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Wocklumeria denckmanni
Species :Wocklumeria denckmanni Age :後期デボン紀ファメニアン location:ドイツ/メンデン デボン紀末にピンポイントで爆発的繁栄をしたアンモノイドの異端児クリメニア目の仲間。 (多分、目全体がファメニアンに発生してファメニアンに絶滅) クリメニア目の仲間は連室細管が巻きの内側(背側)を通る、有殻頭足類の中でも珍しいグループ。 そんな奇妙なクリメニアの中でも、三つコブ巻きの奇妙な形態が多いウォックルメリア科の仲間。 更にウォックルメリア属は幼年期は三つコブに巻き、その後成長して丸巻きで覆われた成体になる奇妙に奇妙を重ねた属。 この標本は、ボロボロな裏面が幸いして断面が露わとなり、丸巻きの成年殻に覆われた三つコブ巻きの幼年殻が観察できる。 本来、状態の悪い標本は忌避するところだけど、成長による変化が観察できる素晴らしい標本に仕上がっている。 5枚目の写真は図鑑の標本と比較。 Fossilium catalogus animalia Part138 というデボン紀のアンモノイドを系統毎に収録し、形態情報まで記載した専門書に近い図鑑。 デボン紀のアゴニアタイト、ゴニアタイト、クリメニアの同定する際は必読の書と言える逸品。
化石 2023年9月 デボン紀Arato510
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Valanginites nucleus
Species :Valanginites nucleus Age :前期白亜紀バランギニアン location:ドイツ/シュテムヴェーデ アンモナイト亜目、オルコステファヌス科のアンモナイト。 こう見えてペリスフィンクテス上科。 ゴニアタイトやセラタイトにも存在する球形フォルムの殻。 頭足類随一の形態的多様性を誇るアンモナイト目に居ないわけがない。 そんなインボリュート(若殻巻きを飲み込んだ巻き)した属種の中でも、この標本は特にキツ巻きでヘソが全くない。 しかし、ヘソがあったり細かく深いリブが刻まれていたりする別形態の個体が同種として流通している。 個体差と言うには差が激しい。 よくあるアマチュアの勘違い浸透現象で、複数の種が同種として扱われてるのだろうか。 それか、ペリスフィンクテス上科なので性的二形を形成する属種なのかもしれない。 ※性的二形=雌雄で別の形態をとる種 鉄球の様なこのフォルム。 私がフランス在住時にハマっていた、ペタンクという鉄球を投げるスポーツをやる度にこのアンモナイトを思い出していた。 ※ペタンク=ビリヤードっぽい感覚でプレイするスポーツとゲームの中間的なカルチャー。 それ程、質感・サイズ感共に鉄球っぽい握り込む手に馴染む形態アンモナイト。
化石 2014年頃 ジュラ紀Arato510
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Lituites cf. dewitzi
Species :Lituites cf. dewitzi Age :中期オルドビス紀ダーリウィリアン location:ドイツ/ティルプレーン 世にも珍しいドイツ産ゼンマイ。 ではなくリツイテス目のノーチロイド。 リツイテス目はそれなりに流通してるけど、初めて見る型のゼンマ…リツイテス属。 しっかりと巻いた後、竿を形成する直前に大きな隙間を開ける。 例のごとくL. lituusとして販売されてたけど、リツイテス目の属種をまとめた論文を見る限りL. dewitziにしか見えない形態。 参考にした論文の産例もドイツのダーリウィリアン層のみ。 ※Webの情報ではエストニアのダーリウィリアン層での産例あり。 産地・時代の齟齬もない。 参考:Taxonomy and ontogeny of the Lituitida (Cephalopoda) from Orthoceratite Limestone erratics (Middle Ordovician)
化石 2024年2月 オルドビス紀Arato510
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Pseudaganides cf. aganiticus
Species :Pseudaganides cf. aganiticus Age :後期ジュラ紀キンメリッジアン location:ドイツ/バイエルン ノーチラス上科シュードノーチラス科。 ノーチラスの中ではセノセラスの次くらいに流通が多い。 Pseud=『偽』の名を冠してるけど、パクリ元のアガニデス属というゴニアタイトのが遥かにレア。 縫合線が曲がりくねりつつ間隔が狭めで、ノーチラスにしては隔壁が少し複雑化してる。 縫合線が複雑なノーチラスといえば新生代のアツリア属が有名だけど、そのアツリア属の先祖種とはたぶん別系統。
化石 2014年頃 ジュラ紀Arato510
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Geisonoceras sp.
