2017年shm