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Nobiliasaphus delessei
2009年にニュースになった世界最大の三葉虫の発見、そこはポルトガルのカネラスにあるスレート建材採石場から発見された90㎝を超える個体でした。ユネスコ世界ジオパークにも指定(Arouca Geoparque/2009)されている事もあり、個人コレクターには入手困難な産地の一つです。Nobiliasaphusといえばポルトガル産でも一般種ではありますが、大きさというよりは尾部に棘が出ているのが特徴です。本種は、カネラスでも2番目に大きい70㎝もの個体が発見されているそうです。
Middle Ordovician(Dariwillan) Asaphidae,Asaphoidea,Asaphida TRI-756 ValongoTrilobites
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Dolerolenus zoppii
イタリアの三葉虫などコレクターでも知名度が低いですが、コレクターのバイブルといえる「The Back to the Past Museum Guide to Trilobites/TRILOBITI - Guida essenziale al riconoscimento e classificazione」では、複数ページを割いて載っているのは思い出せると思います。地中海に浮かぶサルデーニャ島、その南西部に古いカンブリア紀の地層があり、本種が代表種として産出します。数少ない同種の標本を参照すると平坦で派手さは無いですが、大き目のフリル状の胸部などの特徴はあります。
Lower Cambrian (Stage 3, Series 2) Dolerolenidae,Redlichioidea,Redlichiina,Redlichiida TRI-754 Nebida(Punta Manna Member)Trilobites
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Acanthopyge sp.
今や幻種となっている存在感のあるAcanthopyge haueriと同型の新種が発見され、市場に出てきたのが2010年頃でした。mdl-storeのブログでは、新産地Boulachghaleとされる地の近郊とされていますが、広域で地名が無い土地のようで、以前のA.haueriが産出したMrakibとは産出場所は違うけど、エリアとしてはMrakib近郊との事で、詳細な産地地図も提供頂きました。ただ、こちらで公開は控えますので、mdl-storeのブログ通りの情報で正しいようです。A.haueriと比較すると華奢で尾部の尾板が小さく、尾部の長い棘は熊手の様に下に伸びているのが特徴です。その棘を含め無数の粗い棘が疎らに存在しており、Hammi氏の剖出により、それらが温存されています。新産地でも完全体自体が極めて少数であり、その中で頬棘が残る個体は数えるほどしか存在していないと言われており、新種も幻種となる思われます。 (2024.3産地情報の記述を更新しました)
Middle Devonian Lichidae,Lichioidea,Lichida TRI-755 -Trilobites
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Selenopeltis gallicus
S.gallicaという小種名でもみかけますが、シノニム(Synonym)で同一種と見なしています。S.gallicusといえば、モロッコ産の頭部から棘が1対あるタイプでも散見されますが、ポルトガル産は残り難いだけで、同様の棘があった可能性は高く、この標本にも右側の棘があるのは確認できます。Selenopeltisは、モロッコ産の大型種で棘が太いタイプのS.buchiiが有名ですが、ポルトガルでもS.buchiiは産出します。Selenopeltis自体は、英国、フランス、チェコなど欧州各地でも産出しますが、欧州では希産種であり、ポルトガル産も簡単に入手できるような種類ではありません。見た目はどちらかというとグロテスクなので、好き嫌いははっきりしそうな種類だと思います。
Middle Ordovician(Dariwilian) Odontopleuridae,Odontopleuridae,Lichida TRI-749 ValongoTrilobites
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Sphaerexochus latifrons
Sphaerexochusの仲間は、日本の横倉山など世界中のシルル紀産地でも産出するのですが、基本的に部分化石のみで、数も多くは産出しません。ゴットランド産も同様に完全体では産出はありません。サンゴなどの一緒に生息していた生物の破片が無数に重なる産状で、見た目以上に硬質の石灰岩から構成されています。
Silurian(Ludlow) Encrinuridae,Cheiruroidea,Cheirurina,Phacopida TRI-750 Hemse MarlTrilobites
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Griffithidella doris
体形として全体に丸みを帯びて卵型の楕円形状をしています。短めの頬棘はありますが、顆粒も無く目立った装飾は無い石炭紀らしい三葉虫です。2体が折り重なる様に化石化していて、下の個体を守っているかのようです。
Lower Carboniferous(Mississippian) Proetidae,Proetoidea,Proetina,Proetida TRI-133 Lake ValleyTrilobites
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Lonchodomas volborthi
モロッコやイギリスなどオルドビス紀の広範囲で産出するLonchodomasですが、立体的な姿で全体像を把握できるのはロシア産に勝る産地は無いと思います。3本の棘は長く張り出しており、しなやかにカーブを描いていて、柔軟性がありそうにも見えます。見た目が同じAmpyxとの区別は、コレクターに知られていますが、Lonchodomas (ロンコドマス)は体節の数が5つ、Ampyxは体節の数が6つである事を一応、記載しておきます。
Lower Ordovician Raphiophoridae,Trinucleoidea,Asaphida TRI-546 Volkhovian LevelTrilobites
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Brachyhipposiderus antiquatus
最も初期のHarpetida(ハルぺス目)の仲間です。ハルぺスと言えば、オルドビス紀ロシア産やデボン紀モロッコ産など、産出は少ないけれど特徴的な大きな鍔状の頭部を持っている三葉虫として知られます。以前は、Asaphida(アサフス目)に分類されていた時期もありましたが、比較的に同時に分化していた事が分かります。原始的な姿のHarpetidaですが、円盤状の大きな頭部に小さな眼があり、既に特徴としては、この頃でも確立していた事が分かります。
Upper Cambrian Harpetidae,Harpetidea,Harpetina,Harpetida TRI-717 SanduTrilobites
