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Ditomopyge zhirnovskiensis
世界的に貴重な石炭紀の三葉虫産地の中で、私が知る限り最も保存状態が良いと思うのが、ロシア、ヴォルゴグラード州の産地です。白磁の様な白い母岩に白い殻の三葉虫がは美しく、もはや美術品のようです。石炭紀の種類に興味が無いコレクターでも一目置ける存在かと思います。大型で立体的で細部の保存が良く、体表の細かな突起まで残っております。しかし供給量が極めて少なく、入手がとても難しい産地の一つとして知られます。この標本は途中から折れていますが、石炭紀の種類としては珍しく尾部まで達する長い頬棘をまとう優雅な姿をしています。学名は、以前から混沌としていて、Pseudophillipsia(Carniphillipsia) rakoveci=Paladin transilis(WEBER,1933)が混同していますが、同一種と認識しており、近年Ditomopyge zhirnovskiensis(Mychko, 2017) に再編された模様です。
Upper Carboniferous(Pennsylvanian) Phillipsiidae,Proetoidea,Proetida TRI-191 -Trilobites
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Archegonus nehdensis africanus
三葉虫の宝庫であるモロッコでも石炭紀の種類は、お目にかかる機会は少ないと思います。この標本の母岩に当る部分は、実はゴニアタイトです。この種類、面白い事にアンモナイト(ゴニアタイト/Maxigoniatites saourensis)の房室から見つかるのです。現在ではアサリの中に棲むカクレガニ(ピンノ類)が知られますが、この種類は、カクレガニの様に生体のゴニアタイトではなく、恐らく抜け殻のゴニアタイトに入り込んで身を守っていたと想像されます。
Carboniferous(Mississippian) Phillipsiidae,Proetoidea,Proetida TRI-311 ZrigatTrilobites
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Ditomopyge scitula
長い石炭紀も後期になると、このDitomopygeのような特徴の乏しい種類しか生き残っていません。テキサス州から産出するこの種類は、多くが防御姿勢をとっている個体が多く、埋まる際に咄嗟にダンゴムシのように丸まったのでしょうが、生き残れなく化石となったのかもしれません。この地の三葉虫はノジュール中から見つかる様で、細部の保存が比較的良好に残される傾向があります。 2023/2標本を入れ替えました。
Upper Carboniferous(Pennsylvanian) Phillipsiidae,Proetoidea,Proetida TRI-352 Wolf Mountain ShaleTrilobites
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Piltonia kuehnei
石炭紀ベルギー産の三葉虫です。ツルッとした体表のCummingellaと違い、無数の顆粒が全身に規則正しく並んでいて、特徴の少ない石炭紀三葉虫にあっては見分けがしやすい種類です。状態の良い完全体が望める産地ではありましたが、近年は余り出回る事が無くなりましたので、もう供給されていないのだと思われます。この地で産出する産状も大部分が尾部や頭鞍のみのようで、自在頬まで揃う標本は極僅かなのです。
Lower Carboniferous(Mississippan) Phillipsiidae,Proetoidea,Proetida TRI-274 TournaiTrilobites
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Pseudophillipsia spatulifera
岩手県陸前高田市からは、ペルム紀としては世界的に見ても巨大なPseudophillipsiaが産出します。この標本から推定する完全体は60mm程あったと思われます。これほど立派な三葉虫が日本から産出するというのを誇りに思えるほどであります。この地域から完全体も産出することがあるようですが、大部分は尾部や頭部の一部といった部分化石の産出です。本種は隣接する宮城県気仙沼市上八瀬でも見つかります。 [Left side:Positive,Right side:Negative]
Permian Phillipsiidae,Proetoidea,Proetida TRI-90-2 Kanokura(中部ペルム紀叶倉統)Trilobites
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Bollandia globiceps kleini
同じ産地のCummingella belisama belisamaとの明確な区別がつかないので、同種でいいのではと思いますが、一応、購入元の情報通りにしておきます。brachiopode(腕足動物)も共産しており、当時の生物相が分かります。産地をネットで検索して見ると露天掘りの大規模な採石場が引っ掛かりますが、Tournaisは古くから建材の採掘で栄えた様で、石炭紀の化石も建材採掘の過程で発見されたものと思われます。
Lower Carboniferous(Mississippian) Phillipsiidae,Proetoidea,Proetida TRI-426 Calcaire de TournaiTrilobites
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Endops yanagisawai
福島県出身の古生物学者、遠藤 隆次氏(1892-1969)の名前より属名が決められていますが、三葉虫最期の時代のペルム紀と重なります。元々はPaladin yanagisawaiとして記載されましたが、後にEndopsに改称されています。産地は、いわき市の天然記念物に指定され、更に原発事故の影響で除染できる状況になく近寄る事も不可能となり、もう標本の採取が不可能な状況となっています。
Middle Permian Phillipsiidae,Proetoidea,Proetida TRI-559 Takakurayama(高倉山層)/Kashiwadaira(柏平層)Trilobites
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Piltonia carlakertisae
アメリカ、ニューメキシコ州からの石炭紀の三葉虫です。近年滅多に見かけないのは、半世紀以上前に閉鎖されている産地だからです。長い頬棘と規則正しく並んだ顆粒が並んでいます。この標本は、頭部の保存が不十分ですが、頭部全体にも顆粒があります。バリエーションの乏しい石炭紀の三葉虫にあって派手な種類だと思います。
Carboniferous(Mississippan) Phillipsiidae,Proetoidea,Proetida TRI-264 Lake ValleyTrilobites
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Archegonus(Philibole) aprathensis
ドイツ産の石炭紀完全体です。世界で見ても石炭紀の完全体が採掘できる事が貴重なのですが、ここは公共工事の際に出現した産地だった事もあり、既に産地は消失していて、仮に市場に出てきても高額になります。立体感が無く保存されていて、比較的幅広な印象を受ける種です。
Lower Mississippian Phillipsiidae,Proetoidea,Proetida TRI-140 AprathTrilobites
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Neoproetus sp.