Species : Geisonoceras sp. Age :オルドビス紀 location:ドイツ/ダムスドルフ オルソセラス目の仲間。 素人に直角貝系の同定は困難。 プロの中でもノーチロイド専門の古生物学者じゃないとちゃんとした同定は無理だと思う。 つか連室細管や隔壁の作り見ないと無理。 流通品は過去の産例から「この産地の直角貝はガイソノセラス」なノリで判別してると思う。
化石 2023年12月 オルドビス紀Arato510
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Cyrtogomphus aff. curvatus
Species :Cyrtogomphus aff. curvatus Age :後期デボン紀ファメニアン location:ドイツ/アルンスベルク オンコセラス目のノーチロイド。 オンコセラスらしからぬロンギコーン(長い殻)とオンコセラスらしいずんぐり感を共存させた珍しい形態の属種。 ラテン語で曲りを意味するシルトに、ギリシャ語の釘の一種から由来してるゴンファスを合せた属名。 曲った釘をイメージして付けられたモノと思われるが、あいにく曲を描いている様には見えない。 たまたまこの種が真っ直ぐなだけの可能もある。 写真の見え方の問題で中央の標本が浮いて見えるけど実はネガ 左端にポジ 中央右にアンモノイドの始祖バクトリテス 更に右にアンモノイドの異端児クリメニア と贅沢な母岩
化石 2023年12月 デボン紀Arato510
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Codoceras indomitum
Species : Codoceras indomitum Age :シルル紀(漂礫) location:ドイツ/ベルリン オンコセラス目のノーチロイド。 名前が紛らわしいけど、有名アンモナイト十選に入るであろうカドセラス属ではなく、『コ』ドセラス属。 年代も形態も全く違うので、ビギナーの方でも誤認はないだろうけど念押しで伝えておく。 紛れもないオウムガイ類である。 標本の年代にSilur/Geschiebeと表記されていた。 シルル紀を意味するドイツ語の後に続く、Geschiebeという見慣れない単語。 何処かの国固有の地質層序表記(世や期)かと思って調べたら違った。 漂移や漂礫と訳せるみたいだけど、日本語に訳しても聞き慣れない地学の専門用語。 漂礫ってのは氷河によって遠方から運ばれた岩石のことらしい。 別の土地で地層形成、化石化したモノで生前はシルル紀のベルリンに生息してたわけじゃないってことだね。 漂礫なのでシルル紀内での細かい時代(ウェンロック、ラドロー等)までは追えない模様。 岩質はチェコのプラハ盆地産のシルル紀層の標本にそっくり。 そっち方面で化石化して運ばれて来たのかな。
化石 2023年8月 シルル紀Arato510
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Pleuronoceras nodosum
Species :Pleuronoceras nodosum Age :中期デボン紀 location:ドイツ/アイフェル オンコセラス目のノーチロイド。 緩く巻いたヤギ角の様な外殻が保存された良質な標本。 ジュラ紀のアンモナイト、プレウロセラス属に名前が似ているけど全く別系統のノーチロイド、プレウロノセラス属。 とは言ったもののちゃんとした文献が見当たらず、本属の進化系統や分類(科)がよくわからなかった。 ノーチロイドの中ではやたらと流通が多い属だけど、セラーのみなさんは何をもって同定してるんだろうか。 取り合えず古軟体動物の教科書には載ってなかった。
化石 2014年頃 デボン紀Arato510
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Bactrites gracilis
Species :Bactrites gracilis Age :後期デボン紀フラニアン location:ドイツ/ビューデスハイム バクトリテス目のアンモノイド。 真っ直ぐな殻を持つノーチラス亜綱のオルソセラス目から分化したグループ。 小さな標本なので見ずらいけど、ノーチロイドにはない楕円形の初期室が観察できる。 本属もしくは近縁種の子孫が徐々に曲がり、緩巻きとなり、しまいには巻いてアゴニアタイト目を形成する。 更にアゴニアタイトは ゴニアタイト目 プロレカナイト目 セラタイト目 と時代と共に次世代が次世代を生み出し、最後にみんな大好きなアンモナイト目を生み出す。 更には別系統では、殻を外套膜で覆う子孫種が現れ、イカ、タコ、べレムノイドなどの鞘形亜綱に分化する。 頭足類にとっては極めて重要なグループ。 属種自体はありふれてるけど、初期室が確認できる貴重な標本なので★3つ!
化石 2023年9月 デボン紀Arato510