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Monodechenella macrocephala
Monodechenellaは、Proetida(目)中では最も高額な種類の一つでした。見た目が派手という訳ではないので、単に産出が少なすぎるという事情もあったと思います。モロッコ産のDechenellaと比較すると別物と思えるくらい特徴が異なり、寧ろ同じ北米のオハイオ州、ミシガン州、カナダのオンタリオ州等で産出するPseudodechenellaに近縁と思われます。全体的にふっくらとしており、大きな頭鞍と背から尾部にかけて細い棘があったと思われる突起も確認できます。最大の特徴は、全身に細かい顆粒がある事だと思います。
Middle Devonian Proetidae,Proetoidea,Proetina,Proetida TRI-689 LudlowvilleTrilobites
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Archegonus(Philibole) aprathensis
2019年位に市場に出てきた石炭紀ポーランド産。産地のヴァウブジフは、チェコの国境に近いドルヌィ・シロンスク県なので、同一種として産出するドイツAprath産とは、エリア的には近くはありません。特徴が乏しい種類なので、同一種でも違和感は無いですが、仮名なのかは分かりません。貴重な石炭紀の完全体の出る産地が増えたのは、カザフスタン産以来かもしれません。
Lower Carboniferous Phillipsiidae,Proetoidea,Proetina,Proetida TRI-737 SzczawnoTrilobites
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Pseudophillipsia(Nodiphillipsia) ozawai
かつて日本を代表する産地であり、国産化石を採取や収集している人で知らない物が無い金生山。現在も工業的に石灰岩の採掘が続いており、立入りは禁止されています。金生山で三葉虫が採掘されたのは、1973年(昭和48年)と意外と遅く、ただ以降の僅かな期間だけしか採取できず、現在では三葉虫が採掘できたとされるエリアも消滅していると聞いています。古生代の有孔虫であるフズリナの種類から年代が分かるとされる赤坂石灰岩、三葉虫の尾部の右側に存在する、木の切り株の様な化石がYabeina globosa (Yabe,1906)であり、この層をYabeina globosa Zoneと呼ばれるペルム紀中期の地層から、種類も同定されています。世界的に貴重な最期の三葉虫の一つです。
Permian Phillipsiidae,Proetoidea,Proetina,Proetida TRI-561 -Trilobites
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Esmeraldina roweii
Holmiidae(科)は、初期のオルネルスの仲間ではマイナーな部類ですが、良く知られる種の中では、モロッコの大型種Cambropallas telestoと同じ分類となります。本種とCambropallasが同じとは言われてもピンとこないかもしれませんが、共通の特徴に背の棘があります。(Cambropallasは後半だけですが)頭部の太い頬棘以外に短く鋭い3つの棘が後方にあります。頭部は細かい粒々に覆われているのが分かります。胸部と尾部は非常に柔らかな構造である事が推察でき、中央部の縦に伸びる棘も柔らかめに見えます。この様な体の構造により、胸部の化石化がし難い産状の種類です。
Lower Cambrian Holmiidae,Olenelloidea,Olenellina,Redlichiida TRI-269 CampitoTrilobites
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Anataphrus vigilans
見た目が可愛い種類は、見ていて愛おしくなってきますが、このAnataphrusという種類はカエルの様なキャラクターで、三葉虫界の癒し系代表です。オクラホマ州のHomotelus bromidensis(Esker,1964)に近縁ですが、Homotelusと比較すると体の大きさの割に眼の張り出しが大きく、モノコック形状の体にチョコンと飛び出しているのが分かります。川崎市の歯科で国内著名コレクター氏の HPにある個体と、赤字の通し番号が近く同一時期に採取されたものと分かりますが、入手できたのは2000年代前半だけだった様で、既に絶産したのでしょう、もう入手する機会が無くなっている種類です。
Upper Ordovician Asaphidae,Asaphoidea,Asaphida TRI-357 MaquoketaTrilobites
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Gerastos prox
ベルギー、アンデンヌ地方の三葉虫です。アンデンヌは、ベルギーだけでなくフランス、ルクセンブルクに跨るエリアであり、更に隣接するドイツまでのエリアでデボン紀の三葉虫を産出します。ベルギー産といえば石炭紀の三葉虫が比較的有名ですが、このエリアからのデボン紀産は入手難易度が高いです。見た目は変哲もないGerastosであり、良質なモロッコ産が入手できれば上がり的な種類なのかもしれません。ベルギー産でもGerastosは、リンクの論文の様に幾つかの種類が知られているのですが、この中で一番近いと思い私が同定しているので、間違っている可能性はあります。 【参考リンク】Taxonomy and biostratigraphy of some proetid trilobites in the Middle Devonian of the Ardennes and Eifel (Rhenohercynian Zone) https://www.researchgate.net/publication/256475419_Taxonomy_and_biostratigraphy_of_some_proetid_trilobites_in_the_Middle_Devonian_of_the_Ardennes_and_Eifel_Rhenohercynian_Zone
Lower Devonian Proetidae,Proetoidea,Proetina,Proetida TRI-612 -Trilobites
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Reedops cephalotes
モロッコ産であったら廃棄されそうなレベルの標本かもしれませんが、こちらは本種の命名の元祖ともいえるチェコ産です。既に新規産出が無いチェコ産にあってカンブリア紀やシルル紀産、以外の時代の三葉虫は入手難易度が高いです。姿自体は、モロッコ産と違いが判らないレベルです。母岩の質感もモロッコ産に近いのですが、型抜きに微妙に失敗したチョコレートみたいな質感です。
Lower Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-660 ProkopTrilobites
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