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Cummingella mesops (grabella & pygidium)
新潟県の青海の美しい石灰岩から産出する、おそらくカミンゲラ・メソプス (Cummingella mesops) の頭鞍、および尾部と思われる標本です。画像1-5 (頭鞍標本) と6-8 (尾部標本) が別の母岩です。尾部標本は小さく分かりづらいのですが、ぷっくり膨らんだ頭鞍はよく目立ち、まるで、貝類か腕足類の一部のようです。 完全体はもちろんの事、頭部全体が残る標本すら極めて稀と思われ、大半が頭鞍や尾部のみの標本であるようです。全貌が掴みづらい種ですが、オンライン上の頭部全体が残る標本などを確認するに、頭鞍のサイズの大きさが目立ちます。 カミンゲラ自体、ツルッとした比較的大きな頭鞍を持つ種です。ただ、本邦で産出する本種は、中でも目立つ頭鞍を持っていたのかもしれず、興味を唆られます。 実際、記載論文 (Kobayashi and Hamada, 1980) でも、『Cephalon massive, parabolic in outline, strongly convex, most elevating in anterior of glabella‥』→『頭部は巨大で, 外形は放物線を描き、強く凸状になっていて、頭鞍前方で最隆起する‥』などという書き出しで始まっていて、大きく特徴的な頭部を持っていたようです。
Carboniferous - 新潟県西頸城郡青海町 (糸魚川市) Cummingella mesopstrilobite.person (orm)
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Glyphaspis capella
たまにはこんなマニアックな三葉虫はいかがでしょうか? こちらはグリファスピス・カペラ (Glyphaspis capella) という種であります。 三葉虫にかなり詳しい方でも、???となるのではないでしょうか。産地もこれまたマニアックで、まさかのモンタナ州の産。恐竜化石ならありがちな産地ですが、三葉虫化石としては聞きなれない州であります。ローカル産地のマニアックな種であります。 写真では判断しづらいですが、体色は深い緑色の体色に辺縁はオレンジがかっており、色合いもまた独特です。体型は楕円形で15mmほどと小型。分類上は一応アサフスの仲間のようで、カンブリア紀の産である事も考慮すると、原始的なアサフスの一種である可能性はあるかもしれません。 ちなみに記載者はウォルコット (Walcott, 1916)。確証ないですが時代的には、バージェス頁岩で有名なチャールズ・ドリトル・ウォルコットなのではないかと思います。 一見質の悪い標本に見えますが、頭鞍や頬棘含め頭部の構造は割としっかりのこっていて、わずかに出回っている標本の中では、これでも実は保存状態は良い方です。 現在標本整理をしており、放出をするか否か迷いましたが、微妙な愛着があったのと、地味さ故に欲しがる方は現れないような気がして、キープする事に決めました。
Middle〜Upper Cambrian Wolsey shale Gallatin County, Montana Glyphaspis capellatrilobite.person (orm)
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Homalopteon murchisoni
可愛らしい三葉虫、英国ウェールズのホマロプテオン・マーチソニ (Homalopteon murchisoni) です。黒色の母岩に黒色の本体、しかも15mmと小型なので目立たず地味な標本ではあります。本種にしては珍しく、左自由頬が残っております。写真4枚目はnega標本です。 分かりづらいですが、アサフス目(Asaphida) に分類される種です。 同属異種として、ホマロプテオン・ラディアンス (Homalopteon radians) が知られており、本種を産出するLlanfawr Middle Quarryで共に見つかるようです。提供者によると、産出数はラディアンス > マーチソニで、マーチソニの方がより希産とのこと。 実際、英国三葉虫の決定版図鑑『TRILOBITES of THE BRITISH ISLES』では、ラディアンスの複数体標本が2プレート掲載されているのに対し、マーチソニは単体標本のみが唯一掲載されています。 派手さがある訳でなければ、お世辞にも優美な種という訳でも無いのですが、ここまで外形が丸っこい種というのはあるようで、それほどない気もするのです。パッと思い浮かぶのは、若干毛色は違いますが、ロシアやモロッコのスティジナ (stygina) ぐらいでしょうか。 (※ ただし本種は、もう少し大きいサイズとなると、前後に伸び楕円形に近くなります) 言い過ぎかもしれませんが、ある意味、三葉虫の形態の多様さを知ることが出来る種では無いでしょうか。
Ordovician Llanfawr Mudstone group, Builth, Wales Homalopteon murchisoni 15mmtrilobite.person (orm)
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Aciculolenus askewi
カナダのカンブリア紀末の化石を産するMcKay groupから、風変わりな三葉虫、アキキュロレヌス・アスケウィ(Aciculolenus askewi) です。 McKay groupでは、原始的なアサフス目に属する小型でやや地味めの三葉虫を多産し、特徴が分かりにくく区別が付けづらい種が多いです。しかしよくよく見ると、そんな中に数種類の実に奇妙な種が多いことに気が付き、比較的コアなコレクターを惹き付けて止まない産地です。 本種はMckayのそんな変わり種の一つ。圧倒的にペラペラの背甲を持ち、そのニョロっとした全体像はどこか紙魚を思わせます。吹けばどこかに飛んでいきそうな体格をしており、化石化して残っている事自体が、奇跡のような種です。実際、本種は保存状態の良いものでも、特に自由頬か軸葉の垂直な棘が揃っていない事が多く、両自由頬のない本標本ですら、かなり状態が良い方です。 アキキュロレヌスは、アキキュロレヌス・パルメリ (A. palmeri)という種が元々知られておりますが、同種は胸節が7に対し、本種では13とより細長く、本標本入手時(2019年)には未記載種につき、Aciculolenus sp.としておりました。 しかしその後、2020年にBrian Chatterton氏らによって、アキキュロレヌス・アスケウィ (Aciculolenus askewi)との名で無事記載されております。 (参考文献:Mid-Furongian trilobites ans agnostids from the Wujiajiania lyndasmithae Subzone of the Elvinia Zone,McKay Grup,southerstern British Colombia,Canada, 2020) 小さいながら、とても面白い種かと思います。
Upper Cambrian (Furongian, Jiangshanian) McKay Group Cranbook, British Columbia, Canada Aciculolenus askewtrilobite.person (orm)
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Pseudosphaerexochus hemicranium
シュードスファエレクソクス・ヘミクラニウム (Pseudosphaerexochus hemicranium) です。 本標本のサイズは15mm程度ですが、最大でも30mmと小型の種です。小さくはありますが、泡状頭 (Bubble head) とも評される大きな膨らんだ頭鞍、ちょこんと可愛らしい眼、フリルのような尾部など、各部位が特徴的で、全体的に奇妙さと可愛らしさを兼ね備えた種です。オルドビス紀英国で産出する、シュードスファエレクソクス・オクトロバトゥス (Pseudosphaerexochus octolobatus) という類似種がいて、サイズこそ本種の2~3倍ですが、見た目はとても良く似ています。 ロシア産三葉虫の中でも、非常に希少な種でもあり、この小ささにも関わらず高額な種でもあります。とても可愛らしいアイドル的な三葉虫であります。 本プレートは、後方に存在感強めの大きなウミリンゴが控えており、全体的な構図も素晴らしい標本です。
Lower Ordovician - Voybokalo quary, St. Peterburg, Russia Pseudospharexochus hemicraniumtrilobite.person (orm)