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Redlichia mansuyi
中国の関山生物群 (Guanshan biota) のレドリキア・マンスィ (Redlichia mansuyi) の標本です。 関山生物群は時代的には、最古の澄江より新しく、バージェスよりは古い層が中心となっており、おおよそCambrian series2のstage4に当たります。澄江や他の中国のカンブリア系の産地と並び、軟体保存にも優れた、代表的なラガシュテッテであります。 いかにも、標準的レドリキアといった形態をしております。サイズは60mmと中々の大型。尾部を欠いていますが、本来は軸葉から後方に一本の長い棘が伸びる種です。同産地の似た種に、レドリキア・マイ (Redlichia mai) などと言う種もいるようですが、どこがどう違うのか私は理解していません。 数年前までは、比較的容易に入手可能だったように記憶しておりますが、現在はこのサイズのものはかなり少なくなっています。わずか数年でこの有様かと、隔世の感があります。当時の感覚でレア度は星2としていますが、今や星3あたりが妥当なのかもしれません。
Lower Cambrian Lower Cambrian (Series2, Stage4) Near Kunming, Yunnan, China Redlichia mansuyitrilobite.person (orm)
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Coltraneia sp.
モロッコのコルトラネイアの一種 (Coltraneia sp.) です。普通のオウファテネンシス (C. oufatenensis) でいいんじゃないかなとは思うのですが、確証がないので、差し当たり一種のままとしております。 エルベノチレほどではないものの、大きく高い複眼をもち、極めて広い視野を持っていた種だと思いわれます。棘なしエルベノチレという雰囲気の種です。 いわゆるモロッコの一般種であり、市場を見回せばほぼ常に供給されている状態です。供給量を見るに、おそらく、その広い視野を存分に活用していち早く索敵し、生存確率を上げることで、当時のデボン紀の海の中で大繁栄を遂げる事ができた種なのではないかと想像します。 この標本の特筆すべき点は、その驚異的なまでのプレパレーションにあります。こちらはモロッコ三葉虫の名プレパレーター、Hammi氏より直接購入した標本です。72時間ほどのプレップ時間を要したとのことです。彼の作品の私の手持ちの中では、最も熱量を感じる逸品です。 惜しくらむべきは、私の稚拙な撮影技術が、彼の卓越した技術の粋を全く捉えきれていないという事でしょうか。そういう意味で実に可哀想な標本であります。
Devonian - Jbel Issoumour, Morocco Coltraneia sp.trilobite.person (orm)
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Yiliangella forficula
こちらは、中国のイーリャンゲラ・フォルフィキュラ (Yiliangella forficula) であります。カンブリア紀前期 (特にSeries2, stage4) に当たる時代の化石を産する、馬龍生物群 (Malong biota) の紅井哨紅累層 (Hongjianshao fm) のものです。 中国の化石特有の黄土色の母岩に、鉄錆色の本体が生える化石です。優美で流れるような胸尾部の棘は、どこか柔らかそうで、モロッコのGygantopygusなどを思わせます。頬部が失われてはおりますが、本種に関しては完全な標本はほぼ無いと言ってよく、これで上位の保存状態であります。 大型で実に美しい中国の標本ですが、砂泥質の母岩が脆く、標本箱の中に置いているだけでも、徐々にポロポロと崩れるのが玉に瑕です。
Lower Cambrian (Series2, Stage4) Malong biota, Hongjianshao (紅井哨紅) Near Kunming, Yunnan, China Yiliangella forficulatrilobite.person (orm)
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Prionocheilus sp.
何とも面白い、この三葉虫とヒトデの組み合わせは、三葉虫プリオノケイルスの一種 (Prionocheilus sp.) と、ヒトデはおそらくペトラステルの一種 (Petoraster sp.) の共演標本です。 同国オルドビス紀産の大半に言えることですが、風化が進んでいることが多く、本種もぼけっとした荒い標本をよく見かけます。この標本も風化が進んでいるものの、頭部の様子など、比較的細かく観察することができ、本種としては良質な方です。この標本では確認できませんが、体全体に細かな顆粒がある事もプリオノケイルスの特徴のようです。 ほか、本標本は黒い色合いが強いですが、産出場所によって、褐色、黄色などの色のバリエーションも多い印象です。 同国オルドビス紀産としては、クモヒトデ (綱)と三葉虫 (特にSelenopeltisなど) という組み合わせは、よく見かけますが、ヒトデ (綱) と三葉虫というタッグは案外珍しい気がします。 三葉虫が暮らした当時の海底環境の一端がわかるだけでなく、飾っても楽しく、私のお気に入りの標本の一つです。
Ordovician Ktaoua El Kaid Errami, Morocco 60mmtrilobite.person (orm)