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格子文赤縁なつめ型氷コップ
格子文のあぶり出しが美しい氷コップ。 あぶり出しは、骨灰(こっぱい)などの乳濁剤を混ぜたガラスを型に吹き込み、再加熱することで文様を浮かび上がらせる技法である。 ほとんどの日本製ガラス製品は型吹き後に吹きの工程が加えられ、型の凹凸を無くしたものが多い。この氷コップは型の凹凸がそのまま残された珍しい作例である。 表面の凹凸がレンズのように光を収束し、きらきらと輝いて美しい。
大正〜昭和初期 日本M.S
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吹雪文ガラスのアトマイザー
吹雪文のガラスを用いたアトマイザー(香水瓶)である。 本品は赤、白、水色の吹雪文ガラスを使用しており非常に華やか。 吹雪文は、台に置いた色ガラスのチップを透ガラスのタネに転がしながら付着させ吹いたもので、このアトマイザーではさらにその上から透ガラスを被せており手が込んだものになっている。 現存する戦前のアトマイザーは青や赤の色被せに切子を施した、シンプルなものの方が多いようである。
大正〜昭和初期 日本M.S
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赤縁暈し椀形氷コップ
赤と乳白を暈した椀形の杯に透明脚を持つ氷コップである。 数多く作られ、現存数も多く一般的な氷コップであるが、杯部の薄く丁寧な作りや赤から乳白へのグラデーション、脚部のフォルム、脚の取付位置に至るまで歪みが少なく非常に美しいプロポーションである。数ある氷コップの中でもここまで整ったものは数少ないだろう。 手吹きによる歪みも魅力であるが、やはりこのような美人を見つけると嬉しい。
大正〜昭和初期 日本M.S
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水玉文椀形氷コップ(青脚)
杯部はあぶり出しによる水玉文で加飾し、脚部は青色ガラスを用いている。 特段珍しい品ではないが、青脚が涼やかで好ましい。 あぶり出しは、文様に三か所接合部があることから、三ツ割の型を使ったことがわかる。
大正〜昭和初期 日本M.S
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透きガラス地乳白暈し渋紙手笠
渋紙手と呼ばれる意匠の電笠である。渋紙手とは染物の型紙を作る際に使用する渋紙の質感に似てヒビ割れた模様が表面に現れたものをいう。ガラス技法ではヒビ焼きとも呼ばれるが、これはガラスがまだ熱いうちに水につけ急冷し、ヒビを生じさせた後再度過熱して溶着させるとヒビ部分がメロンの皮のように皺となって現れる効果を利用したものである。 渋紙手の技法は、氷を連想させることからアイスペールに多用されるが、電笠に使用される例は案外少ない。 光を灯すと仄かな光でもクラック部分が乱反射して明るく感じるほか、襞も繊細で涼やかさがあり気に入っている。自室の照明として活躍中である。
高さ:11センチ 幅:19.5センチ 大正〜昭和初期 日本M.S
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赤いリボンの少女のシャーレ、ガラス頭のまち針
絵具で赤いリボンの少女の絵を描いた、黄色味を帯びたガラス質のシャーレに、頭がガラスで出来たまち針が入っている。 こういったものは時代判別に困るが、絵の雰囲気から察するに大正から昭和初期にかけてのものだろう。 ガラス頭のまち針は、和ガラスコレクターで知られるアルフィー坂崎幸之助氏の著書「和ガラスに抱かれて」に同類品の掲載があるが、ここでも時代は不詳とされている。青、水色、橙、緑、紫の各一本、それぞれ意匠の違う花模様が型押しされており、いくつか数が集まると華やかで面白いものである。 また、ガラスの丸頭のまち針も、黄色、赤、緑が計4本ある。 少女の絵は明治期のガラス泥絵のようなものではなく、ペンキのような塗料で描かれており、経年による絵具の収縮によって亀裂、剥離が起こっており、取り扱いに注意を要するので、なるべく触らずガラスケースに並べて楽しんでいる。
大正〜昭和初期 日本M.S
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ノベルティーコップ「シナルコ」
清涼飲料「シナルコ」のノベルティーコップである。 ラッパ形のすらりとした美しいソーダコップで、緩やかなフルート文様になっている。 優美な形状もさることながら、エナメル刷りのロゴマークもデザインが美しく、いいアクセントになっており、戦前のノベルティーコップの中では高値で取引されているものの一つである。 シナルコはドイツの清涼飲料で、現在もその銘柄が存続している様である。当時のチラシを見ると、販売元は三ツ矢平野水、三ツ矢サイダーを製造販売していた帝国鉱泉株式会社である。チラシにはシナルコの紹介と販売経緯が書かれているので、紹介したい。 「獨乙(ドイツ)国デットモルト市シナルコ會社に於て製造する世界的専賣の衛生飲料にして其販賣高一ケ年貳合壜壹億萬本 今回當社に於て我邦に於ける其飲料の一手買受権及商標使用権を占有し更らに當社特有の三ツ矢平野水及天然炭酸瓦斯を以て壜詰したる獨占の衛生飲料なり」 ドイツのシナルコ社から帝国鉱泉株式会社が日本での製造販売権を獲得し販売したもののようである。
大正〜昭和初期 日本M.S
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卍くずし文赤縁ラッパ形氷コップ
