角川書店 角川文庫 悪魔の寵児 第2期

0

昭和四十九年三月十日 初版発行
昭和五十一年八月十日 十一版発行
発行所 株式会社角川書店

昭和33年(1958年)から昭和34年(1959年)にかけて雑誌「面白倶楽部」に連載された横溝正史の長編小説「悪魔の寵児」。
“ベショベショ”と陰気な雨が降る日に現れる、レインコートの怪人、雨男。そんな雨男が、闇行為でのし上がった元職業軍人の新興実業家・風間欣吾の妻やその愛人たちを常軌を逸した手段を用いて次々と殺害していく猟奇殺人事件を描いた、横溝正史のいわゆる“通俗モノ”と呼ばれる作品の一つですね。あの本格ミステリーの傑作「悪魔の手毬唄」の連載後半と同時進行で書かれたこの「悪魔の寵児」、発表当時はそのあまりのエログロ度数の高さに本格派を愛好する読者から批判もされたそうですが、“フーダニット”の骨格を遵守している点や、横溝お得意の“血の因縁”もちゃんと盛り込まれているところなど、個人的にはこれもやはり横溝正史を代表する作品の一つではないか、と思っています。角川文庫には昭和49年(1974年)に収録されました。
画像は昭和51年(1976年)に角川書店より刊行された「角川文庫 悪魔の寵児 第2期」です。劇中のある場面を想起させる裸婦の死体と色黒の男、そして、上部には黒眼鏡をかけた雨男と思しき人物。如何にもこの時期の杉本表紙画らしい煽情的な画柄ですが、雨男の表情が何とも絶妙なんですね。ネタバレになるので詳しく書けませんが、小説を読んだあとにこの表紙画を見ると「なるほど!」と膝を打つこと請け合いです。

#横溝正史 #杉本一文 #金田一耕助 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #小説 #装画

Default