岐阜県郡上市(旧八幡町)では、鍾乳洞なども多く石灰岩が分布しています。安久田岩体と呼ばれる石灰岩はペルム紀初期〜中期の地質があり、三葉虫以外にもコノドントや放散虫などの産出が知られます。三葉虫は、完全体など期待できる産状ではなく、2種類ほどが知られます。この標本は、頭鞍部と尾部が分かる標本です。
Lower Permian Phillipsiidae,Proetoidea,Proetida TRI-597 Nabikawa(那比川)Trilobites
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Pseudophillipsia sp.
岐阜県郡上市(旧八幡町)にある安久田岩体と呼ばれる石灰岩はペルム紀初期〜中期の地質があり、三葉虫以外にもコノドントや放散虫などの産出が知られます。三葉虫は、完全体など期待できる産状ではなく、2種類ほどが知られます。この標本は、片側の自在頬(自由頬)だけの部分化石です。Pseudophillipsiaとわかる眼の形や頬棘の形状が確認できます。
Lower Permian Phillipsiidae,Proetoidea,Proetida TRI-598-2 Nabikawa(那比川)Trilobites
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Pseudophillipsia sp.
岐阜県郡上市(旧八幡町)にある安久田岩体と呼ばれる石灰岩は、ペルム紀初期〜中期の地質があり、三葉虫以外にもコノドントや放散虫などの産出が知られます。三葉虫は、完全体など期待できる産状ではなく、2種類ほどが知られます。この標本は、頭鞍部のみが黒光りしています。三葉虫の知識が無いと何の化石かも分からないと思いますが、ルーペで観察してみると三葉虫のパーツの一部と認識できます。
Lower Permian Phillipsiidae,Proetoidea,Proetida TRI-598 Nabikawa(那比川)Trilobites
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Pseudophillipsia sp.
岐阜県郡上市(旧八幡町)にある安久田岩体と呼ばれる石灰岩は、ペルム紀初期〜中期の地質があり、三葉虫以外にもコノドントや放散虫などの産出が知られます。三葉虫は、完全体など期待できる産状ではなく、2種類ほどが知られます。この標本は、尾部だけの部分化石です。硬い石灰岩で分離が難しい石質なのですが、保存状態は悪くありません。Neoproetusとは明らかに違う形状が分かる標本です。
Lower Permian Phillipsiidae,Proetoidea,Proetida TRI-598-3 Nabikawa(那比川)Trilobites
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Triproetus gerthi
インドネシアのティモール島からペルム紀の三葉虫が幾種類か産出していたのは文献等で分かっていたのですが、古い時代の話で新規に産出するような産地で無いため入手は不可能であると思っておりました。現在でも簡単に行けるような場所ではないので、今後も流通することは無いであろうと思われます。1930年代にGriffitides gerthi(GHEYSELINCK1937)として記載され、1970年代にはNeoproetus属に分類する例もあった様です。表記の属名が正しいのか手持ちの資料やWEB検索でも情報が限られるため、謎であります。
Upper Permian Phillipsiidae,Proetoidea,Proetida TRI-573 ManbisseTrilobites
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Pseudophillipsia kiriuensis
群馬県桐生市の三葉虫は、三葉虫とは無縁に思える関東地方から、1973年(昭和48年)に発見されました。隣接するエリアの栃木県佐野市葛生からも後に三葉虫は発見されましたが、関東地方では貴重な三葉虫産地です。産出は当時も多くは無く、更に尾部のみや頭鞍などの部分しか発見されなかったそうです。現在では、三葉虫そのものが見つからなくなり、幻の化石となっているそうです。 [Left side:Glabella,Right side:Pygidium]
Middle Permian Phillipsiidae,Proetoidea,Proetida TRI-596 -Trilobites