ラッパ形の杯部を持つ氷コップで、赤縁に「卍くずし文」と呼ばれる角ばったS字形の暈し模様がある。 ウランガラスの脚、赤縁、乳白暈しの三色氷コップは当時流行したものらしく、数多く見られる。 中でも暈し模様は多くのバリエーションがあり、水玉文、七宝つなぎなどポピュラーなものから、「雪解け文」や「鼓文」のように珍しいものなど様々である。 「赤」「白」「黄緑」の三色は三色団子に代表されるように、日本人にとって親しみ深い配色であり、氷コップを代表する色の組み合わせである。 脚部はどっしりと太く安定感がある。このように太脚のものは大阪で作られたとみる向きもあるが、はっきりしたことは分からない。 通常、大正・昭和初期に製作された氷コップにはフット裏面にポンテ跡と呼ばれる、成型時に竿を取り付けた際の痕跡がある。 昭和初期の黒脚氷コップの一群を除き、ポンテ跡を研磨処理するものは当時の高級品とされている。 この作品もポンテ跡は研磨処理となっている。
大正〜昭和初期 日本M.S
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青糸巻文ラッパ形氷コップ
乳白ガラスに青ガラスを巻き取った涼しげな氷コップである。脚部は黄緑色でウランガラスを用いている。 杯部がハの字形に広がる「ラッパ形」と呼ばれる形状で、脚は通常か少し細い。 「青」「白」「黄」の三色が使われているコップであるが、このような三色以上を使用した氷コップはその華やかさから人気が高い。 杯部は放射状に掻き上げられており、青色の糸巻部分が波のように見える。 海を連想させる氷コップである。
大正〜昭和初期 日本M.S
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水玉文緑花縁みつ豆鉢
先に紹介した「七宝文赤花縁みつ豆鉢」と同種のものであるが、赤と緑でかなり雰囲気が異なる。 緑を暈すことで涼しげな印象となり、より夏の器らしさがある。 水玉文の乳白暈しは七宝文と並んで氷コップの世界ではポピュラーなものだが、モダンな和の文様として当時人気だったのだろう。
大正〜昭和初期 日本M.S
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赤縁乳白ぼかし氷コップ(ベル型)
よくあるベル型の氷コップであるが、赤を被せた上にごく薄く乳白の暈しを加えており、光を透過させた時に深みのある美しい赤色が表れる。同種の氷コップは多々あるが、特に乳白の暈しが淡く、赤と交わりストロベリーをイメージさせる色合いに仕上がっている点が面白い。赤ガラスは表面に気泡の破れ等が見受けられる。また、フットの径が通常より大きくしっかりした造りとなっている点にも個性がある。
大正〜昭和初期 日本M.S
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赤縁脚付鉢
口径10.5センチほどの小振りな平椀型の鉢である。口縁部に赤を被せ、縁を折ったもので、氷コップやコンポートなど、あらゆる当時のガラス製品にこの加工が見られる。また、赤のほかにも青や緑などの色ガラスで同様のものがある。 縁を折ることで、赤の色が帯状に強調されて見えるといった美観の向上効果や、口縁部が厚くなり割れや欠けに対して強度を上げることができるなど、用と美を兼ね備えた技法である。縁を折る加工は、日本のガラス産業がお手本とした英国のガラス製品にも見られ、18世紀のワイングラスのフットに同様の加工がみられる。 この作品はシンプルながら美しく、ことあるごとに手に取ってみたくなるような不思議な魅力がある。
大正〜昭和初期 日本M.S
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七宝文赤花縁みつ豆鉢
赤で口縁を暈し、あぶり出しの技術で七宝文を施したみつ豆鉢である。口縁部は花縁状に加工されている。 赤暈しや七宝文のあぶり出しは氷コップや鉢類に多く見られ、特段珍しいものではないが、いざ求めて探すとなかなか見つからない。赤べりにあぶり出しの作例は、これぞ大正のガラスといった感があり、やはり不動の人気を誇っている。また、当時も大層流行したものと思われる。 窓際からの光を透過させた本作品を眺めていると本当に美しく、大正ガラスの魅力を強く認識させる。
大正〜昭和初期 日本M.S
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糸巻文花瓶
乳白ガラスに赤の糸巻を施し、それを熱いうちに掻き上げて波文様にした後、さらに透明ガラスを被せた花瓶である。また、口縁は襞状に成型されており、可愛らしい。高台は透明ガラスを用いている。 乳白地に赤の糸巻、透明脚という、この作品と同様の配色を持つ氷コップは、多くの和ガラス関連の書籍に所載されるほど有名なものであるが、数は少なく現在は大変高価である。 しかし、物が変われば同じ時代、同じカラーであっても値段は大きく違い、花瓶であるがゆえに私の手元に収まってくれている。とはいえ、氷コップと花瓶の違いはあれど制作の手間は変わらず、鑑賞という点においてもその良さは変わらない。 高さ17センチほどの一輪挿しと言うべきもので、女性的で可愛らしい配色であるが、決して華美にならず、花を引きたてつつも花瓶としての主張もある点が優れている。
大正〜昭和初期 日本M.S
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糸巻文赤花縁鉢
底部から口縁にかけて、細い乳白ガラスの筋を幾重にも巻き付けた「糸巻文」の鉢である。ガラスが熱いうちに乳白ガラスの線を巻き付け、成形するという、熟練の技を必要とする手間の掛かった作品となっている。口縁には赤を暈し、襞状に仕上げた花縁鉢と呼ばれるもので、大きさから蜜豆や氷菓子を盛ったものと考えられる。糸巻の技法を用いた製品は大正を中心に数多く作られ、氷コップやコンポート、鉢類、電笠などに多く見られる。乳白の線をさらに細かく、緻密に巻き付けたものは「千段巻」と呼ばれ、こちらも多くの作品が現存している。 白の糸巻が繊細さを際立たせ、涼やかな効果を発揮している。
大正〜昭和初期 日本M.S